人材育成に役立つフレームワークを紹介、フレームワーク取り入れの必要性やうまく活用するポイントも解説

優秀な人材の育成は、企業の安定と成長にとり必要不可欠です。しかし、人材育成担当者の不足や人材育成システムの不備などにより、人材育成がうまくいかない企業は少なくありません。ここで取り入れたい有効な解決法のひとつが、人材育成フレームワークです。成功例が数多くあるフレームワークを取り入れれば、人材育成の効率化を図ることができます。この記事では、次の点について解説します。

  • 人材育成の目的
             
  • 人材育成における課題
             
  • 人材育成においてフレームワークの活用が必要な理由
             
  • 代表的な人材育成フレームワーク
             
  • 活用するときのポイントと注意点
目次

人材育成の三大目的

人材育成とよく似た言葉に人材教育というものがあります。この二つには次のような違いがあります。人材育成とは、従業員を育成し自社に貢献できる人材にすることです。人材教育は、業務に必要な知識やスキルを教えることです。人材育成は目の前の業務がこなせるだけでは不十分で、中長期的な視点で、会社の経営戦略や事業発展を理解し主体的に行動できる人材を育てることまでを目的としています。人材育成の目的は三つに分けることができます。

経営目標の達成

人材育成の目的の一つめは、企業の経営目標の達成です。経営戦略などの理想を実現するには、実現できる人材が必要であり、そのような人物に社員が成長することが不可欠です。このような社員を育成するためには経営陣の方針やその重要性を丁寧に伝えたり、研修など学びの機会を提供したりします。

モチベーションを上げ従業員の能力を生かす

人材育成の目的の二つめは、従業員のモチベーション向上です。会社において能力向上の機会が提供されると、従業員は会社に信頼を寄せたり期待に応えようとします。また、人材育成の研修で得たスキルが評価されることも同様の効果があります。従業員のモチベーション向上は、生産性を高め離職率を抑えます。結果として、企業価値を高めるのです。

企業内で共通意識を持つ

人材育成の目的の三つめは、従業員が一丸となりチームワークを発揮させることです。現状や目標、会社が求める人材や目標達成への過程を理解させることで、共通の認識と目的意識が生まれます。この一体感は組織を支える重要な要素となります。

人材育成における課題

人材育成の重要性は認識しているが、様々な「不足」により、うまく人材育成が行われていないという悩みを抱える企業は少なくありません。人材育成の課題は企業によって異なりますが、その企業の問題点や現状をの実に示すものでもあります。代表的な課題を4つ、ご紹介します。

育成に充てる時間がない

人材不足、人手不足に悩んでいる企業は少なくないため、現場の業務で手一杯ということは珍しくありません。人材育成は策定、遂行、管理に多くの時間的なリソースが取られます。このような状況では、自社で人材育成を行うことは難しいでしょう。

育成できる人材がいない

人材育成の知見や経験を持つ人物が社内にいないこともあります。業務で優秀だからといって、人材育成者として適任とは限りません。ただテキストを配布したり、テキストを読み上げるだけの研修のように一方的なやり方しかしていない企業は少なくありません。しかしそれでは効果は出ません。人材育成は、各従業員が自発的、自主的に行うことが鍵です。

明確な目標・評価基準がない

人材育成の目標が曖昧であったり、研修の内容・手順が不明確な場合、効果は期待できません。人材育成ではまず、従業員に「何をいつまでにどこまで」できるようになってもらうのかを考えます。そしてこの目標達成に必要なプログラムや研修を考えます。また研修を受けたときに、あらかじめ設定した各段階での小目標を達成し、それに対して公平で納得のいく評価を受けることが、モチベーションの維持につながります。

育成システムが整っていない

これまでに人材育成を行っておらず社内システムが整っていない企業もあります。その場合、何から手をつければ良いかわからないかもしれません。人材育成の研修プログラムの策定は、思っている以上に手間と時間がかかります。社外から人材育成コンサルタントに参加してもらう、人材育成の施策を支援するツールを導入するといった有効な手段もありますが、コスト面も考慮しなくてはなりません。

人材育成に取り入れたいフレームワーク

上記の課題を解決する助けになるのがフレームワークの活用です。フレームワークとは日本語で、物事の輪郭や大筋を意味する「枠組み」のことですが、ビジネスにおけるフレームワークは、「従業員が共通して用いることができる考え方や意思決定・問題解決・戦略立案などの枠組み」のことを指します。人材育成におけるフレームワークは、会社が望む人材に成長するために何が必要か、分析、整理し、人材育成の方向性を決めるために有効な手法です。様々なフレームワークがある中で、会社の経営理念や目標に応じたものを選べば、一から自力で考えるより、人材育成における質の高い施策が効率的になるでしょう。

人材育成に活用したいフレームワーク

人材育成に役立つフレームワークは色々あります。フレームワークを自社に合わせカスタマイズすることもできますが、まずは代表的なフレームワークを紹介します。

SMARTの法則

目的:目標設定

成り立ち:目標達成に必要な下記の5つの頭文字から成ります。

  • Specific(具体的、分かりやすい)
             
  • Measurable(計測可能、数字化されている)
             
  • Achievable(同意できる、達成可能な)
             
  • Relevant(関連性)
             
  • Time-bound(明確な期限)

SMARTの法則の長所は、対象者のレベルに合わせ、具体的な目標と期限を設定し、達成したら新たな目標を設定することを繰り返し、これによって少しずつレベルアップさせていくことができる点です。このやり方は目標達成を確実にする効果が大きいです。

カッツ理論

目的:従業員の階層によって強化すべきスキルと、そのために必要な指導や育成が自動的に抽出できるフレームワーク。

成り立ち:米国の経済学者、ロバート・カッツ氏が提唱した理論です。ビジネスマンに必要なスキルは3種類あり、従業員の職層によって強化すべきスキルが分かれます。

【ビジネスマンに必要なスキル】

  • テクニカルスキル(業務遂行能力・専門能力)
             
  • ヒューマンスキル(対人関係能力・人間理解能力)
             
  • コンセプチュアルスキル(概念化能力)

【従業員の職層】

  • ロワーマネジメント(リーダーなど下級管理職)
             
  • ミドルマネジメント(課長や部長など中間管理職)
             
  • トップマネジメント(社長や役員など経営層)

70:20:10フレームワーク

目的:人材の成長度合いを表す

成り立ち:米国のミロンガー社が提唱

リーダーの成長に有効なのは実務経験であり、研修は知識吸収の効果はあるが大きな成長につながらないという考えに基づき、リーダー育成においてもOJT(職場内訓練)を主に考える企業に向くフレームワークです。

カークパトリックモデル

目的:教育評価法のモデル

成り立ち:アメリカの経営学者のカークパトリック博士が提案

教育の評価を4段階に分け、各レベルで教育や研修の効果を測定します。

レベル1:Reaction(反応)

レベル2:Learning(学習)

レベル3:Behavior(行動)

レベル4:Results(業績)

レベル1と2の評価を研修実施時に行えば、評価結果を次回のプログラムの改善に役立てることができます。レベル3と4は、プログラムの継続が可能か判断するための評価に用いられます。人材育成の成果と業績との関連を数値にして費用対効果を出せるため、カークパトリックの4段階評価法は世界的に定着しています。

HPIHuman Performance improvement

目的:現状から組織の理想の姿を明確にし改善するためのフレームワーク

成り立ち:Human Performance Improvementの略です。HPIは、以下の5つのステップを含みます。

  1. 現状のパフォーマンスの分析。理想とのギャップの洗い出し。
             
  2. ギャップの原因を分析。
             
  3. 解決策を設定。
             
  4. 施策実行。
             
  5. 成果を評価。

経営計画達成と人事育成の課題がリンクしているのがHPIです。

氷山モデル

目的:全体像を捉えるフレームワーク

成り立ち:海面から出ている氷山は全体の1割で、残りの9割は海の中に隠れているという「氷山の一角」が語源。

氷山モデルのフレームワークは、表面に現れている課題の全体像をとらえ、根本的な課題解決に向かいます。人材育成においては、現実を階層で分け、それぞれのつながりからどこでどのように課題が生じてきたのかを探ります。

思考の6段階モデル

目的:教育トレーニングモデル

成り立ち:教育学者のベンジャミン・ブルーム博士が提唱したフレームワークで、下記のように6つの段階に分けた思考について、それぞれの段階の能力を高める必要があるという考え方です。

知識:事実・言葉・方法を知っているか

理解:内容を理解し、言い換えや説明ができるか

応用:知識を他の場面でも使いこなせるか

分析:全体から特定の要素を抽出し解説できるか

統合:部分的な情報を組み合わせて、統一できるか

評価:基準に照らし合わせ価値を判断できるか

フィードバックと評価

人材育成 フレームワーク」に焦点を当て、成長と改善のための重要な要素であるフィードバックと評価についての内容を探求していきます。効果的なフィードバックの提供方法や評価の方法、そして両者を連動させる重要性について解説します。人材育成においてフィードバックと評価が果たす役割に迫り、成果を最大化するためのフレームワークを探求していきます。

フィードバックの重要性と効果的な提供方法

フィードバックは人材育成において重要な要素であり、効果的な提供方法が成果を左右します。具体的で具体的なフィードバックは、従業員が改善すべき点を理解しやすくし、成長を促進します。建設的なアプローチで提供することで、従業員のモチベーションを高め、ポジティブな側面を強調しつつ改善点を指摘します。タイムリーなフィードバックは、成果が出た時点で提供することで課題解決に早く取り組めるようにし、成長を加速させます。相互的なコミュニケーションを重視することで、従業員の意見を尊重し、対話を促進することができます。フィードバックは、組織のパフォーマンス向上に寄与し、人材育成の成功に不可欠なツールとして活用されます。

評価の方法と成果の測定

評価の方法と成果の測定は、従業員のパフォーマンスと業績を客観的に評価するための重要なプロセスです。評価方法は、定量的な指標(KPI、目標達成率など)と定性的な要素(行動評価、コンピテンシー評価など)を組み合わせて、従業員の能力や成果を総合的に判断します。

成果の測定には、目標設定が重要な役割を果たします。明確で具体的な目標を設定し、定期的な進捗確認や振り返りを行うことで、従業員の成果を評価する基準となります。また、成果の測定にはデータ分析やレポート作成が活用されることもあります。

フィードバックと評価の連動

フィードバックと評価は密接に連動しており、従業員の成長と組織の成功に欠かせない要素です。フィードバックは日々の業務や目標達成に対する具体的な指導やアドバイスを提供することで、従業員のスキル向上やモチベーションの向上を促進します。一方、評価は定量的・定性的な成果を評価し、従業員のパフォーマンスを客観的に測定します。

これらの連動は、従業員の成長と成果の向上に寄与します。フィードバックを通じて特定の強みや改善点を共有し、その結果を評価に反映させることで、従業員は自己啓発に向けた意欲を高めます。逆に、評価結果がフィードバックに影響することで、目標設定や成果目標の再確認が可能となります。組織文化の発展と共に持続的な成功につながる重要なステップとなるでしょう。

人材育成にフレームワークを活用する際の注意点

人材育成にフレームワークを活用すれば、課題や解決への道のりが明確になり、効率的な取り組みをすることができます。しかし、ただ何かしらのフレームワークを使えばいいというものではなく、自社に適したフレームワークを選び、さらに自社や課題に合わせてアレンジしたり改良したりすることが重要です。フレームワークを有効に活用するための注意点を解説します。

フレームワークは目標に合ったものを選ぶ

人材育成のフレームワークを活用するにあたり、まず最初に重視しなければならないことは、目標達成に適したものを選ぶということです。人材育成の目標は会社に貢献する人材の育成と維持です。つまり長期的な会社の成長が目的です。

繰り返し継続する

人材育成のフレームワークを取り入れても、すぐに期待どおりの結果が出るわけではありません。実践と改善を繰り返し、自社に最適な育成計画にしていくことが不可欠です。効果測定・改善のための見直し・最適化というプロセスを積極的に重ねることが、効果の高いフレームワークを実現します。

フレームワークは自社に合わせてアレンジする

フレームワークはそのまま使わなければいけないと誤解していないでしょうか。その必要はありません。自社の状態や課題の内容によって、アレンジすることで、より使い勝手の良いフレームワークが出来上がります。アレンジする際に意識するべき点は次の3つです。

Why(何のためのフレームワークか)

What(何をするフレームワークなのか)

How(使用方法・手順)

この3点をしっかりと考えることで、短期的、実践的な効果に偏らず、自社の企業目標に即したフレームワークにすることができます。

役職や業務で使いわける

企業によっては、どの部署に異動させても即戦力になれるようなマルチプレイヤー育成を目指していることがあります。しかし現場の意見は、異なることが多いです。人材育成の目標は、階層や部門によって異なって当然でしょう。フレームワークの効果をより高めるためには、中堅従業員、部長クラスといったように、階層別に分けて行うことも大切なポイントです。階層によって知識・技能、マネジメント能力、創造性・リーダーシップなど、求められる能力は異なるため、フレームワークも異なってくる可能性が多いにあります。

アウトプットから逆算する

フレームワークを活用する際は、目標達成によってもたらされるはずの結果から逆算します。育成された人材による業務の成果から逆算することが、合理的で効率の良い人材育成フレームワークの設計や活用が可能になります。

まとめ

専門家でなくても人材育成をうまく行うために有効なのがフレームワークの活用です。とはいえ、フレームワークはあくまで人材育成を助けるツールであり、フレームワークを導入したからといって、それで即効性のある人材育成が成功するというわけではありません。人材育成には長期的な視点が大切です。実行と改善を繰り返す忍耐、現場の声や状態の把握といった努力も欠かせません。そのうえで、フレームワークにこだわり過ぎず、自社の状態や課題の内容に応じた柔軟なフレームワーク構築を行えば、非常に頼りになるでしょう。

この記事でわかることは次のとおりです。

  • 人材育成の目的
             
  • 人材育成における課題
             
  • 人材育成においてフレームワークの活用が必要な理由
             
  • 代表的な人材育成フレームワーク
             
  • 活用するときのポイントと注意点
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