KPIマネジメントの概要、方法

ビジネスでゴールであるKGIを達成するためには、そのプロセスを適格にクリアしていくことが必要です。このプロセスの中間目標をKPIといいます。KPIはモチベーションやパフォーマンスを向上させ、確実に目標と現状とのギャップを埋めていくための重要な評価指標です。このKPIを適切に管理するKPIマネジメントが、KPIの成功のために必要です。

この記事では次の項目について解説します。

  • KPIとは
  • KPIマネジメントとは
  • KPIマネジメントが必要な理由
  • KPIのメリットとデメリット
  • KPIの設定方法
  • KPIの事例
目次

KPIとKPIマネジメントとは

KPIとは「Key Performance Indicator」の略です。日本語にすると「重要業績評価指標」となります。わかりやすく説明するときには「中間目標」と言われたりもします。最終ゴールとなる目標数値(KGI)を達成するためには、定期的に達成状況をチェックします。その際の指標がKPIです。

KPIは、設定、遂行、改善を繰り返し、より優れたKPIへと変化します。それが目標達成の近道です。そのためには、マネジメントが重要です。

マネジメントや経営の知識がまったくないという方でも、夏休みの宿題とイメージしていただければわかりやすいでしょう。8月末になって慌てないためには、最初に中間目標を設定し、それが達成できているかを定期的に確認することが有効です。

KPIマネジメントが必要な理由

最近特にKPIマネジメントの重要性に注目が集まっているのには、次の3つの理由があります。

ビジネスを取り巻く環境が目まぐるしく変化し複雑化している

近年は特に、グローバル化やインターネットの普及、価値観の多様化などで、ビジネスを取り巻く環境の変化が激しくなっています。このような状態では、自分たちの現状を正確に把握し、速やかに軌道修正していく必要があります。そのためにKPIは役立つのです。

生産性の向上

少子高齢化が深刻な我が国では、生産性を最大化させることは必須です。KPIマネジメントによって、リソースの適切な配分が可能になります。

人材の多様化

昨今は、女性の進出、障がい者や高齢者の雇用促進、外国人労働者の雇用など人材が多様化しています。またテレワークなど働き方も多様化しています。KPIマネジメントは、自社の方向性を明確にし全員で共有できるのみならず、多様な人材を適正に有効活用することにも役立ちます。

KPIマネジメントのメリットとデメリット

KPIマネジメントには次のようなメリットとデメリットがあります。

KPIのメリット

目標指標の明確化

仕事で何をどこまでやればいいのかわからない状態というのは、モチベーションも生産性も上がりません。また統一された指標がないと、各自の解釈に差異が生まれます。KPIの設定はこれらを解決します。

評価基準の統一

KPIは定量的な指標ですので、数値によって公平に評価できます。これは従業員が不満を感じずモチベーションを維持できる環境を作ります。

モチベーション向上

目指すべき方向性や具体的な数値がKPIという具体的な指標で示されれば、何をするべきかが明白です。仮に問題が起きたり達成できないときも、KPIマネジメントがしっかり行われていれば、原因究明がスピーディにできます。

PDCAサイクルが回しやすい

KPIは中間目標ですから、定期的にKPIを測定し検証すれば、PDCAサイクルを確実に回せるようになります。KPIを設定していないと、ゴールまでの距離、つまり今の位置がわかりません。また業務や流れが細分化して可視化されていないので、原因の発見やそれが後のプロセスと最終目標にどのような影響を与えるのか見定めるのに時間がかかります。

KPIマネジメントのデメリット

KPIマネジメントの最大のデメリットは、目の前の数値のみが追求され、プロセスや、顧客満足度、モチベーションといった定量的でない部分が軽視されてしまいがちな点です。ひいては、離職や顧客離れといった悪影響を生んだり、KGIの失敗につながり、まさに本末転倒です。このような状況に陥らないためには、従業員全員がKGIをしっかりと理解することが大切です。KPIはあくまでもKGI実現のためのプロセスです。

KPIマネジメントの手順

KPIマネジメントをすることになったが、どのような手順で設定、管理すれば良いかわからないという人は少なくありません。適切なKPIマネジメントのための手順を紹介します。

KGIを設定

KPIは最終ゴール(KGI)に向けたプロセスのための指標ですから、KPIを設定する前に、KGIを設定します。KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)はKPI同様に、「今期の売上高○万円」といった定量的な数値でなければいけません。

KGI(目標)と現状とのギャップを把握

次に、KGIの目標値と現状の数値にどのくらいのギャップがあるかを把握します。そのギャップを埋めるために必要なプロセスがKPIだからです。

何が必要かを考える

ギャップが判明したら、そのギャップを埋めるための戦略、「何を」「どれくらい」すれば良いかを分析します。このときには目標値を構成する要素を分解するのがポイントです。どういうことかというと、例えばKGIが売上金額であったとすれば、その達成に必要な子とは何かを考えます。アポイント数、商談数、顧客単価、顧客数といった改善すべき項目が浮かび上がってくるでしょう。ここでCSF(Critical Success Factor:重要成功要因)を設定します。CSFとは、KGIを達成するための重要な成功要因です。売上金額を達成するためには「商談数を増やす」「単価を上げる」などが挙げられます。

KPI設定

CSFを基にしてKPIを設定します。たとえば「顧客数を増やす」というCSFをKPIに変換すると、以下のようなアクションが考えられます。

  • WEBサイトへのアクセス数
  • 問い合わせ件数
  • アポイント獲得数
  • 商談件数

KPIの事例

KPIを適切に設定、管理し成功した事例をご紹介しましょう。

くらコーポレーションの廃棄率減

回転ずしチェーンなどの飲食店の課題として、食品の廃棄問題があります。

  • 鮮度の良い商品を提供する
  • 待ち時間を少なくし、スピーディーに提供する
  • フードロスを減らす
  • 無駄になる材料(原価)を抑える

このように相矛盾するニーズをどのようにすれば両立できるか。「無添くら寿司」を展開する「くらコーポレーション」の事例が参考になるでしょう。回転レーンに載せて55分以上経過した商品は廃棄する方針をとっていますが、この方針と収益性のバランスを改善するために、廃棄率を最重要KPIとして設定したのです。その手法は次のとおりです。

  • 皿のうえにICチップを入れ、注文履歴や販売データを蓄積
  • 現在の来店客の属性や時間による全体の消費量予測データと組み合わせる
  • レーンに流す皿数や製造するタイミングを管理指示

これによって、10%程度あった廃棄率を3%まで減らすことができました。

パーク24の入電率減

最近はサービス提供現場が無人化されている業態も数多くあります。このような業態では、いかにトラブルやストレスなく、誰でもスムーズに利用できるかどうかが、重要な課題の一つです。このような企業の一つがカーシェアリングで国内最大手の「パーク24」です。パーク24は入電率をKPIとして設定しました。入電率というのは、顧客から何回利用方法についての問い合わせの電話がコールセンターにかかってくるかという指標です。入電率を減らすために、サービスの改善に取り組み、顧客満足度を向上させています。

KPIマネジメントの失敗事例

上記で成功事例を紹介しましたが、残念ながらKPIマネジメントに失敗しているケースも少なからずあります。よくある失敗例をご紹介しますので、自社がそのようにならないように確認し、問題があれば速やかに改善して頂ければと思います。

従業員のネガティブな行動を引き起こす

例えば売上高に拘り過ぎて、顧客との信頼関係を無視してしまうようなKPIが挙げられます。接客業の中には、1回きりではなく、継続的な関係を構築しなければ長い目で見て利益にならない商品やサービスがあります。にもかかわらず安易に無理なKPIを設定し、従業員が顧客のニーズや事情を無視して高額商品をごり押ししてしまい、結果として顧客離れを引き起こすリスクがあります。

KPIの見直しをしない

一度設定したKPIをずっとそのままにしている企業が見受けられますが、ビジネス環境や事業戦略が変われば、無意味な指標を見て行動し続けることになってしまいます。KPIは定期的なチェックだけでなく、社内外の環境や事情が変わったら、連動して変えていかなくてはなりませんKPIは生ものです

項目を設定し過ぎる

KPIは名前のとおり「重要な指標」であるべきです。あれもこれもと数多くのKPIを設定することは、力の分散化を招き、結局どれも中途半端に終わるリスクが高いです。KPIは複数達成しますが、多くても3つくらいに留めるのが、失敗を防ぐ鍵になります

まとめ

ビジネスを取り巻く環境の変化が激しく、顧客の嗜好も従業員も多種多様な時代を生き残っていくには、KPIマネジメントが必要です。また適切なKPIマネジメントは、従業員のモチベーションやスキルを高め、人材育成にもつながります。最終目標であるKGIを達成するために、KPIマネジメントでは、KGIやCSFを踏まえた適切なKPI設定と、PDCAサイクルをしっかりとまわしていくことが重要です。

この記事では次の項目について解説しました。

  • KPIとは
  • KPIマネジメントとは
  • KPIマネジメントが必要な理由
  • KPIのメリット
  • KPIの設定方法
  • KPIの事例
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