製造業におけるKPIの意義、事例、設定方法と注意点について

「KPI」とは組織が最終的な目標を達成するために設定する中間目標であり、進捗度をチェックするための指標です。KPIは様々な業種や部門で活用されていますが、今回は製造業におけるKPIに注目し、詳しく解説します。

この記事でわかることは次のとおりです。

  • 製造業におけるKPIの意味、必要性
  • 製造業におけるKPIの例、活用法
  • 製造業におけるKPIの設定方法、注意点
  • 製造業のロジックツリー
目次

製造業におけるKPI

最もわかりやすいKPIの例は、営業の売上目標に対するKPIです。目標とする売上・利益額を実現するためには、「訪問件数を上げる」「成約率を上げる」などのプロセスを達成する必要があります。KPIで管理することによって、最終的な目標に対する達成度を、正確に把握することができます。

一方、製造業の現場でKPIを活用する目的は、次のようになります。

  • 業務の可視化         
  • 生産性の向上         
  • 効率性の向上         
  • 安全性の向上

製造業とは、”モノ”を作り、販売したり、他社に供給して利益を得ている業界のことです。製造業は、企画、開発、生産、流通、販売まで一貫して手がけている巨大グローバル企業から、ネジのように小さな部品をメーカーに納入している町工場まで様々です。企業規模も製造品目も多種多様です。かつて日本は「モノづくり大国」と言われ、製造業が日本の発展を支えてきました。従来の製造業では、人の手によるライン作業が行われていました。しかしながら近年、作業の自動化が進むと同時に、デジタル技術の発達と導入により、組立て、加工、仕上げ、点検、仕分け、梱包、生産管理などの各工程でデータが取得・蓄積できるようになりました。これによって、効果的なKPI管理がしやすくなったのです。

製造業におけるKPIの必要性

製造現場では、作業のムリ・ムダ・ムラをなくし業務改善するために、「IE(インダストリアルエンジニアリング)」の採用や、ネットワークカメラによる製造現場の管理など、様々な技術やシステムなどを採用することが多いです。これらを導入するだけでなくKPI管理すれば、現状分析や改善を継続的に行い、最終的な目標達成へつなげることができます。

製造現場におけるKPIの例

製造現場で使われているKPIの例を紹介します。

生産品目単位で作成されるKPIの例

予定していた「計画値」と実際のデータである「実績値」とを比較することで見えてきます。

  • 原価率        
  • 原材料保留差異
  • 収率差異         
  • 工数差異         
  • 製造リードタイム         
  • 製造指図量比         
  • 製造指図工数比         
  • 生産計画日程比                           
  • 不良率

予想した「計画値」と、実際に算出された「実績値」を比較し、改善点を探します。

工程・製造系列・整備ユニット単位で作成されるKPIの例

生産品目単位ではなく、生産量や時間稼働率のように設備や製造ユニット単位で改善を図るためのKPIもあります。

  • 生産量差         
  • 生産指図数差         
  • 標準工数差
  • 就業工数生産性         
  • 投入工数生産性         
  • 目標比率達成率         
  • 設備稼働率         
  • 時間稼働率         
  • 設備パフォーマンス         
  • 設備総合効率

ルールの遵守や研修によって改善される作業環境に関するKPI

製造業では、ルールを厳守させる、作業手順のトレーニングを徹底させるといった作業環境の改善によって、作業現場での事故発生件数現象や、生産性向上が図れます。

  • 事故発生件数
             
            

製造現場を改善するKPIの活用法

製造業におけるKPI活用の最大限の目的は、業務改善のために現場を可視化することです。代表的な活用法(視点)を3つ説明します。

  • 原価管理:企業のリソースであるヒト・モノ・カネ・情報を、部門や工程・品目ごとに管理
  • KPI評価:製造現場にKPIを導入し、目標に対する達成度を測る
  • 現場作業監視:作業状況をリアルタイムに把握する

原価管理

利益とは、売上や生産高から原価や費用を引いたものです。原価管理では、利益率目標を達成するため、あらかじめ設定した標準原価と、実際にかかった原価との差を比較します。これは、適切な価格設定をし、利益を確保するためです。原価管理では以下の項目についてKPIを設定します。

  • 材料費(原料費・燃料費)         
  • 労務費(人件費)         
  • 製造経費(機械の減価償却費等、材料費や労務費以外の経費)

この製造原価を把握するための資料が「製造原価報告書(CR)」です。KPI設定時には、CRに加え、製造工程、設備、時間、製品などのコストも把握します。

製造現場KPI

評価製造現場KPI評価では、商品製造に必要となる「ヒト」「モノ(材料)」「設備」についてKPIを設定し、生産性を高めます。生産の三要素であるQCD(品質、コスト、納期)の観点からKPI設定に取り組みます。設定したKPIは、「生産品目・スケジュール(製造指図)」と「工程・製造系列・設備ユニット」に分けて、進捗を管理します。具体的には、実績を週・月単位で集計し達成度をチェックする、評価結果に基づいて目標達成に必要な施策を検討・実施する、このようにPDCAを回します。

製造作業監視

ネットワークカメラで現場の作業状況をリアルタイムで監視し、「ムリ・ムダ・ムラ」の原因を探ります。QCD(品質・コスト・納期)向上が目的です。製造作業監視で設定するKPIは、稼働率・不良率・事故発生件数などです。また、品質を一定に保つ(標準化する)ためにも、製造作業の監視は有効です。

H2KPIを設定する際のポイント

製造業に限りませんが、KPIを設定するときに注意すべき点があります。それは数を絞り、かつ効果的なKPIを設定するということです。KPIの数は多くても5つまでが良いと言われています。またKPIを設定するときには「SMARTの法則」に沿ったものにすることが大切です。SMARTの法則とは次の5つの要素の頭文字を取ったものです。

Specific(具体的)

Measurable(計測可能)

Achievable(達成可能)

Related(関連した)

Time-boundedly(期限を定めた)

それぞれについてより詳しく説明します。

Specific(具体的)

現場の現状をから改善の余地が間違いなくあると考えられ、具体的な改善目標を立てることのできる項目であること。

Measurable(計測可能な)

達成度や達成までの距離について、継続的に計測・把握できる項目であること。

Achievable(達成可能な)

達成可能な改善目標であること。

Related(関連した)

部門や企業の最終目標と直接的な関連性があること。

Time-bounded(期限を定めた)

適切に計測できるよう期限が必ず決まっていること。

KPI運用時のポイント

現場でKPIの運用を始めたら、以下の3点について注意します

目的を見失わない:KPI管理を行う目的は何かを常に意識します。KPIを作ったりただKPIを満たすことだけが目的にならないことが大切です

時系列を重視する:時系列で把握できないものは、正確な評価・検証ができません。

現場の関係者が運用する:KPIの目標と実績にギャップがある場合、何かしらの原因がありますが、現状を最も理解できるのもコントロールできるのも現場です。現場の関係者が、継続的に原因分析を行い、改善策を見出すことがより適正なKPIを作り出します。

製造業のKPIツリーについて

製造業でKPI管理を行う際は、自社製造現場に必要なKPIを選択することが重要です。そこで役立つのがKPIツリー(ロジックツリー)です。ロジックツリーとは、課題を頂点にしてその詳細や要素をツリー上に分解し、原因や解決策を論理的に探すためのフレームワークです。線で結んだ図が“木”に見えるため、”論理の木“とも呼ばれます。製造現場でのKPIツリーには、次のようなものがあります。

  1. 生産効率を構成するKPIツリー
             
  2. 不良率を構成するKPIツリー

2つ目のKPI例は、不良率を構成するKPIツリーです。KPIツリーで製造工程を分解することによって、でどれだけ不良品が出たかを測るだけではなく、部品・作業・設備のどこで不良が発生するかを測ることが改善に役立つでしょう。

製造業におけるQCDバランス

製造業では、従来からQCDバランスを重視してきました。QCDというのは、次の3つの頭文字を取った言葉です。

Q(Quality:品質)

C(Cost:原価)

D(Delivery:納期)

この3つを改善し向上させることが、経営指標の達成や企業の成長に結びつくと認識されています。しかしこのQCDには、大きな問題が一つあります。それは、ある要素の向上が別の要素の低下を招く相反関係にあるということです。

  • 品質を向上させると原価が高くなる
  • 原価を下げると品質も下がる
  • 納期を短くすると品質が下がる

そのため多くの製造業にとってQCD向上は難しい問題なのです。解決策としては、それぞれの最適な妥協点を探るという手法が従来から取られる傾向がありました。そのため、これ以上の改善は難しいと考えられていたのです。しかしKPIツリーによるQCD要素の探索とKPIマネジメントによるQCDの向上プロセスを徹底することで、それぞれの要素がお互いに干渉しあわない解決策や対策を取れる可能性があります。これができれば、QCDは今までより大きく向上させることができます。

まとめ

製造業におけるKPIは業務を可視化し、効率性や生産性、安全性を高めます。どのようなKPIを設定すればよいかは、現場によってそれぞれ異なるため、一概にはいえません。ただ、何でも設定すればよいというわけでなく、現実的かつ具体的で計測・達成が可能な内容をKPIとして設定することが、基本にして重要です。

この記事でわかることは次のとおりです。

  • 製造業におけるKPIの意味、必要性
  • 製造業におけるKPIの例、活用法
  • 製造業におけるKPIの設定方法、注意点
  • 製造業のロジックツリー
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次