企業を成長させるためには、日々の業務をルーティンのようにこなすだけではなく、より効率的に利益を上げられるように生産性を高め、またコスト削減の努力をする必要があります。これが業務改善です。業務改善は自社内で行われる場合もありますが、業務改善の手法やフレームワークを熟知している外部のコンサルタントに委託することも多いです。この記事では次の点について解説します。
- 業務改善コンサルを活用するメリット、デメリット
- 業務改善コンサルでできること
- 業務改善コンサルタントに必要なスキル、年収、なり方
- 業務改善コンサルの流れ
業務改善コンサルティングとは
業務改善コンサルティングとは、企業の業務プロセスを「見える化」し、問題点を洗い出し、最適な業務改善計画が策定できるようサポートするサービスのことです。第三者視点で会社の現状を精査し、何をどうすれば業務改善ができるかアドバイスするのが業務改善コンサルタントです。問題の原因が把握できない、具体的な改善点が掴めない、他者の事例を知りたいといったケースでは、業務改善コンサルティングが有用です。
また業務改善によく似た言葉にBPR(Business Process Re-engineerinig)というものがあります。生産性の向上、意思決定のスピードアップ、コスト削減、顧客と従業員の満足度アップを目指し、組織や制度、システムなどを見直すことを指します。業務改善との違いは2つ挙げることができます。
- 改善の対象:BPRの対象はあらゆる業務に関わるプロセスそのもので根本的。業務改善は、基本のプロセスは維持し、部分的な改善を行う。
- 推進の仕方:BPRは一気に大きく、業務改善は少しずつ、その都度改善していく。
業務改善コンサルティングを活用するメリット、デメリット
業務改善コンサルティングを活用するメリット
業務改善コンサルティングを活用すると、次のようなメリットがあります。
- 客観的な視点。
- 他社や他業界の事例、成功ポイントを知ることができる。
- 専門家のノウハウや知識。
- 社内への忖度がない正しい事実やデータ。
- 社内メンバーの知識の向上。
- 外部の手を借りることでリソースが増加し、スピーディーに業務改善を進められる。
一般的にすぐに思い浮かべるのは、1〜3のメリットではないでしょうか。ところが6の「リソースの増加」が、コンサルタントサービス利用の理由としてかなり多いのです。業務改善は通常の業務に加え発生するので、通常業務をこなしながら、質の高い業務改善を行うことは負担が大きく、一連の手順がスムーズに進まないことがあります。現場にとっては、専門コンサルに依頼すれば短期で成果を出してくれるというのが、最も大きな魅力です。
業務改善コンサルティングのデメリットと注意点
- 高額なコストが発生する
- 依頼しても必ず成功するとは限らない
- 社内に業務改善の知見が残らない可能性がある
一方、業務改善コンサルティングには上のようなデメリットがあります。最大のデメリットはコストです。コンサルティングは、コンサルタントの工数に比例してコストが発生します。費用については後述しますが、決して安価ではないため、依頼したからには、成果を出し成功に繋げたいものです。また、「専門家に高い費用で依頼した」のなら「当然、成功する」と考えてしまいがちなのですが、業務改善については、コンサルタントと企業とのコミュニケーションが鍵です。依頼し丸投げしただけでは、業務改善の成功は約束されていません。この点は注意が必要で、担当者はコンサルタントとのやり取りを通し、自らの知見を高めていく気持ちが大切です。
コンサルティングの役割と価値
ここでは、組織の成果向上や効率化に向けて重要な役割を果たすコンサルティングに焦点を当てます。コンサルタントの専門知識と経験、問題解決能力などがどのように価値を生み出すのか、さらにコンサルティングの役割と価値について詳しく紹介します。読者は組織の業務改善においてコンサルティングの有用性や効果を理解し、自らの組織に活かすヒントを得ることができます。
問題の特定と分析
業務改善における問題の特定と分析は、成功への重要なステップです。コンサルタントは組織の現状を徹底的に調査し、問題の本質を明確に把握します。データの収集やプロセスの観察などの手法を用いて客観的な情報を収集し、ルートコーズ分析などのツールを活用して問題の要因を特定します。正確な問題の特定と深い分析によって、効果的な改善策を見つけ出し、組織の成果を向上させることができます。
専門知識と経験の提供
業務改善コンサルタントは、豊富な専門知識と幅広い経験を持ち、クライアントに対して専門的なアドバイスとガイダンスを提供します。彼らは業界や業種に精通し、最新のトレンドやベストプラクティスについても深い理解を持っています。経験豊富なコンサルタントは、類似の課題や問題に取り組んできた経験から学び、成功事例や失敗から得た知見を活かすことができます。専門知識と経験の提供により、コンサルタントはクライアントの業務改善プロセスをサポートし、より効果的な結果を実現するお手伝いをします。
プロジェクトの計画と実行支援
業務改善コンサルタントは、プロジェクトの計画と実行支援において重要な役割を果たします。彼らはクライアントと協力し、具体的な業務改善の目標を設定し、プロジェクトのスコープやタイムラインを策定します。また、チームの組織や役割分担を調整し、プロジェクトの進行状況を監視します。さらに、必要なデータや情報の収集・分析を行い、課題や改善のポイントを特定します。コンサルタントはプロジェクトメンバーをサポートし、実行段階での問題や課題に対応しながら、改善の実施を効果的に支援します。計画と実行の両面でコンサルタントの専門知識とリーダーシップが求められます。
持続的な成果と改善
業務改善コンサルタントの役割は、持続的な成果と改善を実現することです。彼らはプロジェクトの終了後もクライアントと協力し、改善の成果が継続するよう支援します。これには、定期的なフォローアップやモニタリング、必要なトレーニングやスキル開発の提供などが含まれます。コンサルタントは、組織内での改善意識や改善文化の醸成を支援し、持続的な改善の仕組みを構築します。また、適切なメトリクスや評価指標を設定し、改善の進捗や効果を定量的に評価します。持続的な成果と改善は、継続的な努力と組織全体のコミットメントが必要です。業務改善コンサルタントは、クライアントと協力して持続的な改善のサポートを提供し、組織の成果と競争力の向上を実現します。
コンサルタントのサービス内容、コンサルティングでできること
業務改善コンサルティング会社がクライアント企業に提供する内容は次の通りです。
- 経営資源の有効活用
- コスト削減
- 事業構造変革
- それらの目標達成のための計画策定
そのために、現状分析として従来の業務モデルや業務フローなどを可視化し、問題・課題分析を行ったうえで、改革の方向性を明確にしていきます。具体的なサービス内容は以下の7つです。
業務プロセスの可視化
最初に行うことは、業務プロセスの可視化です。現在発生している問題や、改善すべきポイントを把握するため、この作業は欠かせません。可視化とは見える化ともいい、全体の業務フローや各段階の繋がりがどのようになっているか明確にします。業務プロセスの可視化には、コンサルティング会社のレクチャーを受けて自社で作成する方法と、社員から聞き取りを行いコンサルティング会社のほうで作成する方法があります。
問題の特定
生産性が理想からかけ離れているケースでは、可視化した業務のどこかに問題があるはずです。この段階では、それを見つけ出します。コンサルタントは分析スキルや過去の経験を活かし問題がありそうな箇所を見つけてくれるので効率よく進められるでしょう。
業務問題の原因特定
問題を発見できたら、業務分析手法を用いて原因を特定していきます。フレームワークと呼ばれる業務分析方法の代表には、ロジックツリーやバリューチェーン分析などがあります。
改善案の提示
改善案を作成します。業務改善によってこれまでとやり方が変わる部分に対し、抵抗感を示す社員が出てくることもあります。業務改善によってどのような効果が期待できるのか、なぜ改善しなければならないのかといった点を社員が理解できるように伝え納得を得るのもコンサルの仕事です。
効果測定
改善案を実施したら、必ず効果を測定します。期待していた結果が得られれば、業務改善成功ですが、結果が明らかに悪い場合は、何がボトルネックになっているのか明確にします。PDCAサイクルを継続してまわし、さらなる改善を繰り返し行っていきます。
コスト削減支援
業務プロセスの可視化や問題特定の際に、コスト削減ができる点が浮かび上がってきます。中にはコスト削減を専門的に行っている業務改善コンサルタントもいます。事業の質を維持しながら無駄な出費を抑えたいのであれば有用です。。
ソフトウェアの導入
業務改善に際し、新たにソフトウェアなどのツールを採用することもあります。導入に関する支援も業務改善コンサルティングの役割のひとつです。
業務改善においてコンサルタントを使うべきかの判断基準
- 業務改善を完了したい期限に間に合いそうにない:社内だけでは機嫌に間に合うよう業務改善を開始、完了できそうにない。
- 業務改善活動に取り組める社内体制がない:専任で取り組める人が誰もおらず全員が多忙な通常業務と兼務。または業務改善を担当する人数に対して改善対象の業務数が多過ぎる。
- 客観的な指摘やアプローチが必要:当該業務に従事しているメンバーはその業務に違和感を感じることが難しいため、改善点を見つけにくい傾向がある。
- 業務改善に関わる知識・知見が必要か:時間を投下して学習するよりも、専門家の知見を借りたほうが効率が良い。
業務改善コンサルに依頼する時の費用相場
支援内容や依頼する相手(大手など)によってコンサル費用は大きく異なります。 さらにプロジェクトで発生する工数に比例して費用が発生することも覚えておきましょう。一般的な金額相場は、月あたり100万円〜200万円程度です。スキルや経験が豊富なベテランのコンサルタントは、時間単価が高くなります。個人事業者や小規模法人の場合は、50万円〜90万円ほどで依頼できるケースもあります。ただし、これはコンサルタント1人あたりの金額なので、複数の相手に依頼する場合は追加の費用がかかります。
費用だけを重視して安いコンサルタントに依頼してしまうと、スキルや経験が不十分というリスクもあるので、信頼できるコンサルタントを選ぶことが非常に重要です。
コンサルタントになるのに必要なスキルと収入
コンサルは高収入であるということは一般的に知られています。またアクセンチュアのような大手コンサルティング会社は、大学生の「働きたい企業ランキング」でもトップクラスです。そのためコンサルタントになりたいという人もいるでしょう。そこで「コンサルになりたい側からの目線」でもコンサルという仕事について解説したいと思います。
コンサルに必要なスキル
コンサルタントになるために資格は不要です。中小企業診断士などの資格を持っている人は多いですが、必須ではありません。ですが、優れた業務改善コンサルタントとして活躍するには、業務改善を成功に導くスキルが必要です。それが次の4つになります。
【業務改善を成功に導く4つのスキル】
- 会社の現状を分析するための分析能力
- 改善アイデアを出すための発想力
- クライアントは多種多様なため、業務の特性や問題に合わせた改善を行う対応力
- 途中で投げ出さないマネジメント力
コンサルは高収入だけでなく、非常に残業が多いことでも知られています。期限が決められているため、集中して忙しくなるということもありますが、もう一点、 理由があります。一般的にコンサルタントは、毎回自分の得意な案件を担当できるとは限りません。受け持ったプロジェクトに対し必要な業界やクライアントについての知識を、都度インプットしながら業務を進めていかなければならないのです。
コンサルタントの年収と、給料が高い理由
業務改善を行うコンサルタントの平均年収は、約400万円~1000万円と言われています。特に上位5社のコンサルティング会社の平均年収は1,138万円で、他の上場企業の平均年収約600万円と比較すると、コンサルタントの年収は非常に高いと言えます。20代であってもコンサルの場合、外資系で600万円〜2,000万円、経営コンサルタントで550万円〜650万円、ITコンサルタントで450万円〜550万円と、高い平均年収になっています。また生涯賃金は5億5,300万円と、次に高い総合商社と5,600万円の差があります。
コンサルの給料が高い理由としては、クライアントである企業の経営課題を解決するという非常に高いスキルを求められる仕事であることがまず挙げられます。いわば「経営者や経営陣が解決できない問題」を解決する仕事です。労働(頭脳)集約型になりやすく激務な企業も多いです。これだけ高収入であるにも関わらず、コンサルの平均勤続年数が外資系の戦略ファームで3〜4年ということからも、その厳しさが伝わるのではないでしょうか。
未経験者や新卒でコンサルとして働けるのか
求人を見てもわかるように、未経験や新卒でのコンサルはハードルが高いです。企業で実務経験を積んだ人が転職しコンサルタントになることが多いのですが、中には未経験者や新卒を採用しているコンサルティングファームもあります。いきなりクライアント企業を担当するコンサルタントとして活躍することはできませんので、1年目はデータを集めて分析する「アナリスト」として仕事をします。コンサルタントになるためのデータ収集・分析能力を身につける修行期間です。財務分析や事業デューデリジェンス、エクセルマクロやパワーポイントでの資料作成、ヒアリングスキルや語学力、クライアントとのネゴシエーション等、様々なスキルを身に着けていくのですが、上司や先輩も大量の仕事を抱えていることが多く、じっくり教えてもらえる環境とは言い難いです。
転職してコンサルになるには
中小企業診断士などの資格を取り、企業で約3年程度実務経験を積むと、コンサルタントとして仕事をこなせるくらいの知識や経験が身につきます。
コンサルタントの業務改善手法とは
業務改善コンサルタントの仕事は、「業務プロセスの見える化と、改善点の提示」です。サービスレベルを「松竹梅」で表すと次のようになります。
梅:現状の業務プロセスの可視化(現状整理)のみ
竹:改善点の提示、非効率な部分の発見(課題発見)まで
松:可視化と改善点提示に加え、改善後の業務プロセスの提案と装着(改善活動)
コンサルティングの流れ、進め方
次に業務改善コンサルティングの流れを説明します。
対象業務の「可視化」
第一の段階は業務の「可視化」です。業務がどのように進められているのかを分析し、改善すべき点や問題点を把握します。主に次の2つによって構成されます。
- 対象業務全体の把握
- 現場メンバーへのヒアリングによる各業務の詳細把握
頻繁に利用されるフレームワークとして、業務改善の4原則と呼ばれているECRSがあります。
- Eliminate(排除):業務において不必要と思えるプロセスを排除。例 無駄な報告、無駄な会議、業績が伸びない営業エリアなど
- Combine(結合・分離):類似した業務を結合し、業務内で分離できるものは分離
- Rearrange(入替え・代替):作業工程を入替えたり他のものと代替したりすることで片付けや準備の時間が短縮し、人員を削減することができる可能性
- Simplify(簡素化)
業務改善案の立案
ECRSによって改善ポイントが特定されたら、業務改善案を設計します。この段階では、次の2つを行います。
- 業務プロセスの整理と改善案作成
- 現場メンバーによるレビューとフィードバック
ここで活用されるビジネスフレームワークがPDCAとOODAです。PDCAによって業務改善案を立案しますが、OODAはPDCAを補うことができる意思決定プロセスです。PDCAとはしっかりと計画を立ててから行動に移すことに主眼を置いていますが、OODAの場合は計画を立てはするものの、その後の状況に応じて臨機応変に対応するので臨機応変な業務改善、効果的なコスト削減に優れています。
- Observe(観察)
- Orient(方向づけ)
- Decide(決定)
- Act(実行)
業務改善の評価
次の段階はこの2つを含みます。
- 新しい業務プロセスを現場に装着
- 業務改善案の評価
業務改善を作成し実行した後には、その効果を検証し評価します。これはPDCAサイクルを回すために不可欠です。これを行わないと、業務改善を改善し継続することができません。具体的な数値データを比較し、さらなる改善点があればフレームワークであるPDCAとOODAを繰り返します。そうすることでより質の高い業務改善が実現できます。
まとめ
企業成長に欠かせない業務改善は、外部のコンサルタントに依頼するのもひとつの方法です。費用はかかりますが、第三者視点に立った経験や知識豊富な専門家によって、迅速に業務改善を進められる点が非常に有効です。ただしコンサルタントを名乗るには、資格は必要ありません。究極言えば未経験でも名乗ることができてしまうのです。ですから、コンサル選びには注意が必要です。この記事では次の点について解説しました。
- 業務改善コンサルを活用するメリット、デメリット
- 業務改善コンサルでできること
- 業務改善コンサルタントに必要なスキル、年収、なり方
- 業務改善コンサルの流れ
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