人材育成の重要性が高まる今、人材育成ができる人が求められています。人材育成に必要なスキルを身につけることはもちろん、根本的な人材育成の考え方を理解する必要があります。この記事では人材育成で大切な5つの原則をテーマに解説します。この記事でわかることは、次の通りです。
- 人材育成で大切な5つのこと
- 階層別の人材育成
人材育成で大切なこと5つ
人材育成を行うにあたって絶えず意識すべき大切なことは、次の5つです。それぞれについて解説します。
- 目標を明確に設定する
- 部下やメンバーの自主性・自発性を養う
- モチベーションが落ちないよう管理する
- 人材育成担当者自身のスキルを高める
- 人材育成に関する社内の制度を整える
目標を明確に設定する
自社が理想とする人材になるように社員を成長させることが人材育成です。そのため、人材育成においては明確な指標となる目標の設定が重要です。社員一人ひとりが自己の目標を立て取り組むに際しても、上司が部下の目標達成について進捗管理やフォローを行うに際しても、あるいは人事や教育担当者が人材育成のため研修やセミナーなどを企画するに際しても、この企業理念・ビジョンに沿う判断や行動が求められます。組織の人材育成は、明確な共通の目標があってこそ実現します。人材育成の目標は次の2要件を備えている必要があります。
- 客観的な判断指標であること
- 経営理念に合致すること
部下やメンバーの自主性・自発性を養う
周りから押し付けられただけで、育成対象者本人の理解、成長意欲といった「自主性・自発性」がなければ、人材育成は成功しません。決められたことを自分の判断でこなす自主性を養うには、自分で考える機会を多く与えることが大切です。また決められていなくても自ら進んで行う自発性を養うには、あるべき姿や理想とする状態を育成対象者に明確にイメージさせることが有用です。
モチベーションが落ちないよう管理する
育成対象者のモチベーションを維持し、絶えず高めることも、成長させるためには不可欠です。モチベーションは単なる精神論的な「やる気」ではなく、正確には「やる気を起こさせる動機づけ」のことです。「行動するための目的や理由」と言えば、よりわかりやすいでしょう。このように言うと「給料アップ」「ボーナス」といった「褒美」「見返り」のようなものを思い浮かべるかもしれませんが、決してそれだけではありません。モチベーションは、内的モチベーションと外的モチベーションに分類されます。外的モチベーションは今述べたような給料アップ、報奨金などで、短期的には非常に有用ですが、上がりやすく下がりやすい特徴があります。一方、内的モチベーションは、自分はどうなりたいのか、何をして生きたいのかといった自分自身や人生のあり方を指します。外部の影響を受けないため、上がり下がりが緩やかで長期的に働きます。企業は、教育と社内施策の併用で、社員の内的モチベーションと外的モチベーションの双方を高め維持する努力が必要です。
人材育成担当者自身のスキルを高める
設定した目標を達成できるようにする「目標管理能力」、ティーチングやコーチングなどを含む「コミュニケーションスキル」、正確な状況把握と判断のために必要な「ロジカルシンキング」など、育成担当者のスキル向上も人材育成の成果を出すためには必須です。
人材育成に関する社内の制度を整える
OJT制度、研修制度、ジョブローテーション制度、人事評価制度、目標管理制度、メンター制度といった人材育成に関する社内制度を整備することで、人材育成を安定的に行うことができます。またフレームワークを活用し、既存の制度を見直すことも、より効率的で効果的な人材育成を可能にします。
階層別の人材育成で大切なこと
対象者が新人社員、中堅社員、管理職のいずれかによって、人材育成の中身は違ってきます、それぞれの階層によって、人材として重視するべき点が大きく異なるからです。ただし前階層で習得済みとされる内容はクリアできていることが前提ですので、クリアできていないことがあれば、階層に関わらず育成の対象となります。
新入社員の人材育成で大切なこと5つ
新入社員の育成では、自社の社員として、またビジネスパーソンとしての基礎を理解させることが根幹となります。新入社員の育成で大切なことを5つ紹介します。
自社の経営理念などへの理解
まずスタートとして、自社の社員として基礎・基本である「自分が属する組織への理解」を深める必要があります。
経営理念
自社の歴史と今後のビジョン
自社のビジネスモデル
自社の組織構造
業界の基礎知識
社会人としての心構えやビジネスマナー
つい先日まで学生だった新入社員の中には、学生時代の感覚や習慣しか持ち合わせていない人もいるため、社会人としての心構えやビジネスマナーを学ぶ必要があります。そして、何故これらが大切なのかを伝え理解させることが、人材育成する側には必要です。
- 挨拶
- 所作
- 身だしなみ
- 生活習慣
- 電話応対
- 言葉遣い
- 名刺交換
- ビジネスメール
業務遂行に必要な知識とスキル
次に身につけるべきなのは、業務遂行に必要な知識とスキルです。集合研修形式での学びも基礎知識の習得には向いています。また実践的なスキルの習得にはOJTやメンター制度を通じた実践形式が有効です。
自らの役割の自覚
新入社員は、入社後しばらくは余裕がありません。業務の習得に追われ、理念、役割、使命、目標といったものに考えを馳せることは難しいかもしれません。適宜「自分はどのような役割や能力を期待されているか」「自分はこの組織で今後どういう人物になりたいのか」といったことをを考える機会を設けることは、目標の明確化や成長スピードの後押しに加え、モチベーションや帰属意識の向上も期待できます。
メンタルケアを意識する
「最近の新入社員は…自分たちの時は…」しばしば耳にする発言ですが、これは人材育成の観点からは望ましくありません。相手と自分は異なるバックグラウンド、能力、性質を持つ人間です。さらに言えば、今、新入社員を批判的に見ている人も、かつては同じように「最近の新入社員は…」と内心思われていたのかもしれません。新入社員はこれまでと大きく異なる環境で、慣れない業務へのチャレンジや失敗を経験し、相当なプレッシャーやストレスを感じています。彼らのモチベーションを高め、能力を発揮できる状態にするには、次の点に気を付ける必要があります。相手を尊重しつつ自己開示を交えたコミュニケーションを行えば、信頼関係を構築できます。上司や指導者に対する信頼は、帰属意識の向上につながります。
- 定期的な面談で相談できる機会を作る
- 気軽なコミュニケーションで孤独感を防ぐ
- 良い点は即褒める
- 悪い点は速やかに冷静に具体的に指摘し、その後はフォローする
- 人格否定は絶対にしてはいけない
中堅社員の人材育成で大切なこと
中堅社員の定義は業界や企業によって若干異なりますが、基本的には入社4年目以降を中堅とみなします。そろそろ独り立ちし、部下や後輩といった指導する対象もでき始めます。このような中堅社員に対しては、育成担当者としてのスキル向上、管理職候補としてのマネジメントスキル向上などを念頭に育成することが必要です。
組織の中枢を担っていることの自覚
中堅社員に対して絶対に必要なことは、自分たちが組織の中枢を担う重要な存在であるということの再認識です。中堅社員は、業務に慣れた一方でこの「慣れ」がマンネリ化を引き起こしやすいのです。新入社員に比べると育成の対象とされることも減り、成長や効率性が鈍化するケースが見られます。組織の大部分を占める階層である中堅が、マンネリから非効率な働きをすることは、企業にとっても大きな損失です。役員や管理職による啓発を目的とした研修や、個別面談によるヒアリングとキャリアプランの確認などによって、自分たちに求められている役割を自覚させます。
育成担当者としてのスキル
中堅社員になると部下や後輩の育成を担当する場面が増えます。下記のような手法で育成担当者としてのスキルを習得させるべきでしょう。
- 研修やeラーニング
- 得意分野で社内研修の講師を経験させる
- OJTでトレーナーを経験させる
管理職候補としてのマネジメントスキル
中堅社員は、管理職候補でもあります。そのため管理職が必要とする「マネジメントスキル」を身につけていく段階だと言えます。最も効果的な方法は、現場で管理職のフォローを得ながら、プロジェクトのサブリーダーやリーダーなどを体験することです。マネジメントに必要なスキルは次の通りです。
- リーダーシップ
- 目標管理能力
- スケジュール管理能力
- コミュニケーションスキル
- ロジカルシンキング
- クリティカルシンキングなど
管理職の人材育成で大切なこと
管理職は、企業理念、経営方針、企業ビジョンに基づいた目標達成に向け、社員をマネジメントしていく役割です。管理職の多くは実際のマネジメント業務や外部研修への参加、経営層による研修、書籍での学習など、自己啓発などを通じて学び、スキルアップしていきますが、企業あるいは上位管理職が管理職を育成するにあたり、大切なことを4つ挙げます。
経営戦略や組織論
管理職は、組織全体を俯瞰できる広い視野と経営的視点が必要です。そのため以下の項目につき、理解を深めることが求められます。
- 経営に関わる数値
- 組織構造
- 業界全体の傾向
- 競合他社の動向
社員を評価、育成する能力
社員に対する評価と育成を管理職は担います。管理職が人事評価制度の運用方法を理解していなかったり、人事評価を育成に活かせていない場合、企業の成長は望めません。人事評価研修の参加などが必要でしょう。
コミュニケーションスキルの再確認
昨今はハラスメントが問題になることが多く、管理職はコミュニケーションスキルを再確認し、学び直すことが望ましいです。コーチングやティーチングなど管理職に必要とされるコミュニケーションスキルは多く、非常に重要です。
フィードバックと成長
フィードバックは個人や組織の成長にとって重要な要素です。効果的なフィードバックの提供方法や受け入れ方、フィードバックを通じた成長マインドセットの醸成などについて探求していきます。また、組織全体でフィードバック文化を築くためのアプローチについても取り上げます。フィードバックを通じて個人と組織が成長し、より良いパフォーマンスを発揮するためのヒントをお伝えします。
フィードバックの重要性
フィードバックは個人や組織の成長において非常に重要です。適切なフィードバックを受けることで、自己認識が深まり、自己改善の意識が高まります。フィードバックは新たな視点や知識を提供し、スキルやパフォーマンスの向上につながります。また、フィードバックはコミュニケーションを促進し、信頼関係の構築にも寄与します。適切なフィードバック文化が組織内に浸透することで、メンバーのモチベーションが向上し、成果を最大化することができます。フィードバックの重要性を理解し、積極的に受け取り、提供することは、個人や組織の成長に不可欠です。
効果的なフィードバックの提供方
効果的なフィードバックを提供するためにはいくつかのポイントがあります。まず、具体的なフィードバックを提供することが重要です。具体的な事例や行動に言及し、具体的な改善点や強みを指摘することで、相手が理解しやすく具体的なアクションを取ることができます。また、建設的なアプローチを心掛けましょう。批判的な指摘ではなく、改善のための提案やサポートを伴うフィードバックを行うことで、相手の成長を促進します。さらに、相手の感情や状況に配慮しましょう。適切なタイミングや場所を選び、相手が受け入れやすい形でフィードバックを伝えることが重要です。最後に、双方向のコミュニケーションを確保しましょう。フィードバックは一方通行ではなく、相手の意見や反応を受け入れ、対話を通じてより深い理解を築くことが大切です。
受け入れと活用
効果的なフィードバックの受け入れと活用は成長に欠かせません。まず、オープンマインドで受け入れる姿勢が重要です。自己防衛的な姿勢ではなく、フィードバックを受け入れることで自己成長の機会と捉えましょう。また、感謝の気持ちを持ちながらフィードバックを受け入れることも大切です。相手が時間や労力をかけて提供してくれたことに感謝し、真摯に受け止めましょう。さらに、フィードバックを活用するためには自己反省と行動への反映が必要です。フィードバックから得た気付きや改善点を具体的なアクションに繋げ、日常業務やパフォーマンスに反映させることで、成長を促進します。自己評価や目標設定と組み合わせることで、持続的な成長を実現できます。
フィードバック文化の構築
効果的なフィードバック文化の構築は、組織やチームの成長を支える重要な要素です。まず、オープンなコミュニケーションの促進が必要です。メンバー間での意見交換やフィードバックの機会を設け、積極的な情報共有を行いましょう。また、フィードバックの質を向上させるためには、具体的で具体例を交えたフィードバックの提供方法を学ぶことが重要です。フィードバックは建設的かつ具体的であるべきであり、相手の成長をサポートする意図を持って行われるべきです。さらに、フィードバックを受ける側も積極的な姿勢で受け入れ、改善につなげる意欲を持つことが必要です。定期的なフィードバックセッションや継続的なフィードバックの文化を醸成し、組織全体でのフィードバックの重要性を認識することが大切です。
まとめ
企業の大切な資源である人的資源を効率よく活用し、長期的に企業の成長を促すには、人材育成が必須です。しかしながら人材育成の方法がわからない、上手くいかないという声は少なくありません。この記事では「人材育成に大切なこと」にフォーカスし、人材育成を行うにあたって、しなければならないこと、気をつけなけばならないことを解説しました。この記事でわかることは、次の2点です。
- 人材育成で大切な5つのこと
- 階層別の人材育成
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