業務改善には「気づき」が不可欠

業務改善を成功させるためには、現場で働く従業員の理解と協働が不可欠です。組織の上層部だけで計画しても、組織全体の意識が改善に向いていなければ、計画は頓挫します。従業員が業務改善の必要性や意義を理解すること、すなわち彼らの「気づき」が重要であり、従業員の気づきをいかに引き出せるかが鍵になります。この記事では、業務改善における気づきの引き出しを念頭に、次の項目について解説します。

  • 業務改善を進める時の注意点
  • 気づきの重要性
  • 気づきをどうやって引き出すか
  • 業務改善の成功事例
目次

業務改善を進める時の注意点2つ

業務改善を進める時に注意するべきポイントがいくつかあります。そのうち最も大切な2つの注意点がこちらです。

優先順位をつける

業務改善ではまず業務の把握と課題の洗い出しを行います。この時点で、通常、改善点や改善案がたくさん出てくるでしょう。「どれも改善するべきだ」と考える人もいるかもしれませんが、リソースには限界があり、一気にすべてを改善しようとすることはリスキーです。現場に無理や混乱が生じ、また全てが中途半端になって効果が出ません。業務改善を確実に成功させるためには、取り組む課題に優先順位をつける必要があります。優先基準は企業や状況にもよりますが、次の4つが指標となるでしょう。

  1. 安全に関わることは最優先
  2. 現状、既に大きな問題を引き起こしている原因の改善・解消は急務
  3. 企業の経済活動の根幹である効率化と付加価値につながること
  4. 問題が多く見られる場合や現場の意識が低いケースでは、小さな業務改善から実行し、成功体験を積んでいくことが有効

継続的に取り組む

業務改善は中長期視点を持ち取り組むことが大切です。焦って短期での結果に固執したり、短期集中でやりっぱなしになってしまうと、定着せず、結果として無意味になりがちです。業務改善は一過性のイベントではなく、継続的に取り組みと成果を重ねていけるよう計画します。業務改善に関して、PDCAサイクルを回すことが求められるのもそのためです。

意識改革と気づきの重要性

業務改善策を策定し実行したとします。ところが現場の従業員が、業務改善の必要性や意義をまったく理解しておらず、今までのやり方のままで作業を進めたり、「他人事」として捉え、「改善」意識のないまま日常業務に携わり続けていれば、業務改善の成功はあり得ません。従業員の意識改革は非常に重要であり、そのため「業務改善においては、メンバーや全社に理解させ浸透させることが大切」とされているのです。この意識改革のスタートは「気づき」にあります。気づきが、業務改善の成功の鍵を握る理由を説明します。

普段からの「気づき」は、質の高い業務改善に繋がる

改善点が何もなければ業務改善を行う必要がありません。そこで業務改善を行う時には改善点を「探す」作業から入り、聞き取りや業務の把握、フローチャートの作成やフレームワークを活用しての洗い出しなどを含む多数の工程を必要とします。しかしながら、普段から、「ここは改善した方がいい」という点に気づいていれば、その作業は必要ないということになります。

「自分ごと」としての「気づき」は改善率が高い

現場の人間が普段から感じている違和感、不満、不都合、失敗を基にした改善点や業務改善案は、反省、取り組む意欲、成功率が高くなるというメリットもあります。

現場の視点から業務改善点を発見できる

組織上層部は、組織全体を網羅的に見ます。そのため、全ての各現場を正確に把握できていません。しかしながら問題点がわからないのに、課題解決などできません。一方、現場で業務を担当している従業員は、現場のことを熟知しています。そのため、現実の課題を把握しやすい立場にいます。

現場の従業員の業務改善に対する意識が高まる

現場を知らない上層部が一方的に打ち出した業務改善は、形だけの活動になりがちです。現場で業務に取り組む従業員の「気づき」に根ざす改善活動は、具体策の立案と本質的な理解を可能にします。

気づきをどう引き出すか

業務改善の必要性や意義に関する従業員の「気づき」を引き出すためには、いくつかのアプローチがあります。従業員が、上から押しつけられている、やらされていると感じているうちは積極的な姿勢は望めません。そこをどう改善するかが重要になります。また、メリットや必要性があることも効果的です。

業務改善の大敵「やらされ感」

業務改善は全員が一丸となって取り組まなければ効果が出ません。特に現場主体の業務改善であれば、現場の従業員こそ主体的な推進者として協力してもらう必要があります。従業員が、「上から指示されてやらされている」「通常業務にプラス、余計なことをやらされている」と感じていたら、積極的に「現場の課題を見つけよう」「解決したい」という意識は生まれません。この「やらされ感」は、業務改善の大敵です。特に、現場の現状を把握していない組織上層部によるトップダウン一方向で行われる業務改善は、危険です。業務改善は現場の現状を誰よりもわかっている従業員の声を聞き、ボトムアップで進めるのが、成功のコツです。

従業員が業務改善提案しやすい環境を整える

従業員に、「問題を見つけよう」「業務を効率化しよう」という意識や自発性を期待するのであれば、上司は、提案しやすい環境を整えるべきです。対面での提案だけでなく、提案書や提案フォーム、目安箱の設置なども良いでしょう。また、せっかく提案しても、まったく聞き入れてもらえない、評価されない、あるいは否定されたりマイナス評価につながるとなると、従業員は何も言わなくなりますし、モチベーションも下がります。従業員が自分の意見が受け入れられているという達成感を持てば、より自発的な行動につながります。

メリットを与える

精神論的な部分ばかりでなく、業務改善が自分にとって直接的なメリットがあれば、誰しも本気で取り組みます。「仕事が楽になる」「早く帰れる」といった動機は否定するべきではありません。そのうえで、業務を効率化することでコア業務に集中でき、、生産性を高め、より大きな成果を生み出せるということを、最終的な目的として浸透させます。また、業務改善に取り組む時間も労働時間として計算する、改善の成果を業績として正当に評価するといったことも、重要です。業務改善がサービス残業になったり、改善しても何の評価にもつながらないのでは、積極的な協力は期待できません。

発見から活用まで

業務改善においては、気づきの発見が重要な要素です。効果的な気づきの発見方法とその活用法を探求しましょう。データの分析や可視化によって潜在的な問題や改善のポイントを明らかにすることができます。また、ユーザー視点や顧客のフィードバックを積極的に取り入れることも重要です。さらに、ブレインストーミングセッションやチームの意見交換を通じて新たなアイデアを生み出しましょう。これらの気づきの活用方法を詳しくみていきましょう。

データ分析と可視化

データ分析と可視化は業務改善における重要なツールです。データを分析し、可視化することで業務の課題やパフォーマンスを明確に把握することができます。データから傾向やパターンを見つけ、問題の原因や改善のポイントを特定することが可能です。さらに、可視化によってデータを直感的に理解しやすくし、情報共有や意思決定を迅速に行うことができます。データ分析と可視化を組み合わせることで、業務改善に有益な気づきを得ることができます。

ユーザー視点の意識

業務改善において重要な要素の一つは、ユーザー視点の意識です。ユーザーのニーズや要求を正確に把握し、それに基づいて業務プロセスやサービスを改善することが求められます。ユーザー視点を意識することで、業務における問題や課題をユーザーの立場で考えることができます。その結果、効果的な改善策や革新的なアイデアが生まれることがあります。ユーザー視点の意識を持ちながら業務改善を進めることで、ユーザー満足度の向上や競争力の強化などの成果を得ることができます。

ブレインストーミングセッション

ブレインストーミングセッションは、多くの参加者が自由な発想を行い、新たなアイデアを生み出す有効な手法です。成功するためには、プラス思考の雰囲気を作り、ルールを明確にし、異なるバックグラウンドの参加者を集めることが重要です。また、アイデアの可視化や評価・選択を行うことで、具体的な改善施策へと繋げることができます。ブレインストーミングは創造性を引き出し、業務改善に大きな成果をもたらすのに最適です。

組織内のコミュニケーションと共有

組織内のコミュニケーションと共有は、効果的な業務改善の鍵となります。コミュニケーションの促進には、定期的なミーティングやチームコラボレーションツールの活用が有効です。情報の共有には、内部ポータルやチャットツールなどのコミュニケーションプラットフォームを活用することが重要です。さらに、意見交換やフィードバックの文化を醸成し、アイデアやノウハウを積極的に共有する環境を作りましょう。組織内の円滑なコミュニケーションと共有は、業務改善のスピードと成果を向上させます。

業務改善の成功事例集

最後に、実際に業務改善に取り組み、大成功した事例をご紹介します。多くは、現場の従業員の気づきを大切にしたことが、成功につながっています。

チャットサービスで現場の意思疎通を円滑に

製造会社の事例です。こちらの工場は従業員の平均年齢が高く、パソコンなどITツールをスムーズに扱える人が少ないことが原因で、トラブルが起きたときの連携や進捗管理が滞っているという課題がありました。コミュニケーション不足についての現場からの不満をすくい上げ、業務改善することにしました。そこで、チャットサービスを従業員が無理なく楽しみながら使ってもらえるように工夫し定着させました。チャットサービスで受注部門と営業所をつなぎ、写真付きでやりとりしながら議論、質問、回答するようになり、課題が改善しました。

IoTを導入し出荷作業を効率化して、ドライバーのイライラと出荷担当のストレスも軽減

物流会社の事例です。繁忙期の出荷作業が混雑を極め、トラックの待ち時間が3時間を超えることが常態化していました。当然、ドライバーはイライラし、出荷担当はプレッシャーから疲弊するという、非常に望ましくない状況でした。これを改善するために思い切ってIoTを導入倉庫から10km離れた地点の待機場での発着時点、近くの待機場での発着時点、出荷場への到着時点と、トラックの出入りを、細かくモニタリングできるようにした結果、トラックの待機時間を目標の30%削減できました。

お問い合わせフォームとAI翻訳の合わせ技で、電話対応時間を大幅に削減

サービス事業会社の事例です。前任者の信念で「トラブルを避けるためにも直接電話で予約やり取りをする」「日本語と英語のみ対応」というルールでしたが、英語が流暢なメンバーは少なく、予約受付にかなりの時間が取られていました。競合との売上競争も芳しくないことを受け、現場からの提案で、お問い合わせフォームに全ての必要事項を記載して送ってもらった上で、担当者がいない時はAI翻訳を使い、速やかに返信するというように業務改善しました。これによって、電話対応時間が大幅に削減でき、従業員も落ち着いてコア業務に専念できるようになりました。

管理システムを構築し取引先及び商品データ管理を効率化

薬品原料輸入会社の事例です。この会社は多数の海外企業から商品を輸入していますが、古くは紙ベース、そして長年、Wordに企業情報と製品情報を手作業で入力・修正していました。ページ数がどんどん増え、必要な情報にたどり着くまでに時間を要する、入力する人によって、情報範囲が異なるなど、検索性に乏しい資料となっていました。業務改善のために、独自で顧客管理システムを構築し大きく効率化できました。

まとめ

業務改善を成功させるためには、ボトムアップの改善提案が望ましいとされています。そのためには、現場の従業員の自発的な「気づき」が鍵になります。しかし今のままでも自分が困らないとなると、改善の必要性が薄く無関心になりがちです。改善することによってどんなメリットがあるのか、改善しなければどんなデメリットが将来生じるのかを理解させることが必要です。この記事では業務改善における「気づき」の重要性を念頭に、以下の項目を解説しました。

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  • 気づきの重要性
  • 気づきをどうやって引き出すか
  • 業務改善の成功事例
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