KPIを個人目標に落とし込む方法

目標管理にKPIを導入する企業は珍しくありません。KPIはもはや知っていて当たり前のビジネスマネジメント手法です。しかし、KPIは単なる指標ですから、部門や上司から設定されただけでは、個々の従業員の理解は不十分なことが多々あります。その状態では「具体的に自分はどのようなアクションを取ればいいのか」曖昧なまま、KPIの遂行が開始されてしまう危険性があります。このようなことを防ぐため、今回はKPIと個人目標(行動計画)の関係について解説します。

この記事でわかることは次のとおりです。

  • KPIと個人目標の(アクションプラン)の関係
            
  • KPIを個人目標に落とし込むやり方
            
  • 個人目標の例文
            
  • KPIと個人目標の設定における注意点
目次

KPIと個人目標の(アクションプラン)の関係

まずKPIとは何か、既にご存じの方も多いと思いますが、簡単に確認しておきましょう。KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)とは、企業や組織が目標(KGI)を達成するための重要な成功要因(CSF)について設定する管理指標や管理基準数値のことです。しかしながら現場で実際に業務遂行するのは経営層や管理職ではなく個々の従業員です。従業員が、会社の目標・目的や部門・チームのKPIの内容と関連性を正しく理解した上で、さらに当人の行動にリンクさせることができれば、高いモチベーションと自発的な取り組みが期待できます。

しかし実際には、会社の目標や進捗状況の共有について、経営者と従業員の間で認知にギャップがあることが珍しくありません。例えば、経営層は企業理念や経営ビジョンの追求を重視している一方、人材育成については意識が低く、反対に現場の従業員は日々の業務に追われており、企業理念や経営ビジョンを語る前に、人員補充や無駄な業務の効率化、有給取得や残業軽減など、もっと人材を大切にしてほしいと願っているようなケースです。これだけ読んでも「あるある、うちの会社もそう」と頷いている方は少なくないのではないでしょうか。

これは目標や進捗の共有についても言えることで、会社の目標やその進捗状況を一般従業員まで共有している中小企業は少ないです。また大企業であっても、経営層が打ち立てた目標が十分に従業員に浸透していないことが少なからず起こります。これではKPIマネジメントによりKGIを達成し、企業の目標を実現することは難しいです。

またKGIやKPIを設定し全社一丸となって目標に向かっていると思いきや、現場の進捗状況を経営層は把握していないこともあります。これでは折角設定したKPIも設定しただけで形骸化しており、計画を立てるだけで満足しているのとあまり変わりません。

会社の目標を達成し、組織としてより発展していくには、経営層と従業員の相互理解と共に、KPIが個人目標にまでしっかり落とし込まれていることが大切なのです。しかしながら会社、または部門やチームなどの組織KPIは設定されても、個人目標として各従業員のKPIが設定されているかというと6割以上の企業で「されていない」という現実があります。「わたくしごと」「自分の問題」としてKPIを捉えるには、個人目標と組織のKGI、KPIが紐づけられている必要があります。

個人目標管理の役立つMBO

上記に加え、日本ではバブル景気が過ぎ去り経済低迷が続く90年代から、人件費を抑え、貢献度の高い社員を優先的に雇用し、昇給、昇進させる必要が生まれました。そのため終身雇用や年功序列といった旧来の制度が崩れ、職務遂行能力や職能資格よりも成果が重視される成果主義が普及しました。

KPIと成果主義。この2つのもと注目されているのがMBO(Management By Objectives)という目標管理制度です。MBOはアメリカの経営学者ピーター・ドラッカーにより提唱されました。グループまたは個人で設定した目標の達成度で人事評価が決まります。評価基準が明確なため、マネジメントと従業員双方が納得できる公平さが長所です。日本においても多くの企業がこの手法を取り入れています。

KPIを個人目標にするメリット

このMBOを導入し、企業の目的を個人目標KPIにすることで、次のようなメリットがあります。

社員の自発性・自律性

MBOでは、社員が自分で目標を立てて、達成を目指し取り組みます。このメリットは、会社や上司から与えられる、または押し付けられるという受け身ではなく、主体的に行動できる点です。この個人目標が会社の目標やKPIとしっかりリンクしていれば、自分で考え行動し成果を出せる、会社にとり優秀な人材が生まれます。またMBOは目標の達成が評価と会社の業績に直結しますから、自尊心の強化とモチベーションアップにつながります。

自主的なな能力開発

従業員は、自分の現状の能力やスキル、あるいは自分が容易に達成できそうなレベルよりも少し上の目標を立てることで、必要なスキルを取り込もうと努力します。

個人目標の設定と管理

このような目標管理制度の運用手順は次のとおりです。

組織の目標の策定と共有

最初に、基礎かつゴールとなる組織全体の目標を明確に策定します。一般的に、経営層が経営目標を策定し、それを部長クラスであるゼネラルマネージャーへ伝え、各部門で事業や部門ごとの経営目標が設定されます。次に現場に近い中間管理職であるセクションマネージャーへこの経営目標が下りてきます。セクションマネージャーの役割は自セクションの部下に対し、組織目標の内容や意図を理解できるように伝え、具体的な行動プランとしての個人目標の策定を求めます。

個人目標・行動プランの策定

社員に個人目標を策定してもらうのですが、この目標は公平に評価できる客観性が担保されていなければなりません。そのため目標が定性的な項目ばかりでなく、具体的で定量的な目標になっているかを確認します。また、本人の成長とモチベーション維持のため、簡単すぎることなく、かつ実現可能性のある数値に設定する必要があります。この時に意識したいのは次の3点です。

  • 上位KPIとの関連性
            
  • 具体的な行動
            
  • 自分が目標を達成することで、自分と組織それぞれがどのような成果が得られるのかをイメージ

個人目標といえば、今話題の中古車販売・買取会社のように上から押し付けられる「ノルマ」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、それはKPIの実現という意味では不適切です。

【例文】個人のKPI目標設定の書き方を紹介

【営業】

全体の売上目標や成約数などの目標に対応し、自分が担当する割合を計算し、それに連動した目標を立てます。

  • 目標:6ヶ月で3,000万円の売上達成
            
  • 達成期限:6ヶ月
            
  • 行動計画:契約獲得のため、毎日アポイントを取る

【営業事務】

事務職の場合、業務効率化が目標となることが多いです。

  • 目標:月の残業時間を20時間削減するために、工数を減らし作業効率を20%向上させる
            
  • 達成期限:3ヶ月
            
  • 行動計画:自動化ツールを導入し、全担当者がトレーニングを受ける

【経理】

業務効率化の他にも、次のようなスキルアップの目標を立てることもできます。

  • 目標:年次決算を後任者に引継ぎ、連結決算業務をこなせるようになる
            
  • 達成期限:今年度
            
  • 行動計画:必要業務スケジュールの洗い出し、OJTが円滑に進むようスケジュール調整、マニュアルの作成・改定、定期的に時間を取り作業進捗確認

【企画】

  • 目標:ブランドイメージを大幅に変える新商品を1つ誕生させる
            
  • 達成期限:3ヶ月
            
  • 行動計画:市場調査の実施、新商品の販促計画

進捗確認・軌道修正

目標を決めたらそれっきりではありません。進捗状況の振り返りであるPDCAのCとA、つまりチェックと改善は必須です。また現実に遂行していく中で、予定通りに進まないこと、問題が出てくること、うまくいかないことは当然あります。ビジネス環境の変化や、見積り違い、あるいは目標設定に誤りがあることもあります。目標達成のプロセスで課題や問題が生じたら、気軽に相談でき、またそのような状況になっていないか上司がチェックする環境が必要です。目標の達成度を定期的に見ながら、軌道修正をサポートするには、週1または月1といったペースでミーティングや1on1を実施することが大切です。

評価・フィードバック

本人が目標に対して評価した後、直属の上司が客観的に評価します。評価結果をフィードバックすると同時に、本人が現状や原因を掘り下げて理解することも大切です。大切なのは採点ではなく、足りない部分を改善し次に活かし、そのためのモチベーションを達成できた部分から得ることです。

KPIと個人目標を設定する際のコツ

個人目標を策定しKPI達成の成功率を高めるには、あるコツがあります。それはPDCAのC(チェック)ポイントを前もって明確にしておくことです。目標達成にPDCAサイクルが重要なことに異論はないと思いますが、ここで重視したいのは見落とされがちなCの機能です。P(プラン)、D(実行)で止まってしまっていることが少なくないのですが、むしろPDCAの真髄は、C(チェック)とA(改善)にあります。進捗確認のタイミングと項目を最初に決めておくことで、より高い質の目標管理ができます。

まとめ

今回は会社や組織の目標実現につながるように個人目標を設定するというテーマを考えてみました。組織の目標達成、成功、成長は、人材である従業員の行動にかかっています。企業の最終ゴールであるKGIを達成するには、KPIを適切に設定、運用することが欠かせないように、組織や部門のKPIを個人目標に落とし込みしっかりと管理することが、短期的、長期的、双方の意味で企業の利益となります

この記事でわかることは次のとおりです。

  • KPIと個人目標の(アクションプラン)の関係
            
  • KPIを個人目標に落とし込むやり方
            
  • 個人目標の例文
            
  • KPIと個人目標の設定における注意点
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