効率を高め業務改善する企業を支援するために、さまざまな補助金・助成金制度があります。補助金・助成金によって、給付要件、給付額、管轄など条件が異なります。自社に合った補助金・助成金を選び、積極的に活用すれば、経営を改善し成長させていくことができます。採択率を高め確実に補助金・助成金を得るためにも、下記の項目について知っておきましょう。
- 業務効率化や業務改善に役立つ補助金と助成金
- 補助金や助成金を活用するメリット
- おすすめの補助金や助成金
- その概要、応募方法
- 業務改善助成金を活用した成功事例
業務効率化や業務改善に役立つ補助金と助成金
業務効率化のための補助金・助成金には予算が設定されているので、早めに申し込むべきです。そのためには、補助金・助成金について一通りの知識を持っておく必要があります。
補助金や助成金を活用するメリット
- 資金に余裕がなくても、補助金・助成金を活用すれば、業務効率化を進められ、職場環境の構築や売上向上が図れる。
- 条件さえ満たせば、事業場内容や企業規模は問わない。
- 申し込み可能な企業数に上限がないので、争う必要がない。
おすすめの補助金・助成金の一覧
業務改善助成金
業務改善助成金は厚生労働省が管轄している制度です。生産性の向上や最低賃金引き上げを支援します。厚生労働省によって定められている条件は次のとおりです。
- 賃金引上計画を策定すること。事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる。(就業規則等に規定)
- 引上げ後の賃金額を支払うこと。生産性向上に資する機器・設備やコンサルティングの導入、人材育成・教育訓練を実施することにより業務改善を行い、その費用を支払うこと。( (1) 単なる経費削減のための経費、 (2) 職場環境を改善するための経費、 (3)通常の事業活動に伴う経費などは除きます。)
- 解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと。
賃金引上を計画するだけでなく、実際に引き上げ後の賃金を支払ってから助成金を受け取ることができます。
対象事業者
- 従業員数が100人以下の中小企業や小規模事業者
- 地域別最低賃金と事業場内最低賃金の差額は30円以内
助成額
最大助成額は600万円ですが、最低賃金の引き上げ額や引き上げ対象の従業員数によって支給額が変動します。
[引用:厚生労働省「業務改善助成金について」]
申請方法
- 助成金交付申請書の提出:助成金交付申請書に、業務改善と賃金引き上げの各計画を記載し、申請書は最寄りの都道府県労働局へ提出します。
- 助成金交付決定通知:審査を通過すると「助成金交付決定通知」が届きます。
- 業務改善計画と賃金引上げ計画の実施:業務改善計画と賃金引上計画を実施します。
- 事業実績報告書の提出:「事業実績報告書」を都道府県労働局へ提出します。
- 助成金の額の確定通知:適切な実施内容と認められれば、助成金額が確定し、事業主へ通知が届きます。
- 助成金の支払い:最後に「支払請求書」を提出すれば助成金が支給されます。
IT導入補助金
IT導入補助金は、「独立行政法人中小企業基盤整備機構」によって採択された制度です。ITツールを導入する際にかかる費用の一部を補助します。IT導入補助金には4つの枠が設けられており、支給条件がそれぞれ異なります。
4つの種類
- 通常枠(A・B類型):1または4以上のプロセスで、労働生産性の向上に貢献するITツールの導入
- セキュリティ推進対策枠:「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスの導入
- デジタル化基盤導入累計:会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトなどの導入や、ハードウェア(パソコン・プリンターなど)の購入
- 複数社連携IT導入類型:会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトなどの導入や、ハードウェア(パソコン・プリンターなど)の購入
対象事業者
IT導入補助金の対象は、中小企業・小規模事業者です。業種・資本金・従業員数、そしてどの枠に応募するかによって条件が異なるので、ホームページやリーフレットでしっかり確認する必要があります。
補助額
IT導入補助金の補助額は次のようになります。
- 通常枠(A・B類型):A型30万円~150万円未満、B型150万円~450万円以下
- セキュリティ推進対策枠:5万円~100万円
- デジタル化基盤導入累計:5万円~350万円
- 複数社連携IT導入類型:最大3,200万円
申請方法
- 導入するITツールについて、支援機関へ相談:相談は、必須ではありません。
- 導入するITツールを選択
- 交付申請:審査を経て交付決定の通知を受けたら導入開始します。
- ITツールの導入
- 事業実績報告:報告書の提出後に補助金額が確定します。
- 補助金交付手続き
- 事業実施効果報告:決められた期間内にマイページに必要な情報を入力します。
働き方改革推進支援助成金
「働き方改革推進支援助成金」の管轄は厚生労働省です。生産性向上を図り、時間外労働の削減、有給休暇・特別休暇の取得促進に取り組む企業を支援します。働き方改革推進支援助成金を受けるためには、以下から1つ以上を選び実施することが条件です。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取組
- 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
- 労務管理用機器の導入・更新
- デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
- 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)
また、厚生労働省が定める次の「成果目標」から1つ以上を選び、取り組みます。
- 全ての対象事業場において、令和4年度又は令和5年度内において有効な36協定について、時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、又は月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出を行うこと
- 全ての対象事業場において、年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入すること
- 全ての対象事業場において、時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入すること
- 全ての対象事業場において、特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、新型コロナウイルス感染症対応のための休暇、不妊治療のための休暇)の規定をいずれか1つ以上を新たに導入すること
上記に加え、対象事業場で指定する労働者の時間当たりの賃金額を3%以上引き上げるという目標を加えることもできます。
対象事業者
働き方改革推進支援助成金の対象は、中小企業事業主で、かつ以下の3条件すべてに該当する必要があります。
- 労働者災害補償保険の適用事業主であること。
- 交付申請時点で、「成果目標」1から4の設定に向けた条件を満たしていること。全ての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。
助成額
働き方改革推進支援助成金の助成額は、最大490万円です。下記のように、成果目標の達成度によって助成額が決定されます。
成果目標1:50~150万円
成果目標2:50万円
成果目標3:25万円
成果目標4:25万円
上記の額に、賃金の引き上げを達成した額や従業員数に応じ助成額が加算されますが、①成果目標ごとの上限と加算額の合計額か、②「対象経費の合計×補助率3/4」のいずれか低いほうが最終的な支給額になります。
申請方法
働き方改革推進支援助成金の申請手順は、以下のとおりです。
- 交付申請書の提出:働き方改革実施に関する計画書の添付も必要。都道府県労働局が審査し、交付決定の通知が送付されます。
- 支給申請書の提出:交付決定後、計画書に沿って事業を実施し、支給申請書を提出します。
- 助成金の受け取り:管轄の労働局が審査し、交付と助成金額が決まると通知が届きます。
小規模事業者持続化補助金
日本商工会議所の「小規模事業者持続化補助金事務局」が管轄している、持続的な経営を目指す小規模事業者を支援する制度です。企業の発展を目的とした販路開拓や、業務効率化などにかかる経費の一部を補助します。コロナ禍の影響により、一般枠に加えて、事業の持続と感染防止対策を両立する取り組みをおこなう企業に補助金を支給する「低感染リスク型ビジネス枠」も設けられました。小規模事業者持続化補助金の問い合わせ先は、事業所の所在地によって 「全国商工会連合会」「各都道府県商工会連合会」「商工会議所」のいずれかです。
小規模事業者持続化補助金を受ける条件
- 提出した事業計画に沿い、販路開拓や業務効率化に向けた取り組みであること
- 商工会や商工会議所から助言などの支援を受けながら取り組むこと
- 同一事業において、ほかの助成制度を利用していないこと
- 計画の実施終了後、約1年以内に売上につながる事業であること
- 公的支援にふさわしい事業であること
- 共同申請の場合は、連携する事業者すべてが事業に関与していること
対象事業者
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者や一定の要件を満たした特定非営利活動法人が対象です。注意しないといけない点は、業種によって小規模事業者の定義が異なることです。
商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く):常時使用する従業員の数 5人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業:常時使用する従業員の数 20人以下
製造業その他:常時使用する従業員の数 20人以下
補助対象経費
- 機械装置等費
- 広報費
- 展示会等出展費
- 旅費
- 開発費
- 資料購入費
- 雑役務費
- 借料
- 専門家謝金
- 専門家旅費
- 設備処分費(補助対象経費総額の1/2が上限)
- 委託費
- 外注費
助成額
助成額は、通常枠で最大50万円、低感染リスク型ビジネス枠で最大100万円です。ただし通常枠で共同申請する場合は上限を500万円とし、連携する事業者数×50万円となります。
申請方法
- 申請書および事業計画書の提出:各商工会議所や商工会が審査し、交付の有無を決定します。
- 計画に沿った事業の実施:交付決定の通知が届いたら事業を実施。
- 実績報告書の提出:実施後は、内容と結果を実績報告書にまとめて提出。
- 補助金の請求:内容が適切であれば交付金額が通知されるので、補助金を請求。
- 補助金の受け取り
ものづくり補助金
全国中小企業団体中央会が管轄する補助金制度で、生産性の向上を目的としたサービス・商品の開発、業務改善の実施のための設備投資の一部を支援します。「一般型・グローバル展開型」と「ビジネスモデル構築型」の2種類があり、それぞれ補助金額や申請期限などが異なります。今回ご紹介するのは、生産性向上を目的とした補助金である「一般型・グローバル展開型」です。
対象事業者
支給対象は、以下のいずれかに該当する事業者です。
- 個人事業主を含む中小企業者(組合関連以外)
- 特定の中小企業者(組合関連)
- 特定事業者の一部
- 特定非営利活動法人
資本金や従業員数、組織形態といった制限もあるので、公募要領を確認しましょう。また、応募締め切りから10か月以内にものづくり補助金を受けている場合、過去3年以内に2回以上似たような補助金を受けている場合は、対象外です。
助成額
ものづくり補助金の助成額は、枠や従業員数によって異なります。
【一般型】通常枠、回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠
5人以下 100万円~750万円
6~20人 100万円~1,000万円
21人以上 100万円~1,250万円
【一般型】グリーン枠
5人以下 100万円~1,000万円
6~20人 100万円~1,500万円
21人以上 100万円~2,000万円
【一般型】グローバル展開型
1,000万円~3,000万円
申請方法
ものづくり補助金の申請手順は、下記のとおりです。
- 電子申請システム経由で事業計画書を提出:「GビズID」を取得し、電子申請システムへログインして、システム上から事業計画書を提出します。
- 採択通知後、交付申請
- 計画に沿い、事業を実施
- 実績報告:実績報告をもとに「確定検査」が行われ、交付額が決定したら、補助金を請求します。
- 補助金の受け取り
支給要件
- 賃金引上計画を策定し、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げること
- 引上げ後の賃金額を支払うこと
- 生産性向上に資する機器・設備などを導入して業務改善を行い、その費用を支払うこと
- 解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと
注意点は、(3)には
・単なる経費削減のための経費
・職場環境を改善するための経費
・通常の事業活動に伴う経費
は含まれないということです。
補助金活用の効果と評価
効果の評価指標の設定
補助金活用事業の効果を評価するためには、以下の要点を考慮します。まず、補助金活用の目標と評価指標を関連付けることで、目標達成の評価を行います。具体的で計測可能な目標を設定し、達成可能性と期限性を確保するために、SMART目標(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)を活用します。評価指標には、数値で評価可能な指標(例: 売上成長率、生産性向上率)と主観的な評価を組み合わせた質的指標を設定します。また、産業や業種に応じて適切な評価指標を選定し、ベンチマークを活用して自社の成果を評価します。最後に、評価指標を可視化し報告することで、効果の評価結果を明確に伝えることが重要です。
分析手法とデータ収集
補助金活用事業の効果を評価するためには、効果の分析手法とデータ収集が重要です。まず、効果の分析手法としては、比較対象グループの設定や前後比較、トレンド分析、ROI(投資対効果)などがあります。これらの手法を組み合わせることで、補助金活用の効果を客観的かつ総合的に評価することが可能です。
データ収集に関しては、事前のベースラインデータの収集や補助金活用前後のデータ収集が重要です。ベースラインデータとは、補助金活用前の状況を示すデータであり、活用後の効果を評価するための基準となります。また、活用後のデータ収集では、目標達成に関連する数値データやフィードバックを収集し、効果の評価に役立てます。
データ収集の際には、正確で信頼性の高いデータを収集するために、データの収集方法や計測手段を慎重に選定します。さらに、データの分析には適切な統計手法やデータ可視化の手法を活用し、データから有益な洞察を引き出す努力が求められます。
総じて、補助金活用事業の効果を評価するためには、効果の分析手法とデータ収集が組み合わさることで、客観的かつ信頼性のある評価結果を得ることができます。
業務改善助成金を利用した設備等の導入事例
最も注目が集まっている業務改善助成金について、過去に実際にはどのようなものに対して交付されているかご覧いただきましょう。申請時にチェックされるポイントは、導入する設備、機器、コンサルサービスなどによってどのように業務改善が行われ最低労働賃金を上げることが可能かという点がクリアかどうかです。
- POSレジシステム導入による在庫管理の効率化
- リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
- 顧客・在庫・帳簿管理システムの導入による業務効率化
- 専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上
- デリバリー拡充のためのコンサルティングと「受注システム」「宅配用3輪バイク」「二層フライヤー」の導入により売上拡大
- 配達飲食サービス業やホテル業のほか、医療・福祉の現場での食洗器の導入により作業時間短縮
また、令和3年8月1日から特例として、コロナ禍の影響を受けているが30円以上の賃金引上げを行うならば、以下の自動車やパソコン等も補助対象となりました。申請期限は令和4年7月29日までです。
- 乗車定員11人以上の自動車及び貨物自動車
- パソコン、スマホ、タブレット等の端末及び周辺機器(新規導入に限る)
まとめ
企業、特に中小企業が業務改善することを支援する補助金・助成金制度が複数あります。これを活用することは非常に大きなメリットがありますが、補助金・助成金によって、給付要件、給付額、管轄など条件が異なるので、自社に合うものを選ぶことがまず大切です。この記事では以下の内容について解説しました。
- 業務効率化や業務改善に役立つ補助金と助成金
- 補助金や助成金を活用するメリット
- おすすめの補助金や助成金
- その概要、応募方法
- 業務改善助成金を活用した成功事例
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