経営という言葉は、誰もが聞いたことがある言葉です。しかし経営という言葉の意味を具体的に説明しろと言われると、困ってしまう人も多いのではないでしょうか?
実際に企業を経営している経営者に同じ質問をしても、返ってくる答えは一つではありません。経営者によって、経営という言葉に対する意識や考え方はさまざまだからです。しかし、曖昧な定義づけで深く考えないまま企業の経営を行ってしまうと、経営課題を解決できず、最悪の場合倒産や経営破綻といった結果につながってしまう可能性もあります。企業の経営に成功している経営者ほど、「経営」という言葉を自身で解釈し、しっかりと定義づけしているケースが多いのです。
この記事では、経営とは何か、意味や定義を確認した上で、経営のために必要な要素を下記のポイントに分けて紹介します。
- 経営の定義、経営とは何か
- 経営とマネジメントの違い
- 企業の経営において必要な要素
- 企業の経営者として失敗しないためのポイント
- 企業の経営に必要とされる5つの力
経営の定義、経営とは何か
経営の意味と定義とは
経営という言葉そのものに、明確な定義があるわけではありません。人によって表現が異なりますが、一般的には下記のように表現されています。
- 企業が目的の達成のために行う継続的な活動
- 企業が目標とする成果を出すための行動
- 企業を発展させて利益を生み発展させ続けること
経営とは何か
経営とは、企業が事業を進めていく中での包括的な活動だと言えます。組織内においては、企業が目標を達成するための事業計画の立案、必要とされる予算の計上、人材の獲得や育成といった人事業務など、さまざまな活動が含まれます。
さらに、組織の外、顧客や取引企業との関係を構築することも経営に含まれると言えます。企業の活動は自企業だけで成り立つものではなく、関係する他の企業や、買い手となる存在である顧客との関係を含めて、初めて成立するものだからです。
経営者によってさまざまな考えがある
経営という言葉に明確な定義はないと説明した通り、経営者によって、経営に対する考え方はさまざまです。だからといって、経営について漠然としたイメージで企業を運営するのでは、倒産や経営破綻といったリスクが高まってしまいます。経営に対するさまざまな考え方を知り、経営者ごとの「自分にあった経営論」を確立することが、企業の運営に必要だと言えます。
経営とマネジメントの違い
経営とマネジメントは、同じように捉えられがちですが、厳密には違う概念と言えます。混同しやすい、それぞれの役割や違いを解説します。
混同しやすい経営とマネジメント
経営という言葉は英語ではbusiness managementで、例えば大学の経営学部などschool of business managementと訳されます。そのため、経営とマネジメントの意味は、一見すると同じように捉えられることも多く、混同されがちです。
前項で解説してきたとおり、経営とは「組織の目標達成のために行動すること」と言えます。対してマネジメントは、著名な経営学者であるドラッカーによると「組織に成果をあげさせるための道具・機能・機関」と定義されています。
マネジメントは経営の一部
経営は「組織の最終的な目標の設定と、その達成のための行動」であり、マネジメントは、その中で「成果を生むための仕組みやツールを実行すること」です。つまり、マネジメントとは経営という大きな枠組みの一部に含まれる概念だと言えます。
企業の経営において必要な要素
企業経営においては、組織の最終目標と方向性を明確にし、達成に向けた経営計画を策定しなければなりません。さらに計画を遂行するための経営資源を整え、それを管理する体制を構築することが重要です。
企業経営のために必要な次の3つの要素について、それぞれ解説します。
- 企業の方向付け
- 経営の計画
- 経営資源の管理
企業の方向付け
企業の経営にとってまず大事なのは、どのような目的を持って、どういった事業を行うのかという、企業の方向付けです。企業の最終的な目標や、方向性を確立することによって、組織内の行動や判断のブレをなくします。それによって、業務の優先順位が明確になり、スムーズな決断と経営のスピードをあげることが出来ます。
経営の計画
企業の目標と方向性を確立したら、次はその達成に向けた経営の計画を策定する必要があります。目標達成のための課題や問題点をあぶり出し、その解決に向けて、どういったプロセスが必要となるのか、具体的な経営の計画を策定します。
経営資源の管理
策定した経営計画を実行するには、そのための経営資源が必要です。経営資源とは、企業経営において必要なリソースである次の4つを指します。
- 人材:組織内および外部の関係者を含む人的リソース
- 資金:現金以外に債権、株式等も含んだキャピタル
- 資材:工場、オフィス、通信機器、製品等の物的リソース
- 情報:顧客や市場動向、競合他社に関する情報など、さまざまな情報データ
これらの経営資源を調達し、それを管理するための体制を構築します。
企業の経営者として失敗しないためのポイント
企業はどれくらい倒産しているのか
現在企業を経営していたり、もしくは今から起業して経営者になろうと考えているならば、近年における企業の倒産状況についても調べておくことが大切でしょう。東京商工リサーチが行った調査では、我が国における過去5年の企業倒産件数は、次のようになっています。
- 2018年:8,235件
- 2019年:8,383件
- 2020年:7,773件
- 2021年:6,030件
- 2022年:6,428件
2020年、2021年は、新型コロナウイルスの流行によって、倒産件数は増加するかと思われましたが、コロナ禍において政府の金融支援により、倒産件数は例年を下回る水準に抑えられました。しかし、過去のデータから見ると、平均して毎年8,000件前後もの企業が倒産しています。
失敗しない経営のためのポイントとは
企業の経営を失敗しないためには、前述した経営に必要な要素に加え、幅広い視野で全体を見渡して現状を把握することと、迅速な意思決定、適切な人材の活用が大切です。
経営において失敗を避けるための、次の3つの要素について説明します。
- 幅広い視野での業務の管理
- 的確でスピード感のある意思決定をすること
- 適切な人材の雇用と教育を行うこと
幅広い視野での業務の管理
経営者には広い視野を持って、俯瞰的な視点で経営を管理することが求められます。企業はさまざまな分野において、それぞれの担当者が管理業務に当たっていますが、各担当者は、自身が担当している分野の管理業務に注力すれば事足ります。しかし、経営者は、広い視野を持って組織全体を俯瞰することで現状を把握したり、組織の方向性を修正する能力が大事です。
的確でスピード感のある意思決定をすること
経営者には、先見性を持って情勢を見極め、的確な判断で、迅速な意思決定を行う決断力が求められます。また、情報化、グローバル化が進んだ現代では、技術革新のスピードも速く社会情勢の変化が激しいため、組織が効率的に動くためには、経営者は先を見通す力も必要となります。意思決定の精度を上げるためには、経営者だけの判断だけでなく、外部の専門家のアドバイス等を柔軟に取り入れることも大切です。
適切な人材の雇用と教育を行うこと
企業の経営が軌道に乗るためには、経営者だけではなく、現場の従業員の能力も大きく影響します。したがって、たとえ経営者がどれほど優秀であっても、実際に企業活動を行う現場の人材の能力が上がらなければ、経営改善は見込めません。そのため、人材の育成は、経営を成功させるためには必須と言えます。人材が成長を続けることが、そのまま企業の成長につながるといっても過言ではありません。企業が長く生き残るためには優秀な人材を探すだけではなく、現在雇用している人材の成長を促す研修や教育も同時に必要です。
企業の経営に必要とされる5つの力
経営者には、企業の経営を円滑に進めるために必要とされる能力がいくつかあります。安定して利益を上げている企業の経営者は、この多くをを持ち合わせています。企業の経営に必要とされる次の5つの力について、簡潔に説明します。
- 感情ではなくデータを基にした分析力
経営においては、感情よりもデータを見て冷静に情報を分析し、感情に流されることなく決断する力が大事です。ただデータだけ、感情だけで決断するといった極端な思考ではなく、データを基にして、柔軟な思考で利益につなげる分析力が必要になります。
- 目標を達成するための継続力と精神力
企業を経営するうえで、全てが順調に進むことはまずありません。経営のなかで、次々と出現するさまざまな課題を解決し、目標に向かって進み続ける精神力、わかりやすく言うとメンタルの強さは経営者に必須と言えます。
- 計画と行動を迅速に行える瞬発力
ライバル企業との競争を勝ち抜くためには、計画と行動は、可能な限り迅速に実行することが重要です。そのためには、すばやく計画を立案し、それをすぐに実行に移すための瞬発力が必要になります。ただし、拙速に陥ることなく、適切なタイミングを見極める判断力も同時に必要です。
- 周囲の人間に対する共感力
人との関わりも経営にとって重要な要素です。顧客に対する思いやりだけでなく、従業員や取引先に対しても、良好な関係を構築することで、お互いの肉体的、精神的負担を軽減し、働きやすい環境を維持することが企業の発展にもつながります。
- 時代の流れを読む力
ここ数年の例を見ても、コロナウイルスの流行やウクライナ情勢での、急激な需要と供給の変化は記憶に新しいところです。経営において時代の流れを読み取り、状況の変化に応じて常に経営内容をアップデートする力は不可欠と言えます。
まとめ
「経営」と言う言葉は、それぞれの経営者によって捉え方が異なり、明確に定義づけされているわけではありません。しかし、経営においての基本的な原則、考え方は存在します。この記事では、その原則に沿って「経営とは何か?」と言う点を解説しました。
確固たる定義がない以上、企業の活動を成功に導くためにも、「経営」という言葉を自分なりに解釈して、常に勉強する姿勢を忘れずに自分なりの経営理念を形成することが大切です。
この記事では、次の点について解説しました。
- 経営の意味と定義とは?
- 経営とマネジメントの違い
- 企業の経営において必要な要素
- 企業の経営者として失敗しないためのポイント
- 企業の経営に必要とされる5つの力
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