組織とは企業、官公庁、教育機関、NPO団体など、目的と目標を掲げ設立され、構成員が目標達成を目指して活動する集団です。目標を達成するために、生産性や業務効率を分析します。この際に用いられる考え方に経営組織論があります。経営において、経営組織論を理解することは非常に重要です。この記事では主に、経営組織論とは何か、経営組織論の6つの理論について解説します。
経営組織とは
経営組織論について解説する前に、まず、経営とはどういう意味か、そして組織の定義を確認しておきましょう。
経営とは、組織とは
経営とは何か。一般的には、会社や店舗など「商売」を発展させ、利益を生み、それを継続することとされています。これは外側から見た定義です。経営の当事者、つまり内側の視点に立てば、目的を達成するために、事業計画の策定と意思決定を繰り返していくことになります。
一方、組織とは、具体的には企業、官公庁、教育機関、NPO団体などを指しますが、他の集団と決定的な違いがあります。それは設立の目的と組織の目標を掲げ、所属するメンバーが目標達成を目指して活動する集団であるという点です。。例えば友達同士のグループも集団ですし、街の群衆も集団です。ですがこれらは集団であっても組織ではありません。言い換えれば、集団のメンバー全員が協力して達成しようとする明確な目標がない場合、それは組織として機能していないということになります。
組織が目標を達成するには、さまざまな仕事を行わなければなりません。例えば、次のような業務があります。
- 商品の企画・開発
- 原材料の調達
- 生産
- 物流
- 販売、営業
- アフターサービス
- 総務、人事
- 経理、財務
これら全てを一人が兼務することも、個々人がバラバラに行うことも、非効率です。そのため組織では、仕事を区分し、それぞれの担当者(責任者)を決めます。これを分業と言います。これにより、各担当者は、自分の担当業務に集中でき、効率的に目標達成に進めるのです。
しかしながらこのヨコ(水平)方向の分業には、問題点もあります。それぞれの担当が分かれているために、進め方や見解の相違、そして利害対立が生まれ、目標達成の障害になることがしばしばあります。そこで、この問題をカバーするために、タテ(垂直)方向の分業が実施されます。
タテ(垂直)方向の分業とは、組織の中で上下関係や位置づけを決め、その立場に応じた権限(リーダーシップ)を与えることで、メンバー間の意見の相違を調整しまとめる役割です。また経営陣から発信される経営方針や目標を従業員に伝え、従業員からの情報を経営陣に伝える役割もあります。
組織の要素
上記で説明した組織の定義と性質から、組織が機能するためには次の4要件を満たしていることが必要だと言えます。
- 目的の共有:組織や業務の目的の共有
- 役割の分担:分担した役割を各自が全うしていること
- 資源の共有:必要な資源の共有
- 意思疎通と協働:互いに意思疎通を図り、協働していること
組織の構造
組織構造は一般的に、次の5つに分類されます。
機能別組織
事業部制組織
チーム型組織
カンパニ-型組織
マトリックス型組織
どの組織構造が自社に適しているかを考えるには、それぞれの特徴を理解する必要があります。
機能別組織
機能別組織では、商品を作る製造部門、販売を担当する販売部門、顧客を開拓する営業部門といったように業務内容や機能部門を分けて組織を作ります。メリットは、能力やスキルによって専門家チームを作ることができることです。業務の重複も防げ、生産性アップや効率化に繋がります。デメリットとしては、部署がそれぞれ独立し、俯瞰的な視野を持つ人材が育ちにくいことが挙げられます。
事業部制組織
事業部制組織は、食品事業部、書籍部、健康事業部といったように全く異なる様々な事業を展開している企業に多く、複数の事業部に業務内容を割り振る組織構造です。事業部ごとに意思決定権を持つリーダーが存在します。そのため、速やかに意思決定できるメリットがあります。一方で、上層部(経営陣)を通しての意思決定でないため、企業としてのビジョンからズレてしまうリスクがあります。企業理念やビジョンの浸透が必須です。またそれぞれの事業ごとに製造部門、販売部門などを作る必要があり、人的・資金的負担は大きくなる傾向があります。
チーム型組織
チーム型組織は、普段は他部署に所属している人材を、特定のプロジェクトやタスクのために招集して形成されます。メリットは、専門性の高い人材のみでチームを形成できるため、高い能力発揮が期待できることです。一方、在籍部署の仕事もこなさなければならず、当人たちの負担は高いのがデメリットです。そのため、仕事量や環境などに配慮が必要です。
カンパニー型組織
カンパニー型組織は事業部制組織同様に、新しい事業部を作りますが、この事業部をひとつの会社として扱います。そのため意思決定など大きな権限と組織が付与されます。メリットはスピーディーな意思決定と、リーダーの経営能力の成長です。一方、デメリットとして、独立性が強いため、他部署との連携や公平な第三者視点が弱くなることが挙げられます。
マトリックス型組織
マトリックス型組織は、専門性に優れた機能別組織と意思決定がスピーディーな事業部制組織を組み合わせたものです。マトリックス型組織では、複数の部門や事業部に在籍でき、コスト抑制が可能になるというメリットがあります。しかしながら、複数の組織に所属する従業員が混乱しないよう、ビジョンの共有、上司のフォローなどで「ズレ」を防ぐことが大切です。
組織改革成功の秘訣
組織改革は、ビジネスの成長に不可欠なものですが、その成功は容易ではありません。組織改革を成功に導くためには、次の秘訣があります。
ビジョンの共有
組織改革を成功させるためには、まず、リーダーが変革のビジョンを明確にすることが重要です。そして、そのビジョンを共有することが大切です。ビジョンを共有することで、全員が同じ方向を向いて、目標に向かって取り組むことができます。
チームの構成
組織改革には、チームの構成が非常に重要です。組織改革に関与する人々は、変革のビジョンに共感することができ、組織の文化に適合する必要があります。また、変革のビジョンを達成するために必要なスキルと知識を持つことが重要です。
持続可能な変化
組織改革には、持続可能な変化が必要です。変革のプロセスは、組織にとって新しいものを受け入れるための時間とエネルギーが必要です。組織改革を実施する際には、変化を持続するためのプロセスや仕組みを導入することが必要です。
コミュニケーション
組織改革を実施する際には、適切なコミュニケーションが欠かせません。リーダーは、変革のビジョンを明確にし、それを従業員に伝える必要があります。また、従業員からのフィードバックを受け入れることも重要です。
計画の策定
組織改革を成功に導くためには、計画の策定が必要です。計画は、変革のビジョンを実現するためのロードマップとして機能し、目標に向かって進むための手順を提供します。
リスク管理を徹底する
組織改革においては、様々なリスクが存在します。例えば、新しい制度やプロセスが従来のやり方と異なるため、スタッフの不満や抵抗が生じる可能性があります。また、予算オーバー、スケジュールの遅れ、品質の低下など、計画と現実の乖離によるリスクもあります。
これらのリスクを最小限に抑えるためには、リスク管理を徹底することが重要です。具体的には、リスクの洗い出しや評価、対策の策定や実施、モニタリングや評価などを行うことが必要です。また、リスクに対する対応策を事前に計画し、予め想定されるリスクに対して備えることも重要です。
チームの協力を促す
組織改革においては、従業員の協力が必要不可欠です。しかし、新しい変化に対して抵抗感を持つ人もいます。そのため、チームビルディングやコミュニケーション強化などを行い、チーム全体で改革に取り組むことが重要です。
特に、組織改革の目的やビジョンを共有することが大切です。従業員が改革に対して意見やアイデアを出しやすい環境を作り、それらを取り入れることで、より良い結果を得ることができます。
経営組織論について
以上のような組織の構成や運営についての研究が、経営組織論です。組織の事業を成功させるために必要な条件を解明することが目的で、事業の成果や生産性を分析したり、組織の構成員の行動を検証します。また、構成員同士の関係や相互への影響を評価したり、組織内の生産性を向上させるためにリーダーと部下の間にどのような体制や関係を構築するべきかについて考えます。他には、経営組織論を組織行動論や人的資源管理論の研究結果と組み合わせ、新しい理論を作るケースもあります。ここでは6つの経営組織論の原則的な考え方を紹介します。
古典派組織論
古典派組織論は、組織の構造の基本的な面に注目し、業務の配分を効果的かつ効率的に行う方法を探します。そのため組織内の体制や人間関係が、組織の機能や事業の成果にどのような影響を与えているかに着目します。古典派組織論の4つの原則は以下の通りです。
- 分業:製品の製造工程を複数の部門に分割し、各部門の労働者が自分の専門分野に応じた作業をするという原則です。できるだけ安い費用で最大限の生産量を達成しやすくなります。
- 階層化と職能分化:階層化とは、経営陣や管理職が指示を出し、部下がその指示を実行するという関係です。これに対し職能分化とは、組織の機能を分割し、それぞれに対応する専門組織を作ることです。先に述べた、垂直と水平の構造がこれにあたります。
- 組織構成:組織構成とは、組織の目標達成につながる構成員の行動規定です。
- 統制範囲:統制範囲とは、チームや部署の管理者がリーダーシップを発揮し部下を十分に統制できるよう、1人の管理者に割り当てる部下の人数をを適切にすることです。
新古典派組織論
新古典派組織論は、構成員の言動における感情的および心理的側面に注目します。組織内の士気や協力関係、またはリーダーシップといった要因が、構成員に影響を与えていることが社会心理学で明らかになっているからです。新古典派組織論によると、帰属意識や周囲からの受容が組織の業務や事業の成果を向上させます。優れたリーダーは、メンバーのモチベーションを高めたり、アドバイスをしたり、コミュニケーションを図ることで、社内の人間関係を有益なものにする必要があります。
近代派組織論
近代派組織論は、組織の構成員同士のやり取りや、組織を取り巻く環境について検証します。事業に関する意思決定をする時には、数値化された統計データに頼るだけでなく、構成員の満足度や幸福度についてもしっかりと考慮することが大切です。
コンティンジェンシー理論
コンティンジェンシー理論とは、組織とは意思決定者で構成された体系であると捉え、意思決定に唯一絶対の方法はないと主張する考え方です。理想的な判断や意思決定は組織ごとに異なり、さらに現実の判断はさまざまな内的要因や外的要因に左右されるので、事業の成否は組織のリーダーによる意思決定の内容で決まると考えます。そのため組織のリーダーには、現状の分析と分析結果に基づいた行動によって、問題や課題を解決する責務があります。リーダーシップや意思決定に関するさまざまな理論がありますが、1960年代になって古典的なリーダーシップ論では新しい時代や組織に対応できなくなり、コンティンジェンシー理論が生まれました。
モチベーション理論
モチベーション理論とは、組織の構成員が目標の達成に向けて努力する要因を分析する理論です。モチベーション理論では、メンバーが職務を正確かつ効率的に遂行するには、リーダーが部下のモチベーションを正しく引き出さなければならないと考えます。また、部下の効果的な支援を提供するには、部下の行動パターンや考え方への深い理解が重要です。また、構成員の心理や感情に影響を及ぼす可能性のある内的要因や外的要因についても、検証が求められます。
オープンシステム理論
オープンシステム理論とは、組織は周囲の環境の影響を受けるので、影響を与える要因や影響を把握し分析することが、効果的な経営戦略の考案に繋がるという考え方です。環境的要因は、個別要因と一般要因に分類されます。個別要因としては、取引先となる供給業者や配送業者、競合他社、各種規制を通じ製品の生産を統制する政府機関などが挙げられます。一般要因には次の4つの側面が含まれます。
- 経済情勢:所在地の不況や景気回復など、経済的な動向や事象により、事業の拡大を続けられるかが左右されます。
- 文化的価値観:所在地によって人々の文化的価値観が異なり、顧客や消費者の支持が得られるかどうかが変わります。
- 教育制度:高度な教育を受けた人材を必要とする業界では、教育制度が確立されている地域での事業が理想的です。
- 法的要因:各種税制、法的規制、政治的要因は、組織の安定性に影響します。
まとめ
組織とは目的と目標を掲げ設立され、構成員が目標達成を目指して活動する集団です。目標を達成するためには組織を最適化する必要があり、そのための重要な考え方として経営組織論があります。この記事では、以下の点について解説しました。
- 組織とは何か
- 経営組織論とは何か
- 経営組織論の6つの理論
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