[令和5年]人材育成に活用できる助成金とは?制度や注意点を詳しく解説

少子化高齢化が進み、労働人口が減っていくなか、人材不足に悩んでいる企業も少なくありません。これまで以上に、一人一人の人材が生産性を上げることが必要とされるなか、企業内での更なる人材の育成は急務といえます。

しかし、人材育成は、研修や教育を行ったからといって、すぐに効果が出るものではありません。そのため、短期的な結果を求めるあまり、人材育成へ予算を割くことに、消極的になってしまう場面もあるのではないでしょうか?

そこでご紹介するのが、人材の育成に際し、要件を満たせば国から受けられる、各種助成金です。企業が成長し続けるため、人材の育成をさらに効率的に進めるためにも、こういった助成金は、人材育成を必要としている企業が是非とも活用したい、重要な制度といえます。

この記事では、人材育成に活用できる助成金について、以下の通りご紹介します。

  • 人材育成に活用できる助成金とはどんなものがあるのか
  • 人材開発支援助成金について
  • キャリアアップ助成金について
  • 各助成金を受給する場合の注意点
目次

企業における人材育成の重要性と助成金の活用

現代の競争激化するビジネス環境において、企業の成功には優秀な人材の育成が不可欠です。人事育成プログラムの実施は、従業員のスキル向上やモチベーションの向上に繋がり、企業の競争力強化につながります。さらに、人事育成には助成金制度が活用できる場合があります。助成金は、教育・訓練プログラムへの財政的支援を受けることができ、企業の負担を軽減します。まずは人事育成の重要性を理解し、どのようなところに助成金を活用するべきか考えていきましょう。

人材育成の重要性の理解

人材育成の重要性は、組織の長期的な成長と競争力強化に不可欠です。優れた人材を育成することで、従業員のスキルや能力が向上し、業務効率や品質が向上します。さらに、人材育成は従業員のモチベーションや働きやすさにも影響を与え、離職率の低下や人材の定着を促進します。組織は変化する環境に対応するため、新たな知識や技術を獲得し、リーダーシップやチームワークの能力を向上させる必要があります。人材育成は組織文化の構築や成果を挙げるための基盤作りにも貢献します。

組織の成果向上と競争力強化

組織の成果向上と競争力強化は、組織が優れたパフォーマンスを発揮し、市場での優位性を確保するための重要な目標です。組織の成果を向上させるためには、優れた人材を育成し、彼らの能力を最大限に活用する必要があります。適切な人材育成は、従業員のスキルや知識の向上、創造性やイノベーションの促進、チームワークの強化などを通じて組織の生産性を高めます。さらに、競争力強化のためには、市場の変化に柔軟に対応し、戦略的な人材配置やリーダーシップの強化も重要です。組織の成果向上と競争力強化は、組織の存続と発展に不可欠な要素と言えます。

イノベーションと変革の推進

イノベーションと変革の推進は、組織の持続的な成長と競争力を高めるために不可欠な要素です。イノベーションは新たなアイデアや技術の創造、既存のプロセスやサービスの改善、市場における差別化などを通じて、組織が新たな価値を創造し、競争力を高めることを可能にします。変革は、組織が環境の変化に適応し、進化していくために必要なプロセスです。組織が革新的で柔軟な姿勢を持ち、変革を推進することで、市場のトレンドに先んじたり、競争力のある戦略を展開したりすることができます。イノベーションと変革の推進には、組織全体の文化やリーダーシップのサポート、従業員の積極的な参加と共感、情報の共有や協働の促進などが重要な要素となります。組織がイノベーションと変革を推進することで、持続的な成果と競争力の向上を実現することができます。

チームの効果的な運営と協力関係の構築

チームの効果的な運営と協力関係の構築は、組織の成果を最大化するために重要な要素です。効果的なチーム運営は、メンバーの個々の能力と専門知識を最大限に活用し、目標に向けて協力して取り組むことを促進します。チームメンバー間の信頼関係の構築、コミュニケーションの円滑化、役割と責任の明確化、タスクの適切な割り当てなどが効果的な運営に貢献します。協力関係の構築は、メンバー間の相互理解、共有の意識、情報の共有、意見の尊重などを通じて促進されます。チームメンバーは協力し合い、互いに支え合いながら、チーム全体の目標達成に向けて協力して取り組むことで、高いパフォーマンスと成果を生み出すことができます。組織は、チームメンバーの協力関係を重視し、効果的な運営を実現するために、リーダーシップのサポートや適切なリソースの提供、フィードバックの提供などを行うことが重要です。

人材育成に活用できる助成金とはどんなものがあるのか

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人材育成のために活用できる助成金には、様々な種類があります。雇用形態や自治体など、制度によって条件が違うので注意が必要です。ここでは、各助成金の概要と特徴を紹介します。さらに、地域にかかわらず、国から受けることができる助成金である①と②について、次章以降で詳しく解説します。

  1. 人材開発支援助成金

厚生労働省では、国のさまざまな政策に合致した人材育成に対し、「人材開発支援助成金」として補助金を出しています。対象は、主として正社員に対する、職務に直接関係する専門的な知識、技術の習得を目的としたものです

  1. キャリアアップ助成金

これも厚生労働省による制度で、契約社員・パート・アルバイト・派遣スタッフといった、非正規雇用労働者を対象とした助成金です。非正規雇用労働者の、キャリアアップに取り組む企業を支援することを目的とした制度です。

  1. 各都道府県が独自に設定する助成金

国からの助成金である上記2つと違い、各自治体が、独自に作った助成金制度です。代表的な例として、東京都の助成金制度である、「社内型スキルアップ助成金・民間派遣型スキルアップ助成金」「オンラインスキルアップ助成金「DXリスキング助成金」等が挙げられます。

人材開発支援助成金について

人材開発支援助成金とは

厚生労働省によると、人材開発支援助成金は「事業主等が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度」とされます。

つまり、人材開発支援助成金は、主に正規雇用の従業員を対象として、職務に関連する専門的な知識や技能を習得するための訓練を行い、そのための費用を、国が一部助成する制度のことです。

IT業や建設業、介護業など、人材不足な上に、専門的な技術や知識を必要とされる業種においても有用な助成制度で、OJT、OFF-JT、eラーニング等、さまざまな研修のための費用の一部や、研修中にかかる従業員の賃金の一部を助成金として受け取ることができます。

人材開発支援助成金の対象とコースについて

人材開発支援助成金は主として正規雇用労働者が対象となり(一部例外あり)、次の7つのコースがあります。厚生労働省のHPから一部抜粋し、概要を説明します。

  1. 人材育成支援コース

正規雇用労働者に対し、職務に関連した知識・技能を習得するための訓練、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練、非正規雇用労働者を対象とした正社員化を目指す訓練を実施した場合に、訓練にかかった費用や訓練期間中の賃金の一部が助成されるコース。

(​​令和5年4月1日から制度が見直され、従来の「特定訓練コース」「一般訓練コース」「特別育成訓練コース」が、この人材育成支援コースに統合されました。)

  1. 教育訓練休暇等付与コース

有給教育訓練等制度を導入して、労働者が休暇を取得し、訓練を受けた場合に助成されるコース。

  1. 人への投資促進コース

デジタル人材・高度人材を育成する訓練や、被雇用者が自発的に行う訓練、サブスクリプション型の定額制訓練等を実施した場合に、訓練にかかる費用や、訓練期間中の賃金の一部が助成されるコース。

  1. 事業展開等リスキリング支援コース

新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、新たに必要となる知識、及び技能を習得させるための訓練を実施した場合に、訓練にかかる費用や、訓練期間中の賃金の一部が助成されるコース。

  1. 建設労働者認定訓練コース

認定職業訓練または指導員訓練のうち、建設関連の訓練を実施した場合に、訓練にかかる費用の一部や、建設労働者に有給で認定訓練を受講させた場合の、訓練期間中の賃金の一部が助成されるコース。

  1. 建設労働者技能実習コース

雇用する建設労働者に、技能向上のための実習を有給で受講させた場合に、訓練にかかる費用や、訓練期間中の賃金の一部が助成されるコース。

  1. 障害者職業能力開発コース

障害者の職業に必要な能力を開発、向上させるため、一定の教育訓練を継続的に実施する施設の設置・運営を行う場合に、その費用が一部助成されるコース。

人材開発支援助成金を受給するまでの流れ

人材開発支援助成金を受給するための、基本的な申請手続きの流れについては、下記のとおりです。

  1. 人材開発のための訓練計画を作成し、訓練実施の1ヶ月前までに労働局へ提出します。
  1. 提出した訓練計画に沿って、訓練を実施します。
  1. 訓練終了後から2ヶ月以内に、助成金を受給するための申請書を労働局に提出します。
  1. 申請書類に問題がなく、審査に通れば、助成金が受給できます。

人材開発支援助成金を利用する場合の注意点

人材開発支援助成金を活用することによって、企業は研修や訓練にかかる費用を軽減することができますが、実際に助成金を受給するにあたっては、注意すべき点もいくつかあります。

  • 助成金を受給するためには、各コースにより、条件が違うので注意が必要です。計画している訓練が、人材開発支援助成金制度の対象になるかどうか、訓練の実施期間、従業員の年齢や人数、雇用形態などによって、条件が細かく定められている場合が多いので入念に確認しましょう。
  • 助成金の申請には、時間も手間もかかります。申請手続きは煩雑ですし、多くの必要書類も不足なく、期限内に準備しなければなりません。また、訓練実施後に申請書を提出するため、かかる費用は一時的に企業が負担することになります。
  • 何より注意すべき点は、助成金が交付されるかどうかが決定するのが、訓練終了後だということです。訓練計画を提出した時点で、助成金の交付が決定したわけではない点には注意しましょう。

キャリアアップ助成金について

キャリアアップ助成金とは

厚生労働省によると、キャリアアップ助成金は、「有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成するもの」とされます。

つまり、キャリアアップ助成金は、パート・アルバイト、契約社員、派遣社員等の、非正規雇用労働者に対して、雇用形態や雇用環境を改善することを目的とした、キャリアアップ支援のための制度だと言えます。

キャリアアップ助成金の対象とコースについて

キャリアアップ助成金は非正規雇用労働者が対象となり、次のようにコースが分かれています。こちらも厚生労働省のHPから一部抜粋し、概要を説明します。

正社員化支援

  1. 正社員化コース

非正規雇用労働者を正社員化することで助成金を受けられるコース。

  1. 障害者正社員化コース

障害のある非正規雇用労働者を正社員化することで、助成金を受けられるコース。

処遇改善支援

  1. 賃金規定等改定コース

非正規雇用労働者の基本給の賃金規定等を改定し、3%以上増額した場合に助成金を受けられるコース。 

  1. 賃金規定等共通化コース

非正規雇用労働者と正規雇用労働者との間の格差をなくし、共通の賃金規定等を 新たに規定・適用した場合に、助成金を受けられるコース。

  1. 賞与・退職金制度導入コース

非正規雇用労働者を対象に、賞与または退職金制度を導入して、実際に支給、または積立てを実施した場合に助成金を受けられるコース。

  1. 短時間労働者労働時間延長コース

非正規雇用労働者の労働時間を延長し、社会保険を適用した場合に助成金を受けられるコース。

キャリアアップ助成金を受給するまでの流れ

キャリアアップ助成金を受給するための、基本的な申請手続きの流れについては、下記のとおりです。

  1. キャリアアップ計画を作成し、各コースとも、実施日の前日までに労働局に提出します。
  1. 正社員化支援の場合は、就業規則を改定し、正社員化後、6ヶ月の賃金の支払い実績を積みます。処遇改善支援の場合は、処遇改善のための取り組みを実施した後、6ヶ月の賃金の支払い実績を積みます。
  1. キャリアアップ計画実施後、6ヶ月の賃金を支払った日の翌日から起算して、2ヶ月以内に、助成金を受給するための申請書を労働局に提出します。
  1. 申請書類に問題がなく、審査に通れば、助成金が受給できます。

キャリアアップ助成金を利用する場合の注意点

キャリアアップ助成金に関しても、人材開発支援助成金制度と同じように、注意すべき点があります。

  • キャリアアップ計画を途中で変更する場合は、変更する前日までに「変更届」を提出しなければなりません。変更届を提出せずに取り組みを変更してしまうと、本来は支給対象となる計画でも、助成金は受給できなくなってしまいます。

まとめ

人材育成のための各種助成金は、従業員の育成を行う場合、それにかかる費用や、賃金の一部を助成する制度であるため、人材を育成したい企業は積極的に活用したい制度です。

各制度とも、コースの統合や要件の変更等があるので、助成金を活用して人材育成を検討している企業は、監督官庁に問い合わせるなど、十分な下調べが大切です。制度を上手く活用し、コストを抑えた効率のよい人材育成を実現させましょう。この記事では以下の点について解説しました。

  • 人材育成に活用できる助成金とはどんなものがあるのか
  • 人材開発支援助成金について
  • キャリアアップ助成金について
  • 各助成金を受給する場合の注意点
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