マネジメントの種類一覧、マネジメントの手法、そして求められるスキル

ビジネスにおいては、マネジメントによって人材を有効に活用することが重要です。この記事では、組織マネジメントに必要な情報として下記の項目を全て紹介します。

  • マネジメントの定義
  • マネジメントの種類一覧
  • マネジメントの実施方法、手法
  • マネージャーに求められるマネジメントスキル
目次

マネジメントの定義

マネジメントと聞くと、漠然とした包括的なイメージしか浮かばないという方もいるかもしれません。ビジネス分野でのマネジメント​​、英語ではBusiness Managementですが、これを直訳すると「経営管理」となります。具体的にいうと、組織において、目標達成のために人材、資産、資金、時間、情報と言った経営資源を管理、運営していく事を指します。

著名な経営学者であるドラッカーは、マネジメントについて「組織に成果を上げさせるための道具と機能と機関」であると定義しています。これを別の言葉に言いかえると、企業や組織が目標を達成するための仕組みや方法がマネジメントであるということになります。

マネジメントの種類一覧

マネジメントの分類方法はいくつかあります。それぞれについて詳しく解説します。

階層別マネジメント

経営者と現場の人間では、当然ながら求められるマネジメントスキルが異なります。組織内での役割に応じて、マネジメントを階層別に次の3つに分類したものが階層別マネジメントです

  • トップマネジメント
    代表取締役、取締役、役員といった組織の運営を担う経営層に求められるのが、トップマネジメントです。組織運営の舵を取り、経営戦略、ビジョンといった組織全体に関わる意思決定を行います。
  • ミドルマネジメント
    部長、次長、課長といったいわゆる中間管理職に求められるのが、ミドルマネジメントです。経営層と現場の従業員とのあいだの橋渡し役として、組織の運営方針や方向性を現場に伝え、現場からは現状や意見、要望等を吸い上げ経営層に伝え、組織の円滑な運営を担います。
  • ロワーマネジメント
    係長、主任、リーダーといった実際に現場で実務にあたる従業員を直接的に指揮監督する層に求められるのが、ロワーマネジメントです。ミドルマネジメント層からの指示を現場に落とし込み、企業としての方向性を現場での実務に確実に反映させる役割を担います。

業務内容別マネジメント

階層だけではなく、業務内容によっても、求められるマネジメントスキルは異なります。業務別マネジメントは求められる業務の範囲別によって次の三つに分類されます。

  • 組織運営のためのマネジメント
  • 人材管理のためのマネジメント
  • メンタルヘルス管理のためのマネジメント

組織運営のためのマネジメント

組織運営のためのマネジメントは、さらに次の3つに分けられます

  1. チームマネジメント
    チームマネジメントは、チームの生産性を上げ組織の目標を達成するためにチームを活性化させるマネジメントです。主として実務の現場において必要とされるマネジメントで、チーム全体の結束力を高め、士気を上げ、組織のパフォーマンスを向上させるために必要とされます。
  2. プロジェクトマネジメント
    プロジェクトマネジメントは、プロジェクトの進捗や人材の配置など、プロジェクトを達成するための様々な要素を管理するためのマネジメントです。効率的に業務管理を行うために欠かせないマネジメントです。
  3. ナレッジマネジメント
    ナレッジマネジメントは、組織内の知的財産を集約、共有するためのマネジメントです。ひとりひとりの従業員が業務の中で得た情報や知識を組織全体で共有するなど、組織内に点在する経験やノウハウ、知見等を集約、精査し、組織内で共有できる知的財産として管理することで、企業の価値を向上させ競争力を高めるために必要なマネジメントです。

人材管理のためのマネジメント

人材管理のためのマネジメントもまた、次の3つに分けられます

  1. タレントマネジメント
    タレントマネジメントは、個々の従業員のスキルや能力に合わせた人材の配置や育成を目的としたマネジメントです。個々の従業員のタレントを把握することによって、適材適所の人員配置を可能にし、生産性の向上に役立てます。人事に関連する業務には欠かせないマネジメントといえます。
  2. モチベーションマネジメント
    モチベーションマネジメントは、従業員が業務に取り組む際の意欲を引き出し、より多くの成果を出させるためのマネジメントです。主に内発的動機付けを促すことによって、人材の成長を加速させ、業務の効率や生産性の向上につながります。
  3. パフォーマンスマネジメント
    パフォーマンスマネジメントは、従業員のパフォーマンス向上とその維持のためのマネジメントです。部下に対して適切なフィードバックをすることにより、個々の従業員の自発的な行動を促し、業務のパフォーマンス向上をはかるマネジメント法です。

メンタルヘルス管理のためのマネジメント

メンタルヘルス管理のためのマネジメントは、次の3つに分けられます

  1. メンタルマネジメント
    メンタルマネジメントは、従業員の精神的な健康を守るためのマネジメントです。従業員の心に負担を与える様々な要因を適切に管理することで、精神的負担を緩和し、個々の従業員が能力を発揮できるようにサポートすることにより、休職者や離職者の減少をはかります。
  2. ストレスマネジメント
    ストレスマネジメントもメンタルマネジメントと同様に、従業員の精神的な健康維持のためのマネジメントです。ストレスはどんな環境でも日常的に生まれるため、ストレスの完全な排除を目的とせず、ストレスと上手くむかい合いコントロールすることによって、個々のストレス耐性を高め適切にストレスと対処できる事を目指します。
  3. アンガーマネジメント
    アンガーマネジメントは、怒りの感情を適切にコントロールするマネジメントです。上手く怒りを制御することによって不適切な行動を防ぎ、他者とのコミュニケーションを円滑にし、自身の精神の安定を図ります。

時間別マネジメント

時間別マネジメントは、効果的な時間の使い方を実現するための重要な手法です。パーソナルプライオリティの設定、タイムブロッキングの活用、ディストラクションの管理など、具体的な方法があります。この記事では、初心者でも取り入れやすいアプローチを紹介します。時間を有効に活用し、効率的にタスクを進めるためのヒントを見つけてください。時間を上手に使いこなし、成果を最大化しましょう。

パーソナルプライオリティ

パーソナルプライオリティの設定は、時間別マネジメントの基本です。自身の目標や価値観を考慮し、優先順位の高いタスクや活動を明確にします。重要度と緊急度のマトリクスやABC分析などのツールを活用することで、優先順位を的確に決定することができます。また、定期的な目標の見直しや適切な時間の割り当ても重要です。自分自身のニーズや目的に合わせてプライオリティを設定し、時間を最も価値のある活動に集中させましょう

タイムブロッキング

タイムブロッキングは時間別マネジメントにおいて効果的な手法です。予め特定の時間枠を割り当てて、特定のタスクや活動に集中することで効率的に作業を進めることができます。重要なプロジェクトや重要な目標に時間を確保し、無駄な時間の浪費を防ぎます。カレンダー上で時間をブロックし、集中して取り組むことで生産性が向上し、ストレスの軽減にもつながります。タスクの優先順位を考慮し、適切な時間を割り当てることで、効果的なタイムブロッキングを実践しましょう。

バッファータイム

バッファータイムは時間別マネジメントにおいて重要な要素です。タスクや予定の間に余裕を持つことで、予期せぬ遅延や問題に柔軟に対応することができます。バッファータイムの設定により、タスクの実行時間の見積もりの誤差や予期せぬ事態による遅延を吸収し、スムーズなスケジュール管理を実現します。また、バッファータイムはストレスの軽減にも寄与します。予定を詰め込みすぎず、余裕を持ったスケジュールを作成し、バッファータイムを有効活用しましょう。

プロクラスティネーション(先延ばし)

プロクラスティネーション(先延ばし)は時間別マネジメントにおいてよくある課題です。克服するためには、明確な目標設定と優先順位の付け方が重要です。具体的なタスクを細分化し、短期的な目標を設定することで、大きな課題を取り組みやすいサイズに分割します。さらに、デッドラインを意識し、タスクの重要性と緊急性を評価しましょう。時間の浪費を防ぐために、集中力が高まる環境を整え、誘惑を排除します。また、タスクの完了後に自己報酬を設定することで、モチベーションを保ちます。プロクラスティネーションを克服し、効果的な時間管理を実践しましょう。

マネジメントスタイル

次にマネジメントスタイル、マネジメントの形についてお話します。マネジメントのスタイルは次の7つに分類されます。

独裁型

意志決定をほぼリーダーだけで行い、メンバーは全員がその決定に従うトップダウン型のマネジメントです。他のメンバーの意見は基本的に求められません。効率が重視される場合やスピーディな意思決定が求められる状況で効果を発揮しますが、新しいアイデアが生まれにくく、離職率の増加を招く場合もあります。

協議型

独裁型と同様に最終的な意思決定は本人が行うものの、メンバーは自由に意見を出し、リーダーも耳を傾けて意見を受け止めます。自由に意見を言える事でメンバーの貢献意欲が向上し、離職率も低下しやすいですが、意思決定に関与する人数が多いため独裁型に比べ効率は落ちる傾向があります。

民主型

独裁型、協議型に比べて意思決定に際してメンバーが深く関与しており、組織内の風通しもよくコミュニケーションも活発なマネジメントです。メンバーは組織内で大切にされていると感じるため組織に対する貢献意欲がより高くなりますが、協議型よりもさらに意思決定に時間がかかることが多くなります。

放任型

リーダーというより指導者に近いスタンスで行うマネジメントです。基本的にはメンバーが自身で判断して業務を行い、リーダーは必要に応じてメンバーをサポートします。自発性の高いメンバーに裁量を与えることで、ゆとりある業務環境が生まれ、特にクリエイティブな業種で効果を発揮しますが、メンバーが放置されていると感じる場合もあり、サポートする場面の見極めが必要です。

説得型

独裁型と同じく意思決定はリーダーが行いますが、その決定が組織にとって最適であるとメンバーに対して説得し理解を求めるマネジメントです。意思決定のプロセスを共有することは信頼関係を築きやすく、メンバーからの反発も少ない傾向にありますが、最終的な意思決定はリーダーが下すため、部下が意見を出せる機会があるとは限らず、信頼関係の維持には配慮が必要です。

変革型

リーダーはメンバーが多少達成しづらいレベルの目標設定を行い、リーダーの協力の下、メンバーに全力を出させ、スキルアップを促すマネジメントです。メンバーの問題解決能力や適応力が向上し、イノベーションを促す環境をつくるのに効果的ですが、対象となるメンバーが変革型のマネジメントに適した人材かは、慎重に判断する必要があります。

協調型

チームワークを重視し、積極的にメンバーと協力するスタイルのマネジメントです。メンバー自身に意思決定を促すことで生産性を高めることができ、リーダーを育てやすいマネジメントといえます。メンバーの士気を高めるのに効果的で、リーダーも尊敬を集めやすい反面、メンバーとの関係が馴れ合いになってしまったり、組織内で協力体制を築こうとするあまり疲弊してしまうことがあります。

マネジメントに必要な能力の種類

マネジメントにはさまざまな能力が必要とされますが、今まで解説してきたどのマネジメントにも共通して必要な能力が4つあります。こちらについて説明します。

課題分析能力

組織や自分の状況を正確に把握し、課題を発見し、原因を特定するための分析能力です。これは、組織の目標達成のために不可欠な能力です。課題の解決のために的確な指示が出せるよう、ロジカルシンキング能力を習得することが重要です。

プロジェクト管理能力

業務の進捗、スケジュール管理や人材確保、課題の解決に向けたプランの選定等、プロジェクト管理に必要な能力です。プロジェクトは常に予定通りに進むとは限らないため、臨機応変に軌道修正しつつプロジェクトを管理する能力は、マネジメントにおいて必須です。

意思決定力

組織の方向性を決め、業務を完遂させるための重要な能力です。組織内でさまざまな意見が飛び交うなか、明確な意思決定をして方針を定め、組織をまとめあげるためには、リーダーシップが重要となります。

コミュニケーション能力

組織内で良好な人間関係を築くために非常に重要な能力です。日常的に積極的な意思疎通を図ることで、組織全体にプロジェクトの方向性を浸透させることができます。また、良好なコミュニケーションを維持することで、ネガティブな情報も滞ることなく上がってくるため、さまざまな課題に対して素早く対処することが可能になります。

マネジメントの実施方法、手法

実際にマネジメントを実施する上での具体的な方法を、身近な例であるステークホルダーマネジメントを例に4つのステップに分けて見ていきます。

利害関係者の特定

​​最初に誰が利害関係者(ステークホルダー)であるかを確認します。利害関係や影響度の大小に応じて人や組織をリストアップし整理します。

マネジメント計画の立案

円滑なプロジェクト進行のため、立案した戦略を組織内外の利害関係者に対し許攸します。さまざまな情報を適切に共有してプロジェクトを進めるため、ミーティング等を通して適切なコミュニケーションを図ります。

エンゲージメントマネジメント

利害関係者との関係性を深化させ、プロジェクトへの関与を強化します。立案したマネジメント計画に沿って利害関係者とコミュニケーションを取り、プロジェクトの進捗を管理します。

エンゲージメントコントロール

プロジェクトの進行は、いつも計画どおりに進むとは限りません。プロジェクトの進捗具合を正確に把握し利害関係者との関係を調整していくことで、マネジメント計画の最適化を図ります。

マネージャーに求められるマネジメントスキル

上記いずれのマネジメントにおいても、マネージャーには組織の目標達成のためにマネジメントスキルを振るわなければなりません。実際に注意すべきポイントと、多く見られる問題点について説明します。

注意すべきポイント

タスクの明確な優先順位の設定

生産性を高めるマネジメントでは、タスクの優先順位を明確にして業務を進めることが非常に重要です。より重要度の高い課題から取り組むことによって、効率的に業務を進めることができるようになります。

人材の活用

効率的に業務を進めるためには、個々のメンバーの得意不得意を把握し、それぞれのメンバーに適切に業務を配分することが重要です。また、できるだけ細かくタスクを細分化することによって効率的な作業が可能になります。さらに、割り振ったタスクを明確にすることで、不具合が発生しても早期に察知することができ、被害の拡大を防ぐことができます。

多く見られる問題

課題をどうやって解決すべきかわからない

何が課題かは把握していても解決のための具体的な方法が分からないということが、しばしば見受けられます。また、解決すべき問題が多岐にわたり、どこから手をつければいいのか分からないといったケースもあります。原因の1つとして、代の変化とともに多様な人材やワークスタイルが一般的になり、それに対応できる柔軟なマネジメントが必要とされていることが挙げられます。課題もその解決方法も複雑化していると言えるでしょう。

経営層と現場の方向性がずれている

経営層が中長期的に経営戦略を描いているのに対して、現場では短期的な目標を達成しているため問題意識がないといったように、お互いのビジョンがマッチしていないケースです。経営層が描く中長期的なビジョンを現場でも共有するためにも、マネジメントの役割は重要です。

まとめ

組織における役割に応じて、マネジメントの種類は多岐にわたります。マネージャーがそれぞれの特徴を把握した上でマネジメントスキルを高めることによって、より精度の高い管理が可能となります。マネジメントの種類や実施方法を正しく理解し実践することが、組織の目標達成にもつながるのです。それぞれの役割によって、適切な研修や実践を通じてスキルを磨き、現場で役立つマネジメントスキルを身につけることが望まれます。

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