業務改善の進め方はこれが正解 進め方、注意点、活用したいフレームワーク

業務のフローや内容について課題を見つけ改善していく業務改善は、自社の限りあるリソース(資源)であるヒト・モノ・カネを効率よく活用して、より多くの価値を生み出し成長するという企業の使命そのものだと言えます。業務改善では、生産性の低い業務や従業員への負担が大きすぎる業務など、非効率、不健全な状態になっている業務上の課題を見つけ出します。そしてその課題に優先順位をつけた上で、優先度の高いものから改善策を作成し、問題が解決するまで継続的に実行します。この記事では、業務改善の進め方について、次の点を解説します。

  • 業務改善の目的と効果
  • 業務改善の進め方
  • 業務改善において注意すべきこと
  • 業務改善に役立つフレームワーク
目次

業務改善の目的と効果

業務改善の目的

企業が業務改善を行う目的は、生産性の向上と経営の安定の実現です。経営改善が経営者視点からの全社的改善だとすれば、業務改善は現場の各業務レベルで、業務の内容や進め方について小さな改善からでも積み上げるものです。業務を改善するやり方も、次のように複数考えられます。

  • 作業をなくす、減らす
  • 材料や製法を見直し品質をアップする
  • マーケティングやプロモーションを見直す

このように複雑な業務改善では、次の2点が重要です

  1. 現場の実情を知る従業員の意見が反映されたものであることが望ましく、ボトムアップ主体で進める。
  2. 同時に、会社の方向性とブレが出ないよう、最初に業務改善の目的・方向性を明確にしておく。

業務改善の効果

業務改善によって期待できる効果は、次の4つです

  • 不要な工程の削減など業務効率化
  • 作業時間の短縮など生産性向上
  • 人件費の減少などによるコスト削減
  • 時間外勤務の減少や労働時間の適正化など労働環境改善

業務改善の進め方

業務改善は次の流れで進めていきます。

  1. 業務の可視化①:業務全体の流れをフロー図で把握する。
  2. 業務の可視化②:現状の業務量を把握する。
  3. 課題抽出・整理:問題点を一旦全て洗い出し、整理し、優先順位や改善範囲を明確にする。
  4. 業務改善案策定①:ゴールを設定する。
  5. 業務改善案策定②:具体的な改善計画を作成する。
  6. 改善案実行
  7. 効果を確認し、PDCAサイクルを回す。

業務の流れを把握する。

まず行うのは、現在の業務全体を把握することです。作業手順を俯瞰的に見るには、業務フロー図を作成しましょう。この業務フロー図は、その業務に関わっていない人間が見ても理解できるものでなければなりません。フローチャートであるBPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)を使い、業務プロセスの最初から最後までをモデル化することが大切です。この時に意識するべきポイントは、次の通りです。

  • その業務に関係する従業員や部署
  • 含まれるタスクと所要時間
  • 使用するシステムやツール
  • 他部署の業務との関係性
  • 臨時で発生する業務や、年数回しかないが必ず発生する業務を見落とさない

現状の業務量の把握

次に、現在の業務量を把握します。どの部門またはどのメンバーにどれだけの負荷がかかっているかを把握します。業務量の主な調査方法は次の3つです。

  • 実測法
    現場のモニタリングをおこないます。実際の作業を観察して計測するため、情報の信頼性が高くなります。作業時間がある程度安定しているルーティン業務の計測に向いている調査方法です。
  • 実績記入法
    従業員の自己申告をデータにします。信頼性に不安はありますが、調査作業の負担が少なく済みます。
  • 推定比率法
    全体の業務時間から逆算して業務量を推測します。主観が入りやすいという欠点がありますが、短時間で答えが出ます。

なお、業務量調査での現場でのヒアリングそのものが、現場の人間の協力体制がなければ信頼に欠ける点は否めません。立場上言いづらい場合、業務の変化を好まない場合などは、データの信ぴょう性が危ぶまれます。

課題抽出・整理

調査が終了したら、問題を突き止める作業に入ります。問題の原因は曖昧にではなくはっきりと特定する必要があります。一つの問題に対してなぜを繰り返すことで、問題の原因を究明します。また原因の他に、下記のポイントも分析します。

  • 担当している部署や従業員
  • 影響範囲や発生タイミング
  • 想定される解決法

ゴールの設定

見つかった課題が複数の場合、一気に全てを解決することはできません。複数の業務改善を同時進行することは、改善が中途半端になり失敗しがちです。

  • 優先順位
  • 期限
  • 目標値

この3つを決めることが重要です。

具体的な改善計画の策定

具体的な業務改善案を作成します。ここでは次の3点を決めます。

  • 改善プロセスの具体的な工程
  • スケジュール
  • 業務改善で行うべき内容のマニュアル化

またこの時に注意しなければならないのは、次の2点です。

  • 可能な限り細分化し、抜け漏れがないようにする。
  • 改善案は5W2Hを意識すると、実現性が高くなる。

業務の改善方法として、次の3つがあります。

業務の廃止

昔は必要だったものが、今では不要になっていることがあります。無駄なタスクを取り除けば業務時間を削減できます。

業務の標準化

特定の人しかできない業務、作業者によってムラが目立つ業務は、標準化することで誰が行っても一定の質を保てるようになります。代表的な方法は、業務マニュアルの作成です。

導入

新しい業務を組み込んだり、他の業務と取り替える方法ですが、改善は大がかりになります。廃止、標準化、導入の順に難易度が上がります。

改善案実行

改善案を作成できたら実行に移しますが、思うように進捗しないこともこともあるので、常に現状を確認し、問題に対処しなければなりません。進捗の計測にはKPI(重要業績評価指数、英語で Key Performance Indicater)が最適です。KPIはプロジェクトの進捗具合を数値で確認できる計量基準群です。改善案の計画段階で,中間目標としてのKPIを設定しておきます。

効果を確認し、PDCAサイクルを回す

改善業務を遂行したら、必ず次の点について振り返ります。

  • 問題点や予想外のトラブルはなかったか、何が原因か
  • 期待した効果は得られたか、得られなかった場合想定とどれくらいの差があるか
  • 課題は解決したか

このように、行った改善業務をさまざまな視点から評価します。さらに改善できることがあれば、次回の業務に活かせるよう計画を立てます。この計画、実行、評価、改善という一連の作業を繰り返すことをPDCAサイクルと言います。PDCAサイクルを回すことで、業務改善効果をより高めることができます。

業務改善成功のポイント、注意点

業務改善の流れがつかめたところで、業務改善を成功させるために気をつけなければならないポイントを紹介します。

しっかりした体制を構築する

意思決定は誰がするのかを明確にします。また、決定事項を実行に移すためには、プロジェクトの体制についての社内への周知と、どのプロジェクトをどの部門にエスカレーションするかを決定しておく必要があります。プロジェクトの役割や活動内容を明確にして、人的リソースを割く社内各部門の理解を得ます。

4Mの要素を意識する

次の4つの要素を意識して課題や改善方法を検討すると、漏れなく効果的に業務改善を進めることができます。

Man
人的要因。従業員の能力(スキル)・適性・人数・モチベーションや考え方。

Material
モノの要因。材料、またはツール・デバイス類・ソフトウェアなどの数量や使いやすさなど。

Machine
設備的要因。業務体制・ネットワーク環境・サーバーなどの最適化。

Method
手順的要因。業務フローなどは適切か。

QCDバランスを意識する

モノやサービスを提供し利益を上げるうえで重視すべき3要素がQCDです。

Quality
品質向上。顧客満足、競争力アップ。

Cost
コスト削減。競争力アップ・経営安定化。

Delivery
納期短縮。生産性・信頼性アップ。

この3要素は、どれかを過剰に優先すると他の要素にマイナスの影響が起こるというトレードオフの関係にあります。そのため3要素のバランスを意識することが大切です。

スケジュール管理の徹底

作業の遅れが常態化すると、スケジュールが形骸化するので、スケジュールは元首します。期日を守らなくてもいいのであれば、メンバーは日常の業務を優先するようになってしまいます。

KPIによる効果の測定と分析を怠らない

改善作業で得られた効果を数値化し分析するために、KPI設定するようにおすすめしました。この評価と改善は決して怠ってはいけません。1度の業務改善で課題が完全に解決することはまずありません。どの改善策が効果を生み出したのか、何が失敗の原因になったか、分析をしっかりおこなうことで、業務改善の成功が実現できます。

進捗具合は定期的に共有する

プロジェクトの進捗具合は、常に関係者に共有します。全メンバーが俯瞰的に現状把握できますし、全社的な協力体制が得られます。プロジェクトがどれだけの効果を上げているか、今、何が必要かを明示します。

短期での効果を過剰に重視しない

改善業務は中長期的な視点で継続することが大切です。改善業務はPDCAサイクルを回すことで、効果を上げていくものです。一度目はノウハウが蓄積されていない粗削りな計画なので、実行した後に改善点が大量に出てくるかもしれません。そこで投げ出さず改善を繰り返すことが、業務改善の効果を出します。

ツールを導入する場合は、定着しやすさを重視する

業務を効率化するために、次のような新しいツールを導入する場合もあります。

  • プロジェクト管理ツール
    プロジェクトに関わる全員のスケジュール・進捗や関連データの共有、費用の管理などプロジェクトに関する情報をまとめて可視化できるツール。
  • MAツール
    Marketing Automationツールとは、情報管理や分析など顧客開拓サポートツール。
  • コミュニケーションツール
    ビジネスチャットやビデオ会議が可能なツール。

チームの参加とコラボレーションの促進

業務改善プロジェクトにおいて、チームの参加とコラボレーションを促進することは重要です。目標共有や明確な役割分担、フィードバックの受け入れ、定期的なコミュニケーション、チームビルディング活動、技術やツールの活用など、さまざまな方法があります。これらを組み合わせることで、チームの連携力や意識統一を高め、業務改善の成果を最大化することができます。重要な項目を詳しくみていきましょう。

定期的なコミュニケーションとミーティング

定期的なコミュニケーションとミーティングは、チームの参加とコラボレーションを促進するために重要な要素です。定期的なミーティングでは、進捗状況や課題、アイデアの共有などを行い、チームメンバーの意見や提案を集めることができます。適切な議題設定やアジェンダの共有、円滑なコミュニケーションフローの確保が必要です。また、コミュニケーション手段としては、対面ミーティングだけでなく、オンライン会議やチャットツールなどの活用も効果的です。定期的なコミュニケーションとミーティングを通じて、情報共有や意思統一を図り、チーム全体のパフォーマンスを向上させることができます。

チームビルディング活動

チームビルディング活動は、チームの参加とコラボレーションを促進するために効果的な手法です。チームビルディング活動では、メンバー間の信頼関係を築き、コミュニケーションや協力を促進することが目的です。例えば、アウトドア活動やチームゲーム、ワークショップなどを通じて、チームメンバーの相互理解や協力意識を高めることができます。また、定期的なチームビルディングイベントや交流会を開催することで、メンバー同士の交流を深める機会を提供します。チームビルディング活動には楽しさと学びがあり、チームメンバーのモチベーションや結束力を高める効果が期待できます。

技術やツールの活用

技術やツールの活用は、チームの参加とコラボレーションを促進するために重要な要素です。例えば、コミュニケーションツールやプロジェクト管理ツールを活用することで、チームメンバー同士の情報共有やタスク管理を効率的に行うことができます。また、ビデオ会議やチャットツールを利用してリアルタイムのコミュニケーションを行うことで、遠隔地にいるメンバーとも円滑なコミュニケーションが可能となります。さらに、共有ドキュメントやバージョン管理ツールを活用することで、チーム全体での協力作業やプロジェクトの進捗管理を効果的に行うことができます。技術やツールの活用は、チームメンバーの生産性向上や作業効率化につながるだけでなく、情報の一元管理や円滑なコミュニケーションを実現するための重要な要素です。

業務改善のアイデア事例

休暇連絡メールの廃止

メールによる連絡を廃止し、代わりにその人の予定表や社内SNSのステータスを見ることで休暇を把握するように変更。この業務改善により、メールの送信や確認作業時間を削減しました。小さな改善のようですが、全社的、通年的には相当な時間削減になります。

業務マニュアルの作成

手順が煩雑な業務や頻度の低い業務を記憶に頼って作業するのではなく、マニュアルを作成するよう変更したところ、担当者以外の誰でもがマニュアルを見て作業できるようになり、時間短縮と属人化予防が実現できました。

文書の電子化

資料をすべて紙で配布すると、印刷やコピー、配布に時間と手間がとられます。全て電子化してあらかじめ関係者に共有するように業務改善すれば、時間短縮だけでなく、印刷代や用紙代が削減できます。

プロジェクト管理ツール導入

開発・企画・運用の部門間連携強化や多数の進捗管理の効率化を実現できます。メール主体の情報共有の作業工程がなくなるだけでなく、メールの見忘れによる情報埋没リスクも回避できました

業務改善提案のアイデア出しに使えるフレームワーク

業務改善提案書の作成や業務改善計画策定時には、アイデア出しが重要です。しかしながらアイデアが出てこないというケースも少なくありません。なんとなく「改善点はないか」「改善策はないか」と考えるよりも、フレームワークを活用して課題を抽出したほうが、効率が良くモレもありません。アイデア出しに使える代表的なフレームワークをご紹介します。

業務把握にはBPMN

BPMN(Business Process Model and Notation)とは、次の3つのメリットを持つ業務フロー国際基準です

  • 視覚的にわかりやすい
  • 国際基準なので海外でも通用する
  • 階層化が容易

BPMNでは、決まった図形内に記号や処理内容を記載しフロー図を作成します。

原因究明にはロジックツリー

特定の問題に対し、論理的に分解し原因を追求するためのフレームワークがロジックツリーです。ダブりなく書き出せることが、このフレームワークの特徴です。

業務改善方針検討にはECRS

ECRSは、「Eliminate(排除)」「Combine(統合)」「Rearrange(順序変更)」「Simplify(簡素化)」の頭文字をとった業務改善フレームワークで、改善の4つの視点と順序が含まれています。全体像を把握した後で、業務をどのように改善するか検討する段階で最適のフレームワークです。

全体の進捗管理にはPDCA

全体の進捗管理なら、PDCAサイクルが最適です「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)」の4つを1サイクルとして繰り返すPDCAサイクルは、業務を改善し続けるフレームワークです。実際に実行して検証するまで効果がわからない業務改善には、評価結果に基づきさらなる改善を行うPDCAが有用です。

振り返りにはKPT

KPTについては既に述べた通りです。業務改善を行った後の振り返りに最適なフレームワークです。KPTは、「Keep(継続すること)」「Problem(改善の必要な問題)」「Try(新しく試みること)」の頭文字をとったもので、現在効果があって継続するべきこと(K)、改善すべきこと(P)、今後取り組むこと(T)を書き出します。

トラブルシューティング

ビジネスにおいて、トラブルや問題は避けられないものです。そこで重要なのが、効果的なトラブルシューティングの能力です。業務改善のフレームワークとしてのトラブルシューティングに焦点を当て、問題解決の手法やベストプラクティスを紹介します。具体的な事例や実践的なアドバイスを通じて、トラブルシューティングのスキルを向上させ、ビジネスの効率性と成果を高めるための手助けをします。

ルートコーズ分析

ルートコーズ分析は、問題の根本原因を特定するための手法です。この分析では、問題の表面的な原因ではなく、その背後にある根本的な要因を特定し、解決策を見つけ出します。ルートコーズ分析では、魚の骨のような図を使用し、問題の要因をカテゴリー化して整理します。そして、各要因の影響関係を分析し、最終的な原因にたどり着きます。この手法は、客観的な視点で問題を分析し、再発防止策を立てるために役立ちます。

チームでのトラブルシューティング

チームでのトラブルシューティングは、問題解決能力と協力関係の向上に欠かせない活動です。チームメンバーは、問題を共有し、相互に意見を交換しながら解決策を模索します。トラブルシューティングのためには、オープンなコミュニケーション、共有の目標設定、アクティブな参加が重要です。さらに、問題の分析や原因の特定、解決策の評価など、構造化された手法を活用することも効果的です。チームでのトラブルシューティングは、チームの結束力を高め、より効果的な業務遂行に貢献します。

トラブルシューティングのベストプラクティス

トラブルシューティングのベストプラクティスには、以下の要素があります。まず、問題の正確な定義と優先順位付けが重要です。次に、チーム全体の関与と共有の意識を持ちながら、原因を追求し解決策を検討します。また、データと事実に基づく分析を行い、主観的な意見だけでなく客観的な視点も取り入れます。さらに、チーム内のコミュニケーションと協力を促進し、異なる視点や専門知識を結集します。最後に、解決策の効果を評価し、必要な改善を継続的に行います。これらのベストプラクティスを活用することで、効果的なトラブルシューティングが実現できます。

まとめ

この記事では実際に業務改善の担当者や対象部門となった場合に、効果的に取り組めるよう、下記の点について解説しました。大切なのは優先順位をつけること、そして中長期的視点で改善を繰り返すことです。

  • 業務改善の目的と効果
  • 業務改善の進め方
  • 業務改善において注意すべきこと
  • 業務改善に役立つフレームワーク
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