経営とマネジメントの違い、マネジメントの種類、仕事内容、必要なスキルを解説

この記事では、マネジメント(経営マネジメント)を取り上げ、以下の点について解説します。

  • マネジメントとは何か、経営との違い
  • マネジメント(マネージャー)とリーダーシップ(リーダー)との違い
  • 経営マネジメントの種類、仕事内容、必要とされるスキル
  • 経営マネジメントを成功させるポイント
目次

経営とマネジメントの違い

英語のManagementは、日本語では「経営」「管理」「運営」と訳されます。なので経営マネジメントは、「経営経営」となってしまい、混乱を招きかねません。企業経営用語としては、経営マネジメントは「経営管理」「組織運営」という意味で使われます。経営とマネジメント、それぞれの定義を明らかにしておきましょう。

経営とは、企業が設定した目的やビジョンを達成するため、事業計画作成と意思決定を継続することです。事業の原点は「利益を得て会社を持続および成長させること」ですから、経営(者)の役割は、収益を上げるための意思決定と事業の遂行・管理です。一方、マネジメントは、リスク管理しながら、自社が持つ経営資源であるヒト・モノ・カネを効率的に利用することを指します。

ではマネジメントとはどう違うのでしょうか。経営や起業に興味のある方なら、ドラッカーの名前はよくご存じでしょう。マネジメントの概念は、アメリカの著名な経営学者であるピーター・ファーディナンド・ドラッカー(1909〜2005)の著書『マネジメント』(1973年)からしています。

・マネジメント:組織に成果をあげさせるための道具・機能・機関

・マネージャー(マネジメントを実行する人):組織の成果に責任を持つ者

簡単に言うと、「最終的なゴールの設定」「ゴールに向けた方向性および戦略の策定」「それらに伴う部下の管理」が経営であり、経営で「成果を生み出すための仕組みやツールの実行」が「マネジメント」というわけです。

マネジメントとリーダーシップ

マネジメントに必要なスキルを考えるにあたり、その前に、マネージャーにより行われるマネジメントと、リーダーによって行われるリーダーシップ、この2つの違いも知っておく必要があります。同じ意味と捉えられることがありますが、本当は異なる役割です。

リーダーは、強いリーダーシップを発揮し、組織が目指すビジョンや具体的な目標を示すことが責務です。生産性の向上を図るため社員に権限を与えること(エンパワーメント)を前提として組織内のメンバー配置から意思決定までのプロセス・ガイドラインの制定などを行います。

一方、マネージャーの仕事は、リーダーが示した方向を理解し、目標達成の具体的な方法を示し、組織を指導することです。リーダーが決定したメンバーを統率し、リーダーが策定した意思決定プロセスに基づいて、円滑に運営することが任務です。

  • リーダーは、経営方針や目標を示す。
  • マネージャーは、リーダーの意思に沿い、目標達成までの道筋を示す

例えば「映画をテーマにしたパーク経営をしたい」と考えるのがリーダーシップで、「そのテーマパークの運営を行う」のがマネジメントです。

組織によっては、チームリーダーがマネージャーの下位に位置することがあり、混乱を招くかもしれません。ここでは、経営学上の本来のマネージャーとリーダーの役割について正しく理解しておきましょう。このようなマネージャーには、大きく分けて次の2つのタスクが求められます。

  1. 組織を作り目標を達成する:目標を設定して組織を作り、達成に向けて業務遂行する。
  2. 部下を統率・育成する:部下とコミュニケーションを行い、目標達成のための動機づけを行う。また成果を評価し、部下の指導、人材育成を行う。

マネジメントの具体例な業務内容、役割、スキル、種類

マネジメントの種類(階層)と求められる能力

マネジメントは、業務を担う階層によって「トップマネジメント」「ミドルマネジメント」「ロワーマネジメント」の3種類に分けられます。

トップマネジメント

トップマネジメントとは、経営陣が担うマネジメントのことです。社長、副社長、常務、専務といった取締役や執行役員などです。トップマネジメントの役割は、企業の最終ゴールである経営目的の策定、経営目的を達成するための戦略・方針・計画の策定、それらを実現する組織運営に関する意思決定となります。トップマネジメントには、物事を俯瞰的に見る力や、将来を見通したうえで意思決定を行う力、組織を正しい方向に導くリーダーシップが必要です。

ミドルマネジメント

ミドルマネジメントとは、部門管理職である中間管理職が担うマネジメントで、経営陣と現場の中間になります。本部長や支店長、部長や課長といった役職がミドルマネジメント担当にあたります。ミドルマネジメントの役割は、トップマネジメントの決定に呼応した、自身が管轄する支店、部門、課での計画策定、組織編成、仕事の配分などです。また、部下のパフォーマンスを定期的、継続的にチェックし、業務を効率化するのもミドルマネジメントの役割です。ミドルマネジメントには、上層部の計画を忠実に実現しつつ、現場の課題や意見を汲み取り的確に解決する能力が必要です。そのため、実現力、計画力に加え、高いコミュニケーション力が求められます。

ロワーマネジメント

ロワーマネジメントとは、現場の作業員に直接指示・監督する現場管理者が担うマネジメントです。係長、主任、チームリーダーなどがロワーマネジメントの担当者です。役割は、トップやミドルが策定した計画や目標を実現するため、現場で結果を出していくことです。ロワーマネジメントには、実務に関する知識やスキルが必要です。また結果を出すには、スタッフとの関係や現場の環境を良好に保つことも不可欠です。スタッフと良好な関係性を保つには、高いコミュニケーション力や共感力が重要です。

経営マネジメントの役割

アッパーマネジメントとミドル・ロワーマネジメントでは、担う役割が異なるため、仕事内容も異なります。それぞれについて解説します。

経営陣の3つのマネジメント

経営陣が担うアッパーマネジメントは、大きく分けて次の3つになります。

  1. 会社の方向性の決定
  2. 資金配分の調整
  3. 人材配置

まず1つめの「会社の方向性の決定」ですが、会社全体の方向性を定めることが経営の役割になります。経営理念や経営ビジョンに基づき、「協働パートナー」「事業内容」などについて意思決定します。

2つめに、適切な資金配分が挙げられます。人件費、新規事業への投資、開発費など、一企業の中には様々な「お金の使い先」が存在し、利益還元と目標達成に繋がる効率の良い資金配分が必要です。

最後の人材配置の調整も、経営上、重要な項目です。従業員の特性や能力を踏まえ、適切な事業部や役職に人材配置していく必要があります。特に、チームメンバーを引っ張っていく上層部の役職配置は重要です。

マネジメントの業務3つ

経営者以外のマネジメントには、次の3つの業務があります。

  1. 目標設定
  2. 部下の動機付け・指導
  3. 成果の評価・フィードバック

1つめは目標設定です。売上や獲得顧客数など具体的な目標があってはじめて、計画を立てることができます。計画策定で大切なことは、次の3つです。

  • 上層部の決定を基準に目標を設定する。
  • 部下が正しく理解できるように、明確な目標を伝える。
  • 実現可能な目標を達成する。

2つめは部下に対する動機付けと指導です。どんなに素晴らしい目標を設定しても、それを実現するのは実際に働く従業員です。従業員に高いパフォーマンスを出して貰うには、彼らのモチベーションを高く維持する「動機付け」が必要です。インセンティブ、ボーナス、昇進など金銭面の動機だけでなく、一人ひとりの適性や能力を見極めて、それが発揮できる仕事やポジションを用意することも効果的です。また部下一人ひとりの特性、強み、弱みを的確に把握し、適宜、必要な指導を行い成長を促すのもマネジメントの仕事です。

3つめは、評価とフィードバックです。部下の成果を評価し、改善点をフィードバックすることは、部下の成長という人的資産面と、業務改善による成果の向上という生産管理面、双方で意味があります。評価で最も大切なことは、公平で明確な評価基準に基づいて行うことです。基準が曖昧だったり、好き嫌いなど私情に基づく評価であれば、部下の信頼とモチベーションは著しく低下し、組織の業績も悪化してしまうでしょう。

マネージャーは上記の3つの業務を行うために、日々、実務で次の仕事を行います。

  • プロジェクトマネジメント:ノウハウの共有、チームメンバーの行動計画作成、スケジュール管理、プロジェクトの進捗管理など
  • 人材管理マネジメント:チームメンバーの悩みや不安を払拭し、業務に集中して取り組める体制を整える
  • 目標管理:企業の目的のためにチームの目標達成必須

マネジメントに必要な能力やスキルとは

覚えておきたい、マネジメントに必要な能力3つ

マネジメント能力とは、具体的にどのような能力を指すのでしょうか。言い換えれば、どのようなマネージャーであれば、マネジメントが上手くいくのかということになりますが、これには次の3つの能力が重要です。マネジメント経験が十分にある人もない人も、この3つを意識して取り組みましょう。

情報共有する

意識的にチームメンバーと情報共有を進めます。情報共有を当たり前にすることで、「どこまで進んだか」「誰が担当しているか」といった再確認が不要になりますし、仕事の進捗状況を常時把握できることで、適切なタイミングで部下へのフォローができます。

メンバーの理解を深める

チームメンバーの特性を理解することは、マネジメントに欠かせませんが、中には、自分から上司に声をかけられない人や、できるだけ自分のペースで仕事を進めていきたい人もいます。個々の特性に合わせたマネジメントを行えば、指導が受け入れられやすく効果を発揮できます

長期的な視点を持つ

目先の数字のように短期的な視点だけでなく、中長期視点からマネジメントを捉えることが、人材育成の観点からも大切です。

身に着けたい、マネジメントに必要なスキル4つ

マネジメントするにあたり、このスキルがないとスムーズにことが運ばないといえるのが、次の4つのスキルです。

  • 意思決定のスキル:マネージャーには、判断が求められる場面が多々あります。意思決定は必ずしも、全会一致や多数決が正解とは限りません。
  • コミュニケーション(アカウンタビリティ)のスキル:組織をまとめるためには、意思疎通は不可欠です。チームの一体感を高めるために、コミュニケーション能力が必要です。部下の話に耳を傾ける「聴く力」と、指示やアドバイスなどを具体的に分かりやすく論理的に伝えるアカウンタビリティスキルの双方が求められます。
  • 管理のスキル:目標達成に向け組織を適切に機能させ、生産性を高めるため適切な事柄を適切に実施し、仕事の制度を上げていくのがマネジメントの管理スキルです。部下の長所や強みを見つけ、最大限に発揮できるよう導くコーチングスキルもマネージャーには必要です。
  • 分析(アセスメント)のスキル客観的な評価に重要なのが、分析スキルです。後述するフレームワークなどの手法に加え、普段から部下の行動に注目する、定期的に面談の時間を作る、話を聞いたり質問をするといった姿勢が大切です。

マネジメントで成果を出すための3つのポイント

必ず成果を出すマネジメントを目指すなら、上で述べた能力やスキルに加え、次の3つのポイントも忘れてはなりません。能力やスキルは一定以上のマネジメント経験がないと持ち合わせることが難しいですが、一定以上の経験があってもマネジメントに成功しない人もいれば、反対に経験は比較的浅くてもマネジメントで成果を出せる人もいます。その差は、この3つの心がけから生まれます。

的確かつ迅速な意思決定を座右の銘にする

経済のグローバル化や技術革新などにより、現在の企業を取り巻く環境の変化は非常に急速です。変化への対応が少し遅れると、足元をすくわれ、急激に業績が衰退したり命取りになることもあります。生き残るためには、市場の変化を常にキャッチし続け、的確かつ迅速に判断して対応する必要があります

目標設定と評価の能力を高め続ける

マネジメントは、目標設定で始まり、評価とフィードバックで一連の流れが終わります。これの繰り返しだと言っていいでしょう。始まりの目標が曖昧であったり実現性のないものでは、モチベーションや生産性は向上するどころか低下しかねません。また、成果に対する評価が非合理的だと判断された場合、従業員のモチベーションの低下や離職を招きます。マネージャーたるもの、目標設定と評価に関する能力やスキルは、常に磨いて高める必要があります。「仕事ができるマネージャー」とはすなわち、この2つの点で優れている人物だと言い換えることもできます。

目標設定と評価を行った後には必ず振り返り、それらが収益の増加など具体的な成果に繋がったか確認する必要があります。結果に繋がらなかった場合は、問題点を掘り起こし、改善するべきです。PDCAサイクルを回すことで、マネジメントのスキルを上げることができます。

フレームワークを積極的に取り入れる

やみくもにPDCAサイクルを回すだけではなく、KPI(Key Performance Indicator)や多面評価といったフレームワークを取り入れることで、より短期間でマネジメント能力を高めることができます。

目的達成に直結する数字目標を設定するKPIの手法は、人事評価や部門目標の明確化に役立ちます。多面評価とは、他部門の社員や同僚など複数の評価者により人事評価を行う方法で、客観的な評価ができます。

経営マネジメントにおけるデータ分析の重要

現代のビジネスにおいて、データは企業の成長に欠かせない要素となっています。ビジネスにおいては、様々な情報を収集し、その情報を分析することで、意思決定に役立てることが求められます。このような情報の分析には、データ分析が不可欠です。

データ分析とは

データ分析とは、膨大なデータを解析し、有益な情報を抽出することです。ビジネスにおいては、販売データや顧客データ、マーケティングデータなど、さまざまなデータが蓄積されています。これらのデータを分析することで、顧客の嗜好や購買履歴、市場動向などの情報を得ることができます。データ分析を行うことで、以下のようなメリットがあります。

意思決定のサポート

データ分析により、正確な情報を得ることができます。そのため、企業の経営戦略の策定やビジネスプロセスの最適化に役立ちます。また、市場動向の分析や顧客の購買傾向の把握により、新しいビジネス戦略の構築にもつながります。

コスト削減

データ分析により、ビジネスプロセスの改善や効率化が可能となります。また、在庫の適正化や物流コストの削減など、コスト削減にも貢献します。

競争優位の獲得

データ分析により、市場動向の把握や顧客のニーズの把握が可能となります。そのため、競合他社との差別化を図り、競争優位を獲得することができます。

まとめ

この記事では、マネジメント(経営マネジメント)を取り上げ、以下の点について解説しました。

  • マネジメントとは何か、経営との違い
  • マネジメント(マネージャー)とリーダーシップ(リーダー)との違い
  • 経営マネジメントの種類、仕事内容、必要とされるスキル
  • 経営マネジメントを成功させるポイント
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