起業前に知っておきたい起業相談の基礎知識

起業するために必要な資質として、「行動力」「忍耐力」「決断力」「柔軟性」が挙げられます。これは起業家本人の資質や能力ですが、ここにもう一つ「起業家支援の活用」を加えたいと思います。起業に関する相談や支援制度を有効活用できるかどうかが、スムーズに起業し成功をおさめる鍵となります。起業家支援は大きく分けて次の2つがあります。

  1. 起業に関する知識を専門家や経験者から得て、経験不足を補う。
  2. 助成金や貸付など資金面での支援、優遇。

この2つを得ることを念頭に、この記事では次の点について解説します。

  • 起業相談はどこでできるか
  • 起業のための助成金の種類、内容、メリット、注意点
目次

起業相談は誰にするべきか

起業のアイデア、経験値、潜在顧客、具体的な段取りの知識と理解、法的な知識、潤沢な資金、広い人脈など、全てを兼ね備え準備万端で起業する人は一部でしょう。多くの人は、色々な不明点や疑問点を抱えており、それを一つ一つ潰していかなければなりません。特に資金調達は、起業時および創業して間もない頃には大きな問題となります。原則返済不要な助成金や補助金、そして交付金などは積極的に活用していくべきです。しかしながら、日本には数千種類の助成金があるので、どれが良いか調べるだけでも大変です。金額が低いわりに申請に手間がかかる助成金等もありますので、採択率が高く費用対効果のよいものを選びたいものです。

「三人寄れば文殊の知恵」という諺もある通り、自分一人の知識だけで起業するより、誰かに起業相談したほうが負担が軽くなり問題解決が早まるのは確かです。では起業相談は誰にすれば良いのでしょうか。国や自治体も起業家支援を行っていますし、起業家支援を活動内容としている非営利団体も存在します。また近年は、起業支援サービスや起業コンサルタントも増えています。それぞれについて、解説しましょう。

国の公的起業支援相談先、非営利団体

非営利団体の商工会議所や商工会は、起業する人のための相談窓口を設けています。ここでは税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士などの専門家から、各種手続きに関する悩みや疑問に対してのアドバイスを無料で受けることができます

商工会議所

商工会議所は国の公的な経済団体ですが、同時に地元企業支援として起業支援関連の事業も扱っています。起業支援相談窓口があり、設立手続き、事業計画の作成の方法、資金調達法など様々な起業相談ができます。

中小企業基盤整備機構

中小企業の支援を行う国の機関で、対面、オンライン、電話、メールなどで起業相談を行っています。事業経営に関する知識、補助金や助成金の申請方法など、起業全般の相談が可能です。

日本政策金融公庫 

ホームページには「新たに事業を始めるみなさまへの創業支援」と記されています。日本政策金融公庫は政府系金融機関で資金調達をする際に利用する機関ですが、創業前支援という名目で起業相談も行っています。事業計画の作成、資金調達、設立や許認可の手続きについて質問、相談が来店、オンライン、電話などで可能です。電話予約制ですが土日祝日も来店可能なので、現在就業中で起業を目指す方にも利用しやすいのが特徴です。

中小企業庁(経済産業省) 

現在事業活動を行っている中小企業、これから起業しようと思っている人を支援するための機関です。経営サポート「創業・ベンチャー支援」起業家教育支援、経営革新支援、新連携支援、中小企業活性化協議会(収益力改善、再生支援、再チャレンジ支援)、雇用・人材支援、海外展開支援、取引・官公需支援、経営安定支援、共済制度、小規模企業支援、ものづくり中小企業支援、技術革新・IT化支援、省エネ対策、経営支援体制、経営強化法による支援、先端設備等導入制度による支援。各種補助金公募を行っています。ホームページを見ると、成長型中小企業など研究開発支援事業、地域商業機能複合化推進事業、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金など多数の支援事業や補助金があるのがわかります。

中小機構 

中小企業政策の実施機関です。起業の状態や経営課題に応じた支援メニューがあります。市場調査、商品企画、事業性評価など事業計画のブラッシュアップ、販路開拓のフォローなどを専門家がサポートします。

税務署

税務署と言えば税金を徴収する機関ですが、それだけではありません。起業するには、法人税、事業税、消費税などを払い、またその申告や対策をする必要があります。個人事業主としてフリーライターをしている自分の確定申告さえ面倒なのですから、法人として起業した場合、経理や税に関する知識がない人はかなり悩まされることでしょう。税務署は、詳細について詳しく相談に乗ってくれます。

また特定創業支援事業といい、決められた講座を受講することで、登録免許税が半額になる制度があります。これは各自治体と連携している制度ですので、そちらに問い合わせる必要があります。

自治体の起業支援相談先

自治体独自に、補助金や助成金を設けたり、起業支援に力を入れているケースもあります。地域内の産業振興、雇用創出、人口流出防止などが目的です。自治体によってかなり温度差があるのが実情ですので、自分が起業したい自治体の起業支援について確認する必要があります

東京都の起業支援機関の例

東京都創業NETという起業家を応援する情報プラットフォームがあります。スタートアップから事業計画、開業支援、創業者同士のコミュニケーションまで網羅しているワンストップセンターで、創業助成金、融資や助成制度も設けられています。都だけでなく区市町村の支援事業もあります。ワンストップセンター。

他にも以下のような起業支援が東京には存在します。

大阪の起業支援機関の例

大阪産業局は、創業支援、経営起業相談、セミナーやビジネススクール、商談会、交流会などを提供しています。他にも以下のような起業支援が大阪では行われています。

  • 産創館大阪産業創造館
  • 大阪イノベーションハブ
  • スタートアップカフェ大阪
  • 女性企業間応援プロジェクトネットワークSHIP

コンサルタント、起業支援サービス 、専門家

民間の経営コンサルタント、起業コンサルタントによる起業支援サービスもあります。税理士、弁護士、行政書士などの専門家が起業相談に乗っていることも少なくありません。このように起業に関する支援を行う事業者をBusiness incubatorといいます

起業に対する助成金について

日本政策金融公庫の実態調査によると、起業を志す人の懸念トップ3は、次の3つです。

  • 資金繰りや資金調達
  • 顧客販路の開拓
  • 財務、税務、法務に関する知識の不足

このうち資金繰りや資金調達についてまず検討されるのは、次の2つです。

自己資金(貯蓄などの資産)

融資または出資

この他の方法として、以下が挙げられます。

助成金を活用する

クラウドファンディング

通常複数を組み合わせる必要があります。ここでは助成金について、詳しく解説します。

助成金、補助金、交付金、給付金の違い

助成金と紛らわしいのですが、補助金、交付金、給付金というものもあります。同じではありません。

補助金:受給の難易度が高い。補助金の申請先は経済産業省や地方自治体であり、財源は税金である。申請期間が短い、予算が決まっている、給付まで時間がかかるといったデメリットがある。

助成金:厚生労働省または国や地方公共団体が、雇用促進を目的に給付する。財源は雇用保険料。雇用保険加入従業員が1名以上いることが最低条件。短期募集が多い。

交付金:助成金は必要な起業資金、操業資金のうちの一部額を支給するが、交付金は全額支給が多い。また交付される期間が長い

給付金:金額の幅が広い。

助成金額はいくら貰えるのか

気になるのが、「実際いくら貰えるのか」という金額の問題です。数多くの助成制度がある中で、代表的なものをご紹介します。

創業・事業承継補助金

助成金額は200万円です。しかし、外部から資金調達の確約がない場合は半分の100万円になります。外部からの資金調達確約とは、銀行などの金融機関から融資を受ける約束をしているかどうかという事です。

新創業融資 

新しい事業を開始、または税務申告を2期終えていない起業家が対象です。無担保、無保証人で最大3,000万円(運転資金最大1,500万円)を融資。「創業時に資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できること」という要件がありますが、現在勤務する起業と同じ業種であればこの要件を満たすと見做されます。

創業助成事業 

創業5年以内の事業者、または開業を予定している人が対象。人件費や賃借料などにも使える。交付期間は、決定日から6ヶ月以上最長2年で、助成率(全資金に対する助成金の割合)は3分の2以内、助成の限度額は300万円(下限100万円)

ものづくり補助金 

製品開発などを支援する補助金制度。種類によって額は異なり、一型は2,000万円(補助率2分の1、小規模事業者は3分の2)グローバル展開型は3,000万円(補助率2分の1、小規模事業者は3分の2)、ビジネスモデル構築型は1億円(補助率10分の10)。

大阪起業家グローイングアップ事業

最大100万円(補助率2分の1)。推薦機関による選抜と一次審査がある。

その他の助成制度

  • 新規開業支援資金
  • ディープテックベンチャー向け債務保証制度
  • 新創業融資制度
  • 創業支援貸付利率特例制度 
  • 特別試験研究費税額控除制度 
  • ストックオプション税制 
  • オープンイノベーション促進税制
  • エンジェル税制

など数多くの助成制度や支援制度があります。

起業相談でよくある質問と回答

以下のような質問や疑問について、起業相談を受けることで、アドバイザーから専門的なアドバイスを受けることができます。

起業するにあたって必要な手続きや書類は何ですか?

    法人設立に必要な書類、税金や社会保険などの手続きなどについてアドバイスを受けることができます。

    起業するためにはどのくらいの資金が必要ですか?

    起業する際に必要な資金について相談することができます。また、資金調達の方法や財務の見積もり方法についてもアドバイスを受けることができます。

    自分のスキルや経験を活かして起業したいのですが、どのようなビジネスがありますか?

    自分のスキルや経験を活かしたビジネスのアイデアや、それらを実現するための戦略やマーケティングについて相談することができます。

    起業するにあたって必要なノウハウや情報はどこで得られますか?

    起業するための情報やノウハウについて、インターネットや書籍、セミナーなどの情報源を紹介することができます。

    起業に成功するために必要なマインドセットや考え方についてアドバイスを受けたいです。

    起業に必要なマインドセットや考え方、成功するための行動パターンについて相談することができます

    自分が起業することが本当に正しい選択なのか不安です。

    起業することに対する自信や不安について相談することができます。また、起業する前に自分自身がすべきことや、起業に向けてのステップアップ方法などもアドバイスを受けることができます

    助成金などの起業支援制度のメリットと注意点

    メリット

    メリットは何と言っても、資金調達の困難が解決することです。起業から創業初期には資金調達に苦労することが多いですが、これらの制度を使えば、余分な出費を抑え効率的に起業を行えるだけでなく、助成金や補助金は原則返済不要であり借金のリスクも避けられます。採択率が高く費用対効果のよいものを選ぶことが、重要です。

    デメリット

    デメリットは大きく分けて3つあります。

    • 金額が低いわりに申請に手間がかかる制度が少なくない。
    • 数千種類あり、どれが良いか調べるだけでも大変。
    • 後払いであり、通常の融資のように申請が通れば振り込まれるわけではない。今の支払いのためのキャッシュとして使えるわけではない。

    ただし最後の、「すぐ使えるキャッシュにならない」という点については、補助金を担保にし日本政策金融公庫などの公的な金融機関から融資を受けるという方法を取ることができます

    高校生など若者の起業支援

    この記事を読んでいる方の中には、未成年や学生もいるでしょう。近年、若者の起業は増えています。20代どころか高校生から起業する人も現れ、頼もしい限りです。このように若者の起業が増え、若者に特化した起業支援も増えつつある背景には、次のような理由があります。

    • 働き方や価値観の多様化。
    • 家庭を持ってからでは、起業というリスクチャレンジがしにくい。
    • 起業のハードルが低くなった。
    • 様々な支援制度がある。
    • 国や地方自治体も、地方で若者の起業を増やし、人口の一極化や人口流出を防ぎたい。

    若者に向けた助成として、日本政策金融公庫の女性、若者、シニア起業家支援資金があります。 

    女性、若者、シニア起業家支援資金:起業および設備運転資金として最大7,200万円(運転資金は最大4,800万円)を融資。返済期間は20年以内(据え置き期間が2年以内)。特筆すべきは、融資利率。公庫の通常の創業融資利率が2.03〜2.70%なのに比べ、若者を対象にしたこの融資では1.63〜2.30%となっている。

    まとめ

    起業を志す時に懸念材料となるのが、次の3つの不足です。

    • 資金繰りや資金調達
    • 顧客販路の開拓
    • 財務、税務、法務に関する知識の不足

    これらを補完することができる起業支援が数多く存在するので、起業を志す人は積極的に活用するべきです。専門家の知識やアドバイスを無料で得られ、返済不要の助成金や低金利での融資を受けることができます。起業したいが自分でもできるだろうかと悩んでいる人の多数が、数千もの助成金が存在するとは夢にも思っていなかったのではないでしょうか。昨今はSNSなどで「独立」「起業」などをキーワードにオンラインサロンや教材販売が盛んですが、それらに目を向ける前に、国や自治体などが設けている起業支援の活用を考えてみてはいかがでしょう。

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