マネジメント能力とリーダーシップの違い よくある悩み、必要なスキル、能力向上の秘訣について

複数の人が集まり共に共通の目的に向けて力を合わせるプロジェクトでは、チームをマネジメントしていく存在が必要です。このマネジメント担当者には、いくつかの必要不可欠な能力やスキルがあります。今回はこのマネジメントの能力向上について取り上げました。

この記事でわかることは次のとおりです。

  • マネジメント能力とは何か
            
  • リーダーシップとの違い
            
  • マネジメントに多い課題や悩み
            
  • マネジメントに求められるスキル
            
  • マネジメントスキルを高める方法
            
  • マネジメントが成功する人の特徴
目次

マネジメント能力とは

まずマネジメント能力とはなんのことでしょうか。マネジメント能力をそのまま日本語にすると「管理する能力」となります。ビジネスの場合、その人のポジションによって管理する対象や範囲は異なりますが。管理するのは次のリソースのいずれかです。

  • ヒト:部下、従業員
            
  • カネ:会社の資金などお金
            
  • モノ:会社の設備や保有している物
            
  • 情報
            
  • 環境

マネジメント能力とリーダーシップの違い

マネジメント能力とリーダーシップは同じではないことに注意が必要です。リーダーシップは「ヒト」を対象とし、チームや組織を導く役割や能力を意味します。マネジメント能力は「人」を含めた「経営資源」全体が対象で、管理します。

マネジメントによくある課題や悩み

マネジメントをする立場の管理職がぶつかる課題や悩みは様々ですが、特に多いものを取り上げその対処法を解説します。

年上部下との関係

部下が年上。このパターンは年功序列が崩れ転職も当たり前になった現在、よく見られます。人生の先輩である年上の人に横柄な態度を取ることは論外ですが、上司が年齢を気にしてしまうとするべき指示や指摘ができず、業務に支障が出ます。また部下のほうも遠慮してしまい指導を乞いにくくなります。年齢のことは一旦置いて、職責の全うを優先しましょう。年齢どうこうではなくその人の経験、特性、スキルを活かせる役割を与え成果を評価することこそが、真の信頼関係や良好な人間関係を生みます。そうすれば、年上の部下は生き生きと働くことができ、思わぬところで他のメンバーにない能力を発揮し大きな力となるでしょう。この姿勢は、他の部下と年上の部下、他の部下とマネジメント、それぞれの関係にも良い影響を与えます。

部下の育成

管理職になりたくないという人が増えているといいます。その原因の一つは、これまでプレイヤーとして能力を発揮してきたのに、管理職になると部下を育成し部下の成果によって評価されるためです。「自分でやったほうが楽」「人間相手は難しい」など行き詰って思わず愚痴をこぼしたくなることもあるでしょう。部下を育てようと一生懸命に問題点を指摘し叱っても、手ごたえがない、改善しない、それどころか関係が悪くなっていく。こうなると無力感に苛まれるでしょう。そういう時には一旦「指導」とは何か、「叱る」とはどういうことか考えてみる必要があります。「叱る」と「怒る」の違いは正確に把握できていますか。「指導」と「駄目だし」や「押し付け」の違いは理解できているでしょうか。

上司が部下を指導するのは、部下に「考える」ための「気づき」を与えることです。部下に聞く耳を持ってもらうためには、前提として、会社やチームの目標や目的、それらと自分の業務との関連性を理解し納得していることが必要です。達成できようができまいが自分には関係ないと他人事のように捉えてしまう理由として、チームなどの目標達成がどのような未来を会社とそして自分自身にもたらすのかメリットがわからないということが挙げられます。これでは、モチベーション高く自発的に行動してくれと言っても無理があります。会社から、あるいは上司からの命令として決まり事を伝えるのではなく、従業員一人一人が自分の行動や成果が意味のあるものだと感じれられるように、説明し納得してもらうことは、マネジメントの重要な役割です。

そのように部下に伝える力を磨くとともに、部下の「聞く耳」を育てることも大切です。それは普段からの部下とのコミュニケーションや上司側の「聞く姿勢」に大きく影響されます。定期的にミーティングなど意見交換の場を設け、意見交換をしたり、部下の悩みを聞いたりすることで、部下の信頼と自己肯定感は高まります。意見を聞いてもらえる、理解してもらえるという安心感は、積極的な行動とチームへの帰属意識の高まりにつながり、パフォーマンスが高まります。

プレッシャー

管理職は部下と上司の間に立つ立場で、上からは成果を、下からはリーダーシップを求められます。さらに自分だけでなく部下の仕事全体に責任を持たなければなりません。そのため、心理的なプレッシャーが多いといえます。ともすれば孤独を感じやすいポジションですが、自分一人ですべてをやりきろうとしてはいけません。マネジメントの役割は部下を育て業務を任せ、それを監督することです。部下の特性の把握や適材適所への配置など、マネジメント能力を発揮することで、円滑に業務が進むようになります。

マネジメント能力に必要とされるスキル

前述したようにマネジメント能力は経営資源全体を対象として管理する能力であるため、これがないとマネジメントできないというスキルがいくつかあります。それらについて解説しましょう。

目標設定・意思決定スキル

簡単に言うと決断力です。この目標設定・意思決定スキルは、マネジメント(管理職)が部下を率いていく際に不可欠です。上司からの方針や指示をただそのまま部下に流すのではなく、自分たちチームの中でかみ砕いた目標を設定するのですが、メンバー間の意見の対立や代替案などもしっかりと深堀りした上で、最終的に意思決定する必要があります。組織の方針に沿い、現場の現状やメンバー個人個人の状況を把握し、最終的に明確な方向性を示すことは、働く「環境」を整え方向性を示すというリーダーおよびマネジメントの重要な役割です。

スケジュール管理スキル

目標と現状のギャップを埋めるためには、スケジュール管理が欠かせません。マネジメント(管理職)は、予算、期間、人数、進捗状況など様々な項目を勘案してスケジュール管理を行います。また、しっかりとスケジュールを立てていても、思わぬアクシデントが起こることもあります。そんなときにも柔軟に対応できる体制を整えるには、前もっていくつかの状況を想定しておくことも大切です。

課題解決スキル

課題解決スキルというとわかりにくいかもしれませんが、目標達成の障害となる課題や問題、そして起こりうるリスクといったものについて、分析し、最適な判断をするスキルです。普段使う言葉でいえば、状況判断となります。正しい状況判断ができる人は、物事を理論的に考えます。この論理的思考をロジカルシンキングといいますが、マネジメント担当者が論理的思考の持ち主で、勘や感情で決断・指示しないことは部下の安心や信頼につながります。

コーチングスキル

コーチングスキルは「ヒト」を対象としたマネジメントで必要になります。個人個人のメンバーが持つ能力を引き出し、その開花をサポートすることがマネジメントには求められます。より効率的に業務を進めたり、個人の特性や才能を存分に活かすことで、本人のパフォーマンス向上はもちろんのこと、チームとしての成果もより最大値に近づけていくことができます。マネジメント担当者(管理職)には、部下を育て、まとめ、部署を、そして会社を発展させていくために、このコーチングスキルが必須です。

コミュニケーションスキル

部下との信頼関係なしに、プロジェクトの成功は望めません。進捗状況を正確に把握するためにも、またスケジュール通りに業務を進めるにも、また部下にモチベーションを維持させ積極的に能力を発揮してもらうためにも、良好な人間関係と報告・連絡・相談が欠かせないからです。尊敬されたり頼りにされることはもちろん、なんでも話せる雰囲気が作られていることも重要です。部下から、この上司には何を言っても無駄と思われてしまうと、コミュニケーション不全に陥ってしまいます。また部下からの報告・連絡・相談を待つだけでなく、自分から声をかけるといった姿勢も大切です。

テクニカルスキル

テクニカルスキルとは専門分野、担当分野の技術力のことです。マネジメントに専門的なスキルが要るのか、業務は部下の仕事ではないのかと驚かれるかもしれませんが、トラブルが起きた時にそこにいる部下だけでは手に負えないことがあります。そんなときに管理職が対応できることは非常に意味があります。また、部下と業務改善方法やトラブル対処法を話し合うときにも、このテクニカルスキルや専門的な知識があるのとないのとでは、大きな違いが出ます。

マネジメント能力を向上させる方法

マネジメント能力を高めたいのであれば、最も確実なのは、経験を積むことでしょう。しかし漫然と年月を費やしてもマネジメント能力向上が見込めるわけではありません。日々の業務において、次の項目をしっかりと行えば、マネジメントの質が高まります。

自分の考えを自分の言葉でしっかりと伝える

部下に企業のビジョンや部門・チームの目的・方向性を理解してもらい共通の認識を持ってもらうためには、まず管理職が自分の考えを自分の言葉で部下に伝えなければいけません。右から左に流すだけの指示では、部下はただの与えられた作業としか仕事を捉えることができません。そうではなく、そのタスクが全体のどこに位置し、どのように役に立つのか、指示を出すならその指示を出す理由を伝えれば、部下は自分が何を何のためにやっているのかが理解できます。そうすれば、会社またはチームの一員として自分が貢献しているという実感を持つことができるのです。また共有するのは立派な内容やポジティブなことのみでなくても良いのです。部門やチームが抱えている問題や悩みを管理職自ら部下に共有することは、部下にとって頼られているという自信や自己肯定感を与えます。またある程度経験を積み、近い将来マネジメント職になる年次の社員であれば、そのような課題について考えてみることがマネジメント教育の一環にもなります。

ページングと傾聴

傾聴という言葉は皆さんも耳にしたことがあるでしょう。相手の話に熱心に耳を傾けることですが、これにページングを取り入れると効果が倍増します。ページングというのは、相手に合わせたペースで話を聴くことで、具体的には同調と、相手の話すペースに合わせた相づちやトーン、スピードなどを指します。このコミュニケーションによって、部下は上司が自分を受け入れ理解してくれるという安心と信頼を持ちます。それによって、ミーティングなどでも活発に発言することができるのです。

スケジュール把握

プロジェクトの進捗を把握するのはマネジメントとして当然のことですが、部下のスケジュールを把握できているとさらに良いです。部下が担当している業務の進行度の裏にある、内容、他の業務量、適性、家庭の事情など様々な要因を理解していれば、業務量の偏りや無理な分担を防ぐことができ、結果として全体の業務を円滑に回すことができます。そのためには部下のスケジュールの共有や、日報や週報のチェック、さらにコミュニケーションを密に取ることが大切です。

分析力と課題解決力を鍛える

マネジメントにとって分析力と問題解決力は不可欠です。様々なロジカルシンキングメソッドやフレームワークがあるので積極的に活用しましょう。

プロジェクトマネジメント力を磨く

プロジェクトマネジメント力とは、品質・コスト・納期を適切にコントロールする能力です。数値で把握すること、定期的に進捗状況を確認することといったは基本ですが、加えて「ポジションチェンジ」の考え方が有用です。ポジションチェンジというのは、視点を変えて物事を見るということで、部下、顧客といった自分ではない立場ならどうかという視点を大切にすることが客観的な判断につながります。また、予期しないトラブルは必ず起きます。そのときにも、ポジションチェンジの思考法で取り組めば、思わぬ解決策が見つかることもあります。視点は言い換えれば思考回路です。思考を柔らかく保ちましょう。

部下を認めリスペクトする

人は、ひとりひとり異なる考えや特性を持っています。部下を一人の人間として認め、尊重することは、信頼関係を構築します。そしてこれは日々の関わりから実現できることです。ミーティングなどのときだけ、いわば取ってつけたようにきれいごとを言われるより、普段からの「認めてもらえている」という感覚は働きやすい環境を作ります。

ストレス解消

プレッシャーやストレスがある管理職は自己のストレス管理も大切です。自分がストレス解消できていると、精神的な余裕から部下のケアもしっかりとすることができます。自分がメンタル面でいっぱいいっぱいな状態では、冷静な分析も、部下について細部まで気を配ることもなかなかできません。まず自分が心身ともに健やかであることが、マネジメント能力の基本だと言っても良いでしょう。

マネジメントが成功しやすい人

マネジメントに長けている人は、専門的な能力やビジネススキル面で優秀な人が多いかもしれませんが、皆さんが思っている以上に人柄が力を発揮していることもよくあります。マネジメントを成功させている人の大きな特徴をご紹介しましょう。

俯瞰的に物事を見る

マネジメントはバランス感覚が大切です。中間管理職という言葉のとおり、会社(経営層)の視点と、現場の視点の間に立って、双方のすり合わせを行わなければなりません。ともすれば現場は短期的な視野での意見になりがちです。それらに耳を傾け取り入れることは大切ですが、すべて鵜呑みにしてしまったのでは、目的の達成や企業の成長は望めません。長期と短期の両方、そして多角的な視点が持てる人は、俯瞰的な視点で判断できます。

情報の共有徹底

円滑に業務が回っているチームは「ほうれんそう」、報告・連絡・相談がきちんとできているということは、昔から知られています。つまり小さなことであっても情報を共有することが、トラブルの早期発見や迅速で適切な対応につながるのです。そして情報共有がしっかり行われるには、部下から上司への報告・連絡・相談の推奨だけでなく、上司から部下に情報が公開されていることも重要です。ただし、あまりに情報量が多いと共有しても理解や把握が追いつきません。前もってどの重要な情報をどのタイミングでどのように共有するか、ルール化しておくことが大切です。

部下に自由にやらせ忍耐強く見守ることができる

人材育成がうまくいかないマネジメントのおおきな特徴として、口を出し過ぎてしまう、あるいは反対に丸投げしてしまうということが挙げられます。すべて細かく指示してしまうと、部下は受け身にならざるを得ません。余計なことを考えないことが正解になってしまったのでは、考える力も育たず成長することができません。また細かい指示を作った当人以上に「そのとおりに」できる人は存在しませんから、上司から見ると部下の能力や成長に不満があるでしょう。目標を与えある程度の大枠や注意点をしっかり伝えたら、あとは、できるだけ任せ、かつ忍耐強く見守ることが必要です。

評価が明確、公平

部下がモチベーションを高く維持するには、成果や貢献度について公平で適正な評価がされ、それがインセンティブにつながる必要があります。そのためには評価基準が明確でなければなりません。評価基準が可視化、数値化されていると同時に、数値化できない部分についても適正に目配りできる上司は、従業員のモチベーションや貢献度を向上させることができます。

まとめ

マネジメントには必要不可欠なスキルがあります。このマネジメント能力向上は、チームや組織の円滑な業務遂行と目的達成に欠かせません。マネジメント能力に必要なスキルを理解し、マネジメント能力を高める努力をすることで、誰でも現在のマネジメントよりハイレベルなマネジメント能力を身に着けることができます。

この記事でわかることは次のとおりです。

  • マネジメント能力とは何か
            
  • リーダーシップとの違い
            
  • マネジメントに多い課題や悩み
            
  • マネジメントに求められるスキル
            
  • マネジメントスキルを高める方法
            
  • マネジメントが成功する人の特徴
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