看護マネジメントとは 看護マネジメントに必要なスキルと認定看護管理者制度について

マネジメントと聞くと、企業オフィスを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、今、注目されているのが看護マネジメントです。高齢化、人手不足、そしてコロナによる医療危機など様々な要因で、看護組織のマネジメントの必要性に着目されるようになりました。そこで今回は、看護マネジメントを取り上げます。看護師として、既に後輩や部下をマネジメントする立場にある方も今後のキャリアを考えている方にも、非常に有用な内容になっています。この記事では次の項目について解説します。

    • 看護マネジメントとは

    • 看護マネジメント職の組織

    • 看護マネジメントに必要なスキル

    • 認定看護管理者制度とは

目次

看護マネジメントとは

まず看護マネジメント職(看護管理者)とは、師長や主任といった役職にある人が該当します。看護マネジメントとは、「看護の対象者(患者)のニーズと看護職の知識・技術が合致するよう計画し、財政的・物質的・人的資源を組織化し、目標に向けて看護職を導き、目標の達成度を評価すること」です。看護マネジメントは、患者に必要なケアを円滑に提供することを目的とし、連携をとって効率よく十分な看護体制を整えるものです。看護マネジメントを通して快適な環境が作られると、看護師と患者双方ににとっての理想が実現します。看護管理体制が整理されていないと連携が取れず、各看護師が自分の判断で行動するため非効率的な看護体制となってしまいます。

看護マネジメント職の3役職

看護マネジメントを行うのは、下記の役職の人です。

  • 看護部長
    看護部長は、病院全体の看護部門の責任者です。病院の運営にも関わります。看護部の理念・目標を設定し、目標実現のための年間計画策定およびマネジメントを行います。
  • 看護師長
    看護師長は、病棟、外来、手術室などの部門の責任者です。副看護師長や看護主任と協力し、スタッフが円滑に看護できるよう部署をまとめていくことが役割です。部門の業務目標を定め達成できるようにスタッフをマネジメントし、また事故の予防・再発防止に向け対策します。
  • 看護主任
    看護主任は、看護の現場を統括するリーダー的な存在です。スタッフナースとして積んだ経験を活かし、病棟全体の看護業務が円滑に進むよう、日々の業務の進捗を把握し調整を行います。

看護マネジメントに必要なスキルとは?

公益社団法人日本看護協会によると、地域包括ケア時代の病院看護管理者が獲得すべき能力の目標は、次の6つです。

組織管理能力

組織の資源を活用し、方針に向かって動く組織を作る力で、例えば次のような内容です。

    • 看護方針を策定しメンバーに浸透させる

    • 経営的な視点から部署の人的・物的リソースを把握する

    • 他部門と交渉・調整を行う

質管理能力

患者の生命、生活、尊厳を尊重し、組織の看護の質を保証・保持する力で、次のような内容を指します。

    • 手順や基準の整備や効率化

    • 必要なデータの可視化、活用、評価、改善

    • 継続的な看護の質を保証するための方策立案と実施

人材育成能力

将来のために看護人材を組織的に育成する力で、役職によってその内容は次のようになります。

    • 主任:スタッフの能力を把握し、目標達成に合わせた支援を行う。

    • 師長:スタッフの可能性を見いだし、適切な機会や権限を与えて成長を支援する。

    • 部長;病院全体の人材育成方針の策定や、外部からの実習・研修受け入れのための体制整備。

危機管理能力

安全のために、リスクを予測し回避し、トラブルのときには影響を最小限に抑える能力で、次のようなものを指します。

    • 医療事故の未然防止のため、分析し予防策を講じる

    • 再発防止の意識を持って、業務プロセスの見直しや部署内の改善を行う

    • 安全に努める意識の醸成

政策立案能力

看護の質の向上のため、制度・政策を活用および立案する能力で、次のようなものを指します。

    • 医療制度や政策の動向に関する情報収集と対応の準備

    • 看護の質の向上のための制度について、改正や提案を行う

    • 自院や地域医療の課題を解決するために、既存の制度を上手く活用する

創造力

幅広い視野からこれまでにない新たなものを作り出そうと挑戦する力で、次のようなものを指します。

    • 看護サービスの提供の新しい方法を考える

    • 地域のニーズを踏まえ、必要な看護サービスを他施設の看護管理者と共同して作り出す

看護師がマネジメント職を目指すメリット

看護師としてマネジメント職に就けば、新たな業務を任され責任も大きくなります。一方で、メリットも複数あります。マネジメント職を目指すメリットについて説明します。

夜勤が減る

職場にもよりますが、基本的に看護師長以上の役職は夜勤に入りません。年齢とともに夜勤がキツイと感じる人は多いので、これはメリットと言えるでしょう。

役職手当が付く

これも職場によって金額が異なりますが、基本的に役職が就くと、基本給に加え役職に応じた手当がつきます。大規模な病院であるほど支給額は増えます。

職場環境の改善に貢献できる

看護スタッフとして働いていたときに誰しもが、「ここを改善したい」と思ったことがあるはずです。マネジメント職につけば環境改善のための提案を経営陣にすることができます。

転職に有利になる

マネジメント職経験者は、充分な臨床経験を持つ上にマネジメント業務も担える優秀な人材であるとみなされます。看護業界は人手不足ですが、通常、必ずしも自分の希望条件が満たされる職場で働いたり転職したりできているわけではありません。どこの職場も優秀な人材を求めています。そのため、マネジメント職経験があることは転職に際し強みになります。

自分自身のスキルアップに繋がる

マネジメント職は、看護というスキルに加え、リーダーシップやコミュニケーションスキルなど様々な能力を必要とします。責任あるポジションだからこそ、成長できる機会が多くあります。

認定看護管理者制度について

日本看護協会には、看護管理者として優れた資質を持ち、組織を発展させることができる力を持っていると認めた人を認定する「認定看護管理者制度」というものがあります。キャリアアップを目指す看護師にとっては、ひとつの目標となります。また、病院側が、マネジメント職の育成を目的としてこの資格の取得を奨励する場合もあります。受験するには、看護師として5年以上の実務経験(そのうち通算3年以上は看護師長相当以上の看護管理の経験)があることに加え、「認定看護管理者教育課程サードレベルを修了している」「看護管理に関連する学問領域で修士以上の学位を取得している」のどちらかの条件を満たしている必要があります。認定審査は書類審査と筆記試験からなり、合格すれば認定看護管理者として登録されます。

看護師のキャリアには、大きく分けて、次の4つの方向があります。

    1. スタッフから主任や師長、部長など段階的に昇っていくマネジメントの職位

    2. 専門看護師、認定看護師、診療看護師など、あらゆる分野や知識体系を熟知しているスペシャリスト

    3. 分野や領域に関わらず知識や技術を発揮できるジェネラリスト

    4. 大学院から教員や研究者に進むアカデミア

こちらが認定看護管理者制度の詳細です。

教育課程

受講要件

教育目的

ファーストレベル

・看護師として5年以上の実務経験がある

・管理業務に関心がある

看護専門職として必要な管理に関する基本的知識・技術・態度を習得する

セカンドレベル

・看護師として5年以上の実務経験がある

・下記のうちのどれかに該当する

(1)ファーストレベルを修了している

(2)看護部長相当の役職についている

(3)副看護部長相当の役職に1年以上ついている

看護管理者として基本的責務を遂行するために必要な知識・技術・態度を習得する

サードレベル

・看護師として5年以上の実務経験がある

・下記のうちのどれかに該当する

(1)セカンドレベルを修了している

(2)看護部長相当の役職についている

(3)副看護部長相当の役職に1年以上ついている

多様なヘルスケアニーズを持つ個人、家族、地域住民および社会に対して、質の高い組織的看護サービスを提供するために必要な知識・技術・態度を習得する

看護現場マネジメントの成功事例

看護現場における組織マネジメントは、高品質なケアの提供と安全な環境の確保に欠かせません。成功したマネジメントの事例を探りながら、リーダーシップの役割、チームワークの重要性、コミュニケーションの改善、品質管理と安全性向上に焦点を当てます。看護現場における組織マネジメントの成功事例から、良質なケア環境を築くためのヒントを探っていきましょう。

リーダーシップの役割と成功事例

看護現場におけるリーダーシップの役割は重要であり、成功事例を通じてその重要性を示すことができます。優れたリーダーシップは、看護チームの統率と指導、ビジョンの明確化、目標の設定と達成、コミュニケーションの促進などを通じて、チームのモチベーションやパフォーマンスを向上させます。成功事例としては、リーダーがチームメンバーをサポートし、適切なリソースと環境を提供することで、看護品質の向上や結果の改善が実現されています。また、リーダーが信頼と信用を築き、チームメンバーの声を尊重することで、協力と協働が促進され、組織全体の成果につながります。

チームワークの重要性と事例

チームワークは看護現場において重要な要素であり、成功事例を通じてその重要性を実感することができます。良好なチームワークは、相互の信頼関係や協力関係を築き、効果的なコミュニケーションや意思決定を可能にします。チームメンバーが互いの役割と責任を理解し、協力して働くことで、安全で質の高いケアを提供することができます。成功事例としては、チームが共通の目標に向けて協力し、情報共有や連携を図ることで、エラーの軽減や患者満足度の向上が達成されています。また、チームメンバーがお互いの強みや専門知識を活かし合い、連携を強化することで、効率的な業務フローや円滑な連携が実現されています。

コミュニケーションの改善事例

コミュニケーションの改善は、看護現場において重要な要素です。成功事例としては、定期的なチームミーティングやラウンドによる情報共有や意思決定プロセスの改善が挙げられます。また、コミュニケーションツールやテクノロジーの活用も効果的です。例えば、デジタルチャートやコミュニケーションアプリを導入することで、情報の共有や連絡の効率化が図られています。さらに、コミュニケーションスキルのトレーニングやフィードバック文化の構築も重要です。相手を尊重し、明確なメッセージを伝えるためのコミュニケーションスキルの向上は、チームワークと患者ケアの質を向上させる効果があります。これらの改善事例は、スムーズで効果的なコミュニケーションの実現に向けた道しるべとなります。

品質管理と安全性向上の事例

品質管理と安全性向上は看護現場で不可欠な要素です。成功事例としては、品質管理のプロセス改善やエビデンスに基づいたガイドラインの導入が挙げられます。また、メディケーションエラーの予防や手術ミスの削減を目指すためのチェックリストやプロトコールの活用も効果的です。さらに、安全文化の醸成や報告システムの導入により、医療ミスや事故の早期発見と対応が可能になっています。これらの事例は、患者の安全を確保し、品質向上を図るための実践的な手法となります。

看護マネジメントを育成する実習

最後に、実際の病院で、看護マネジメント者の育成がどのように実践されているのかについてお話します。看護系の大学などで看護マネジメントを学ぶと、大きい医療機関で育成実習が行われるのが一般的です。学生の看護マネジメント実習は、看護師長など看護管理者が行い、学生は指導者と一日行動を共にすることで、現場の看護マネジメントを看ることができます。

また、現場で働く看護師に対しても、マネジメント能力の育成は行われています。新しいスタッフと師長のような指導者との立場や年齢には大きな差があるので、その中間に位置する中間管理職のようなスタッフを育成することで、コミュニケーションがより円滑になります。

まとめ

看護管理者は、病院の理念を基礎にした目標を達成するため、限られた資源を活用しながら、円滑な業務の遂行、各部署の調整、育成などを行います。近年は地域包括ケア時代ともいわれ、病院を超えた関わりが求められています。また看護を必要とする人のQOL(Quality of life、人生や生活の質)への貢献も重視されるようになりました。それらに対応しながら、看護管理者として組織を発展させていく役割を担っています。

この記事でわかることは次のとおりです。

    • 看護マネジメントとは

    • 看護マネジメント職の組織

    • 看護マネジメントに必要なスキル

    • 認定看護管理者制度とは

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