企業が経営活動を盛んに行い、成長、発展していくためには、生産性を高めなければなりません。そのためには、優秀な人材が不可欠です。企業は優秀な人材を集める努力だけでなく、人材育成にも取り組まなければ、少子高齢化社会と労働の流動性(離職)の中で生き残っていくことが難しくなります。人材育成が重要であるという意識は多くの企業にありますが、現状は、人材育成の取り組みが不十分であったり、人材育成を担うマネジメント人材が不足していたり、様々な課題を抱えている企業が多いです。この記事では、人材育成において必要なスキルをテーマに、以下の点について解説します。
- 人材育成の目標
- 人材育成に必要なスキル
- 人材育成における課題
- 人材育成で重要なポイント
人材育成の目標
人材育成を行う目標は、大きく分けると次の4つです。
- 生産性向上
- 従業員の定着率
- 次世代のリーダー育成
- 組織力の工場
生産性向上
人材育成の成功は、社員の能力やスキルの向上を意味します。結果として、生産性向上が期待できます。言い換えれば、企業の人的資源である人材の成長は、企業の成長を実現するということです。既に2030年には、2020年に比べ、労働人口が1000万人近く現象する見込みが総務省から発表されています。それほど我が国の人手不足は顕著なのです。スーパーマン、スーパーウーマンがどこかにいるはず、そのような人材がある日うちにやってこないものかという受け身の姿勢ではなく、今いる社内の人材について能力やスキルを向上させることがこれからの企業にとり、絶対必要だと言えるでしょう。また新入社員への研修や育成だけでなく、各世代、階層の社員が能力を発揮できるよう取り組んでいくことも大切です。
従業員の定着率
人材育成は、従業員の定着と優秀な人材の離職予防の効果もあります。離職の大きな原因として、広義で「仕事に対するやりがいを感じられない」ことが挙げられます。社員の年代や階層に応じた充実した研修プログラムは、スキルアップと共に、仕事に対するマインドセットといった効果があります。終身雇用制度が崩壊し、ブラック企業が問題視される現代では、離職率の高低自体が、企業のイメージアップ、モチベーション向上、人材採用や育成にかかるコスト抑制につながります。
次世代のリーダー育成
管理職など次世代のリーダー育成は、多くの企業にとって大きな課題です。一代で日本を代表する企業に成長したいくつかの会社でも、後継者問題に頭を悩ませていたり、「創業者は凄かった。が、カリスマ性が凄すぎて、あとが続かないだろう。」などと噂されていることが少なくありません。リーダーや後継者候補が育たない理由の一つとして、企業内での教育体制が不十分、またはないことが考えられます。人材育成には、教育プログラムを策定するだけでなく教育のための時間も必要です。まだ経営が軌道に乗っていないベンチャー企業や経営資産が不足しがちな中小企業などで、それだけの手間とコストをかけることは困難だからです。しかしながら企業の将来を考えるのであれば、次世代のリーダー育成は必ずやってくる課題であり、放置することはできません。
組織力の向上
個々の従業員が高い能力を持っていてもスタンドプレーのみで、チームとして協力し同じ目標に向かうことができないとすれば、その組織はうまく機能しません。人材育成のプログラムでは個人のスキルアップだけでなく、組織に順応させることを目的として組織の価値観や経営戦略などの共有も行います。
人材育成に必要なスキル
人材育成者に必要な下記の7つのスキルについて解説します。
- 現状や課題の把握力
- 目標や計画の管理能力
- ロジカルシンキング
- クリティカルシンキング
- コミュニケーション力
- リーダーシップ
- 経験と知識
現状や課題に対する把握力
現状を正確に把握し、チーム内や社内の課題を発見することから、人材育成プラン策定は始まります。課題が明らかになれば、どのような人材がどの程度必要かを知ることができるからです。現状や課題を把握するためには、観察力や洞察力が必要です。また社内組織構成やポジションごとの業務内容についても理解している必要があります。
目標や計画を管理する力
企業やチームが抱える課題の洗い出しを行い、次に人材教育・育成の目標と計画を立てます。具体的には、どのようなスキルを持ち合わせた人材が、いつまでに、どのくらいの人数必要であるかということです。企業理念や経営戦略、現場の現状や課題、これらの両方を総合的に判断し、ゴールを設定します。現状や育成対象者の能力とあまりにかけ離れた目標は、実現可能性がないだけでなく、社員のモチベーションを下げてしまうリスクがあります。
ロジカルシンキング
ロジカルシンキングとは「論理的思考」を意味します。物事の原因と結果を正確に把握し、どんな繋がりがあるかを考える思考方法です。ロジカルシンキングによって人材育成の課題や問題点を考えることで的確な対策を判断できます。
クリティカルシンキング
クリティカルシンキングとは、日本語に直訳すると「批判的思考」となります。そのため粗探しをするような思考回路と誤解されがちですが、そのようなものではありません。本来の目的は、物事の本質を見極め、改善やリスク回避に繋げることです。「従来のやり方が本当に最善か」、「より効率的で効果的な方法はないか」と考えることが、成長や改善につながります。
コミュニケーション力
人材育成の業務は他社とのやり取りが主になるため、コミュニケーション能力が必須です。コミュニケーションスキルは、自分の考えや思いを相手にわかりやすく伝える能力という側面だけでなく、相手の意図を正確に把握する力も含みます。人材育成においては、聞く力、また相手の能力やモチベーションを引き出すコーチングスキルなどが求められます。
リーダーシップ
人材育成者は、指導者として部下の目標達成を促しサポートします。部下のモチベーション維持や効率的な教育に、適切なタイミングでのフォローとリーダーシップは欠かせません。部下との信頼関係の構築は、より効果的な教育を実現します。
人材育成に関する知識や経験
人材育成に関する知識や経験が必要です。これらが不足していると、社員の希望にマッチしていない人選や教育プログラムによって、従業員にストレスを与えたり、企業に無駄な育成コストを負わせることがあります。このような人材育成はマイナスの効果しか生まず、避けるべきです。人材育成者は、人材育成について正しい知識を習得し、実際の経験を積み重ねることが大切です。
人材育成における課題
冒頭で述べたように、人材育成は非常に重要ですが、人材育成の仕組みが整っていない企業は多いです。よく見られる人材育成の課題3つについて説明します。
時間不足
多くの企業が訴えるのが、人材育成にかける時間やコストの不足です。人材育成には時間だけでなくマンパワーも必要であり、すなわちそれはコスト(金)や人的リソース面での負担を意味します。また育成担当者が研修などで得た知識やスキルは、即効性があるものではなく、一定の時間をかけて効果を表します。さらに人材育成は一度実施したら終了ではありません。継続的に、定期的に行う必要があります。このような人材育成への取り組みは、人員不足などが理由で日々の業務に追われている現場では困難です。外部から学習プログラムを受注する場合は、コストがかさみます。
育成者不足
対象者を育成するだけの経験やスキルを持った指導者がいないというのも、よくある課題です。効果的な人材育成は誰にでもできることではありません。現場のプレイヤーとしては優秀でも、指導力や育成スキルがあるとは限らないからです。そのため、教育指導者に対する教育やフォローアップについてもしっかりと検討する必要があります。知識不足、誤情報の発信、対象者のモチベーションを削ぐ教育など、質の低い指導がなされると逆効果になりかねません。
人材育成業務が軽視されている
人材育成自体を軽んじる社風では、育成に関わろうとする社員は減ります。自身が高い評価を得るため、自分の業務のみに注力するようになってしまいます。いわゆる部下や後輩が育たない職場です。
人材育成における改善
成長と成功の鍵となるのは、絶え間ない人材育成の取り組みです。人材育成における改善の重要性と具体的な手法に焦点を当て、より効果的な育成プログラムの構築に役立つ情報をお届けします。従業員のニーズを把握しカスタマイズ、フィードバックの文化構築、継続的なスキル開発など、組織の成長を後押しするスキルについて探っていきましょう。
ニーズの分析とカスタマイズ
ニーズの分析とカスタマイズは、効果的な人材育成の鍵となります。従業員のスキルレベルや成長に関する情報を収集し、個々のニーズを把握することで、適切な育成プログラムをカスタマイズできます。一般的な研修だけでなく、個別指導やメンタリングなど、個々のニーズに合ったアプローチを導入することで、従業員のモチベーションと学習効果が向上し、組織全体の成果につながります。定期的なフィードバックを取り入れることで、育成プログラムの改善も可能となります。
フィードバックと振り返りの文化の構築
フィードバックと振り返りの文化の構築は、持続的な人材育成に不可欠です。組織全体でオープンなコミュニケーションを促進し、従業員同士や上司との間でフィードバックを積極的に行う文化を育てることが重要です。振り返りの機会を設け、過去の成果と課題を共有し、今後の改善点を洗い出すことで、個人の成長と組織の進化を促進します。また、フィードバックを受け取る姿勢やフィードバックを行うスキルを磨くトレーニングも大切です。このような文化を築くことで、従業員の自己成長意欲が高まり、組織全体のパフォーマンスが向上するでしょう。
技術やトレンドへの適応と革新
技術やトレンドへの適応と革新は、競争激化する現代ビジネスにおいて不可欠です。急速なテクノロジーの進化に対応するため、従業員は常に学習と成長を重視し、新しいスキルを習得する必要があります。また、業界のトレンドを把握し、市場ニーズに敏感に対応することで、企業の競争力を強化します。革新的なアプローチを採用し、積極的な改善を行うことで、業務プロセスや製品の進化を促進します。そのため、リーダーシップが継続的なイノベーションを奨励し、従業員に自らのアイデアを積極的に発信する文化を醸成することが重要です。これにより、組織は変化に対応できる柔軟性を持ち、持続的な成功を実現できるでしょう。
人材育成で意識すべき重要ポイント
上記で解説した、人材育成の目標と課題を踏まえ、人材育成を行うときに必ず意識すべき3つのポイントを解説します。
- 目標設定をしっかり
- モチベーション維持の管理
- 会社一丸で取り組む
目標設定は徹底的に考える
人材育成のスタートは「どのような人材を、いつまでに、どれくらい育成する必要があるか」を考えることです。人材育成の目標は「従業員のモチベーションやスキルのアップ」、「離職率の軽減」など、企業によって異なりますが、どの企業であっても共通しているのは「企業が理想とする人物像に向け従業員を成長させること」です。求めている人材に確実に育ってもらうには、事前に目的や目標を明確に設定することが重要です。
モチベーションの維持と管理
人材育成の成功は、①的を得た育成プランの策定、②対象者のモチベーション維持、③指導者による適切なサポート、この3点に左右されます。特に対象者のモチベーションを高め維持することは重要です。本人のやる気がないまま研修や勉強会に参加しても、得られるものは非常に少ないでしょう。この教育を受けることによってどのようなメリットがあるのかを理解できるように説明し、そして本人がどのような教育を受けてどうなりたいかをしっかりと聞き取ることが、高い意識と成果につながります。
全社一丸となって取り組む
人材育成を育成者と対象者、または所属する部署や人事担当のみのタスクとみなし、自分には関係ないという意識が社内にまん延していることは絶対に好ましくありません。社内全体で取り組むべき課題として人材育成をとらえ、人材育成に関連する制度を抜本的に見直すことが、成功につながります。人材育成制度として有名なものに、OJT制度やOff-JT制度、ジョブローテーションや人事評価制度などがあります。どの手法を取り入れることが効果的か検討することはもちろん、「人事評価制度」と人材育成の適切かつ公正なリンキングにより、育成目標の達成度が実際の人事評価に反映することも大切です。これは人材育成へのモチベーションと、評価内容に対する納得度合いを高めます。
まとめ
今回は、人材育成を行うにあたり必要なスキルをご紹介しました。この記事でわかることは次のとおりです。
- 人材育成の目標
- 人材育成に必要なスキル
- 人材育成における課題
- 人材育成で重要なポイント
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