KPIとは、「重要業績評価指標」のことで、最終目標を実現するために重要な中間目標値を定めることです。この言葉が耳慣れないという方もいらっしゃるでしょう。そんな方のためにこの記事ではKPIに関する基本的な知識を解説します。この記事で取り上げる項目は次のとおりです。
- KPIとは何か
- KGIやKFSとの違い
- KPIの重要性
- KPIの設定方法
- ロジックツリーとPDCA
- KPIの事例
- SMARTの法則
- 失敗するKPIとは
KPIとは何か
KPIとはKey Performance Indicatorの略です。日本語にすると「重要業績評価指標」となります。わかりやすく言うと中間目標のことで、大きなゴールに向かう過程で通過するポイントごとの目標数値です。ダイエットをするときに、「最終的には10kg痩せたい」と思っていたとしましょう。計画を細かく立てていくときに、「月に2kgずつ痩せよう。6kg痩せたら、この服を買おう。」、または「最初は体重が落ちやすいから今月は週1kgの減量を目標にして、来月からは月に2kgずつ減らそう。それなら5ヶ月で達成できるから、年末のハワイ旅行に間に合う。」といったように、中ゴール、小ゴールを立てるのと同じです。
KGIとはどう違うのか
KPIと混同されがちな言葉にKGIというものがあります。このような用語はうっかり間違えてしまうと、意図が伝わらなかったり誤解したまま話が進んでしまうので要注意です。KGIはKey Goal Indicatorの略で、日本語にすると「重要目標達成指標」となります。これは最終ゴール、最終目標のことです。先ほどのダイエットの話なら「マイナス10kg」「年末のハワイ旅行までに大幅に痩せる」というのがKGIになります。通常は、KGIとKPIを一緒に考えて設定します。
KFS(重要成功要因)とKPIの違い
KFSという用語もあります。KFSはKey Factor for Successの略で、日本語では「重要成功要因」という意味です。3つの言葉の関係は、例えば次のようになります。
KGI(最終目標)を達成するため:売上を期末までに倍増
その重要な要素となる途中経過の数値であるKPIに取り組む際に:新規商談を月100件
行う施策がKFS:SNS投稿を強化
2.KGI(重要目標達成指標)とは? KPIとの違い
KGI(Key Goal Indicator)は「重要目標達成指標」です。最終目標について、何を・どれくらい・どの期間に達成するか、数値で指標化したものをいいます。
中間指標にあたるKPIとともに使用され、一般的には売上・利益・顧客数などが設定されます。
KPIの重要性
先ほどダイエットの例を出したのですが、これを資格や受験の勉強に置き換えるともっとイメージしやすいかもしれません。膨大な参考書、問題集などの教材を山積みにすると、ゴールまでの道のりが果てしなく、何から手をつければいいのかわからず、心が折れそうになります。ところが「1日30分を2回、問題を10問解き、間違えたところを復習」、これならできそうに思えませんか。KGIのみを掲げ、従業員に丸投げしてしまうと、達成へのプロセスが思い浮かばなかったり、だから今何をどうすればいいのかが理解できなかったりします。ところがKPIを細かく設定することで、誰にでも目標達成に向けた道筋が見え、また目標が細分化されることで心理的な障壁やプレッシャーが下がります。KPIを設定することで、目標達成の可能性が上がると言っていいでしょう。また、細かく具体的にKPIを設定しておくことで、うまくいかないときに「これはできている」「しかし、これはできていない」「どの時点でどんな問題があったのか」といった分析がしやすくなり、軌道修正も容易です。
KPIの設定法と事例
初めてKPIを設定する方にもわかりやすく、設定の仕方を解説します。まずKPIはゴールから逆算すると良いです。以下に例をあげます。
- KGI:30件の受注成約が目標
- 商談アポからの受注率は50%→商談アポ件数は60件以上必要
- 問い合わせからの商談アポ率は30%→問い合わせ数は200件以上必要
このようなステップを踏んでKPIを設定すれば、目標達成までの流れや数値が具体的になりKPIが設定できます。
KPI設定の参考事例
具体的なKPI設定事例をご紹介します。
インサイドセールス
インサイドセールスとは、見込み客に対し非対面で行う内勤営業活動のことで、最もよく知られているのは、電話やメールを使ったリモートセールスです。インサイドセールスの立ち上げ段階では、当初、商談数と受注数が比例します。そのため、電話営業であれば、架電数ではなく商談数をKPIとします。商談数と受注数との比例増加が頭打ちになったら、KPIを商談数ではなく受注数に切り替えます。
これがメールマーケティングになれば、ユーザー数の増加に加え、開封、クリック、コンバージョン、それぞれの確率がKPIとなります。
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスの場合、インサイドセールスと異なり、KGIは事業の伸長です。そのためには、顧客満足度、契約継続率、既存顧客からの新規顧客紹介などが重視されます。よって解約率、顧客推奨度、オンボーディング完了率(顧客のうちサービス活用が軌道に乗っている割合)、売上継続率がKPI数値となります。
KPIツリーとPDCA
KPIの成功に向けて重要なことは、正しくKPIを設定することと、遂行してからのマネジメント、この二つです。ここでは、KPI設定時に便利なロジックツリーであるKPIツリーと、マネジメントフレームワークとしてのPDCAについて解説します。
KPIツリー
KPIツリーは、KPIを設定するためのロジックツリーです。先述した営業の事例がわかりやすいと思いますので再掲します。
- KGI:30件の受注成約が目標
- 商談アポからの受注率は50%→商談アポ件数は60件以上必要
- 問い合わせからの商談アポ率は30%→問い合わせ数は200件以上必要設計
KGIを頂点として、そこに達成するまでのプロセスを分解していきます。
PDCA
PDCAは数あるマネジメントメソッドの中でも耳にすることが多いので、しっかりと理解しておきたいものです。
Plan(計画)
Do(実行)
Check(評価)
Action(改善)
これを回し続けることで、継続的な業務改善が可能になります。多くの企業や組織で採用されています。
KPI設定のポイント「SMARTの法則」
KPI設定のコツとして知られているのが「SMARTの法則」です。目標達成のための重要な要素5つの頭文字です。
Specific(具体的)
Measurable(測定可能)
Assignable(誰がやるのか割り当て可能)/Achievable(達成可能)
Realistic(現実的)/Relevant(適切な)
Time-related(期限が明確)
この5つのポイントを明確にしたKPIであれば、従業員も主体的に取り組みやすく、目標達成しやすくなります。
Specific(具体的、明確)とは
- 顧客訪問件数
- 成約率
- 不良品発生率など
現場が日々意識せざるを得ない項目を指標にすることが大切です。
Measurable(測定可能)とは
- 発注回数
- 販売数など
KPIは件数、回数、率など、数字で表現できるものにします。
Assignable(誰がやるのか割り当て可能)/Achievable(達成可能)
AについてはAssignable(誰がやるのか割り当て可能)/Achievable(達成可能)の二つの説があります。それぞれについて説明します。
Assignable(誰がやるのか割り当て可能)は誰が何をどこまで担当するかを明確にすることによって、受け身や傍観者にならず主体的な取り組みが行えます。
Achievable(達成可能)は、KPIの達成が、従業員の自信やモチベーションを高めることから、達成感があり、本人の努力が評価につながる目標を設定することです。
Realistic(現実的)/Relevant(適切な)
RについてはRealistic(現実的)/Relevant(適切な)の二つの説があります。それぞれについて説明します。
Realistic(現実的)は、実現可能なKPIでなければならないということです。実現性の低い目標を設定しても無意味なだけでなく、従業員のモチベーション低下を引き起こします。頑張れば、少し背伸びして無理すれば到達できる目標に設定することが、成長を促します。
Relevant(適切な)は、目標との関連が適切なKPIを設定する必要があるということです。そうしなければ、最終的な目標達成の指標となりえないためです。
Time-related(期限が明確)
KPIについて緊張感のある取り組みを維持するには、期間や機嫌をはっきりと定めることが重要です。週、月、四半期、上・下半期といった期限をあらかじめ設定することで、現実的な行動につながります。
失敗しやすいKPIとは
上記のSMARTの法則を踏まえると、その反対のKPIが失敗しやすいKPIということになります。もう少し具体的にどのようなものが望ましくないか、考えてみましょう。
Not Specific(曖昧な)
人によって解釈が異なるようなKPIは不適切です。例えば「顧客第一主義」「丁寧な営業」などです。
Not Measurable(測定できない)
KPIは数値化できなければいけません。進捗や達成度が数値化できないものはKPIにふさわしくありません。例えば「なるべく多くの顧客にアプローチする」「市場の動向を把握する」などの目標は、KPIとしては不足です。
Not Achievable(達成不可能な)
たとえばこれまで月に5個しか売れていない製品について、いきなり「毎月500個販売する」というKPIを設定しても、現実的ではありません。高すぎる目標は社員のモチベーションを下げます。
Not Relevant(不適切な)
KPI「重要業績評価指標」の設定は、あくまで人事マネジメントや経営戦略の一環で、本業の業績評価につながる必要があります。戦略との関係が不明瞭な項目は、不適切です。
Not Time-bound(期限を定めていない)
期限の設定がなければ、アクションが伸ばし伸ばしになってしまいます。「できるかぎり早くやる」といった一見迅速に取り組むように見える目標も不適切です。なぜなら対象期間を明記することで、KPIは正確に測定可能となるからです。
KPIの改善と更新
ビジネスの成功には適切な指標とその改善が不可欠です。KPI(Key Performance Indicators)の改善と更新に焦点を当て、効果的なKPI運用のポイントを探っていきましょう。定期的な評価や課題特定の方法、新たな目標に合わせたKPIの再設定、関係者の参加とコミュニケーションの重要性など、KPIの最適な活用方法について解説します。成果を向上させるためのベストプラクティスを共有し、組織の成長をサポートします。
定期的なKPIの評価と振り返り
KPIの定期的な評価と振り返りは、組織の成果を把握し、改善の方向性を見極めるために重要です。定期的な評価により、目標達成状況や課題が把握でき、早急な対応が可能となります。振り返りでは、KPIの達成度や進捗を客観的に検証し、良かった点や改善すべき点を明確に把握します。また、関係者間での意見交換やデータ共有を通じて、意義ある情報を得ることができます。これにより、成果を最大化し、次なるKPIの設定や目標へのアライメントにつなげることが可能です。定期的な評価と振り返りは、持続的な成果を上げるために欠かせないプロセスと言えるでしょう。
KPIの改善プロセス
KPIの改善プロセスは、持続的な成果を確保するために重要です。まず、現行のKPIの適切性と目標達成度を評価し、課題や改善点を洗い出します。次に、関係者との意見交換やデータ分析を通じて新たなKPIの設定や評価基準の見直しを行います。その後、改善したKPIを組織全体に周知し、目標達成への意識を高めます。定期的なモニタリングと振り返りを行い、進捗と結果を評価し、必要な修正を行うことで、KPIの効果的な運用を確保します。改善プロセスの透明性と関係者の積極的な参加が、組織の成果向上と戦略的な目標達成に繋がることを忘れずに取り組んでいきましょう。
KPIの更新と新たな目標の設定
KPIの更新と新たな目標の設定は、組織が変化する環境やビジネスニーズに適応し、成果を持続的に向上させるために重要なプロセスです。
定期的なKPIの更新では、過去のデータや実績をもとにKPIの妥当性や達成可能性を検証します。変化した環境や組織の方向性に応じてKPIを見直し、必要に応じて追加・削除・変更を行います。新たな目標の設定では、組織の戦略的な方向性やビジョンを踏まえて、新たな成果目標を設定します。これに伴い、KPIも再度選定し、数値化や評価方法を定めます。
このようにKPIの更新と新たな目標の設定を継続的に行うことで、組織は変化に適応し、戦略的な成果を持続的に追求することが可能となります。また、柔軟な対応と迅速な意思決定により、市場環境の変化にも適切に対応できるでしょう。
KPIのコミュニケーションと関係者の参加
KPIのコミュニケーションと関係者の参加は、組織全体でKPIの意義と目標を理解し、共有するために欠かせません。関係者がKPIの重要性と影響を把握することで、目標達成に向けた取り組みが促進されます。定期的な報告やミーティングを通じて進捗や成果を共有し、フィードバックを受け取ることで、KPIの透明性が高まります。また、関係者の参加によってKPIの設定や評価基準に対する意見を反映し、より適切なKPIを策定することが可能となります。これにより、組織全体でKPIに向けた意欲と共感を高め、目標達成に向けた一体感と協力関係を構築することができるでしょう。
まとめ
今回はKPIを知らないという方のために、KPIの基礎知識を解説しました。この記事で取り上げた項目は次のとおりです。
- KPIとは何か
- KGIやKFSとの違い
- KPIの重要性
- KPIの設定方法
- ロジックツリーとPDCA
- KPIの事例
- SMARTの法則
- 失敗するKPIとは
コメント