人材育成は研修だけではない! 人材育成の具体例を紹介

人材育成とは、企業の財産である人的資源について、自社の発展のために必要な人材に育てることです。人材育成と聞くと、研修しか思い浮かばない方もいるかもしれません。また担当業務を迅速、正確にできるよう教え込むことだと思うかたもいるでしょう。それらは人材育成の一部に過ぎません。人材育成で最も大切なのは、自分で考え行動できるよう、自発的な社員を養成することです。人材育成は継続的に長期間行うことで、社員の能力向上と企業の業績向上が実現可能なのです。この記事では、人材育成のさまざまな具体例についてご紹介しますが、それ以外にも下記のような内容を含みます。

  • 人材育成の目的
             
  • 人材育成の手法
             
  • 人材育成の成功事例
             
  • 階層別人材育成
目次

人材育成の三大目的

最初に、人材育成の目的について理解しておきましょう。

  1. 生産性向上と従業員の定着による、労働力不足の解消
    人材育成を行い、社員のスキルと自発性を向上させれば、業務の生産性を高めることができます。我が国で深刻化する労働力・人手不足は、多くの企業にとって課題となっています。
             
  2. 企業の業績向上
    人材育成を通し社員の考え方や行動が変化することによって、企業の業績向上に貢献するようになることが期待されます。
             
  3. 経営戦略の実現
    経営戦略を策定すると、その実現に必要なスキルや事業等がはっきりします。次にそれらに適した人材育成を行えば、結果として「経営戦略の実現に貢献できる人材」を育てることが可能になります。採用、人件費など人材確保には、多大な時間、労力、金銭的コストがかかります。その人材にいかに能力やスキルを発揮してもらうかによって、企業の業績や利益が左右されます。よって、人材育成は企業の繁栄に欠かせないのです。

人材育成の手法

人材育成の手法は多数あります。しかしながら、短期的人材育成と長期的人材育成において、一般的に行われている育成手法がありますので、ご紹介します。

短期的な人材育成手法

OJT

「OJT」とは、「On the Job Training」の略で、現場の実務を通して必要な知識やスキルを習得してもらう教育・指導法です。現在、OJTは人材育成における約9割の時間を占めるとされています。OJTは基本的に部門の上司や先輩が育成者となるため、誰が担当するかによって、育成対象者の能力を活かせるかどうかが左右されます。

Off-JT

「Off-JT」とは、「Off the Job Training」の略で、社内の集合研修や外部講師を招いたセミナーなど業務外の研修のことです。

SD

「SD」とは、「Self Development」の略で、セミナーへの自主参加や書籍など自己啓発のことです。

長期的な人材育成手法

人事評価制度

人事評価制度とは、社員の能力や業績を評価し、成果に応じ昇進や昇級に反映させる制度です。報酬による社員のモチベーション向上のみならず、評価によって改善点を把握できるというメリットがあります。

目標管理制度

社員個人個人に目標設定、進捗管理をさせる手法です。これは、経済学者P・ドラッカーが提唱したマネジメント手法で、MBOともいいます。自ら計画を立てることで、自己管理能力を伸ばせるとされています。

タレントマネジメント

自社の人材がどのようなスキルや能力を持っているかを的確に把握し、最大限に発揮できるよう適材適所に配置することで、個人のパフォーマンスを最大化する手法です。

eラーニング

パソコンやモバイル端末からインターネット上で学習するシステムですが、場所や時間にとらわれず受講できるメリットがあります。学習の進捗管理やオリジナルのコンテンツ作成などの機能もあり、活用する企業は増加しています。

人材育成の成功事例

ここからは具体的な人材育成の成功事例をご紹介します。

大手企業の人材育成

資生堂

資生堂は日本を代表する化粧品事業会社です。また国内だけでなく国外でも幅広く事業展開しています。2014年12月から全面的な変革に取り組んでおり、合言葉は社員の「心に火を点けられるか」で、成長したい人にチャンスを増やす取り組みを行っています。トップ層の人材育成改革から着手開始し、「リーダーシップアカデミー」というグローバル共通の教育体系を構築しました。

トヨタ自動車

トヨタ自動車は、国内トップの自動車メーカーだけではありません。日本を代表する企業であり、また自動車業界でのシェア率も圧倒的です。そんなトヨタの伝統的な「教え/教えられる風土」に根ざした教育システムがうまく機能しなくなっていたことを受け、「OJTの再強化」と「教え/教えられる風土」への回帰を試みました。

サントリーホールディングス

ビールや洋酒など飲料水の製造、販売を手掛けるサントリーホールディングス株式会社は、自社のグローバルな発展のために、グローバル人材の育成に注力しています。留学制度やMBAが取得できる制度など、グローバル人材育成制度を多数設けています。この中で特に成功しているのが、「トレーニー制度」です。トレーニー制度は、若手社員をオセアニア、欧州、東南アジア、中国、北米、中米と多方面の海外グループ会社に派遣し、海外生活や実際の業務を体験させるものです。派遣中は、グローバル人事部がコーチとして定期レポートの作成などフォローアップをしっかり行う体制もしっかりできています。派遣中、当該社員は、語学力、コミュニケーション能力、異文化理解力といった様々なグローバルスキルを向上させることができます。

ソフトバンクグループ

ソフトバンクグループ株式会社では、30代・40代向けのキャリア研修が新たに設けられました。「自ら手をあげた者に機会を与える」という方針に基づき、年齢やキャリアを問わず、意欲ある全ての人材にチャンスを与えることが目的です。

この30代・40代向けのキャリア研修では、ほぼ全ての研修が認定社内講師によって行われますが、開講されるコースごとに講師を募集し、書類選考や面接などで選ばれ、約半年間研修講師トレーニングを受けた後、やっと講義を行えます。講義を受ける側は応募制となっており、自身で受けたいコースを自由に選びます。

中小企業における人材育成の成功事例

株式会社井口一世

従業員数50名以下の製造業会社です。職人の世界によくある見て覚える技術や勘といったものを数値化するIT化を推進しています。また主体的に考えるマルチスキルワーカーに社員が成長するよう「正解を教えない」人材育成プログラムを導入しています。

社員のスキルアップに素早く対応できるよう給与改定のタイミングを見直し、人材育成を成功させました。これにより目標であった事業の多角化を実現した上に、員の長期休みの取得も可能になりました

株式会社グローバル・クリーン

従業員数60名のビルメンテナンス業会社です。宮崎県北部の地域密着型企業です。幹部候補育成を目標に、個々の社員にあった教育カリキュラムとマネジメント層を対象とした研修プログラムを社内で独自開発しました。この取り組みが成功し、事業の多角化が実現できました。

図ることに成功したそうです。

階層別の具体的な育成

人材育成においては、対象者の階層によって、求められる能力やスキル、課題などが異なります。そのため、階層によって育成方法も分ける必要があります。

若年層を育成するときのポイント

若年層の人材育成で問題となるのは、次の5つの点です。

  • 業務が多忙で、育成の時間的余裕がない
             
  • 育成担当者の育成能力や指導意識が不足している
             
  • 社内で人材育成システムが構築されていない
             
  • 人材育成対象者の意欲が低い
             
  • 離職等で人材育成投資が回収できない

新入社員の育成を成功させるためには、次の4つのポイントに留意が必要です。

  • 採用段階でリーダーシップやに能力をしっかりと見極め、早々に育成を開始する
             
  • 入社後ギャップを解消する努力をし最小限に抑える
             
  • 厳しさだけでなく丁寧なフォローを必ずセットにする
             
  • 育成者の選抜は慎重に行う

中堅社員(入社3年目以上)を育成するときのポイント

中堅社員を対象とした人材育成で多いのは、次の手法です。

  • 定期的な面談(個別評価)
             
  • 企業が費用を負担する社外教育
             
  • 目標管理制度による動機づけ
             
  • 計画されていないOJT

一方、中堅層の人事育成における課題ですが、若年層とほぼ同じです。しかし若年層に比べ研修や育成計画が手薄になることから、問題を感じている企業は多いです。中堅層は次世代リーダー候補ですから、次のような手法で、じっくり、そしてしっかりと育成していく必要があります。

  • 部下を持たせたり、責任のあるポジションに就かせる
             
  • 幅広い業務知識を身に着けさせる

管理職層を育成するときのポイント

管理職層の育成における課題を一位から順に挙げます。

  1. 世代により管理職候補者の能力・資質にムラがある
             
  2. 管理職になりたがらない者や、転勤の敬遠等で管理職要件を満たせない者が増えている
             
  3. 事業展開の不確実性の高まりに伴い、管理職の計画的・系統的育成が困難になっている
             
  4. ライン管理職になれなかった人材の有効活用やモチベーション維持が難しい

少しわかりにくいと思いますので、それぞれについて説明します。

世代により管理職候補者の能力・資質にムラがある

例えば社会情勢や景気によって、その年に採用できた人材の数や質は均一ではありません。また、人材育成は対象がヒトであるため、同じように研修などを行っても、個人の資質や状況により効果には差が出てしまいます。世代により、人材の層が薄いということは、いかに人材育成が一筋縄でいかないかを物語っています。

管理職になりたがらない者や、転勤の敬遠等で管理職要件を満たせない者が増えている

プライベートを重視する若者が増えたこと、管理職になると残業代が支払われなくなること、負う責任と報酬が見合っていないと感じるといった理宇腕、管理職になりたくないという社員が増えています。また共働きが進んだことや、子どもの教育、親の介護などの理由で、転勤が敬遠される傾向があります。

事業展開の不確実性の高まりに伴い、管理職の計画的・系統的育成が困難になっている

変化の激しい時代になり、10年後の自社の姿を想像することが難しいという声も増えています。事業内容そのものが大きく変わってしまうことも少なくありません。先行きが不確実だと、戦略や計画を立てることが非常に難しくなります。

ライン管理職になれなかった人材の有効活用やモチベーション維持が難しい

全員が管理職候補、管理職になれるわけではありません。なれなかった場合、モチベーションが著しく低下してしまう可能性があります。しかしながら管理職になれないからといって、有用な知識や能力がないという意味ではありません。個々の持つ知識、経験、能力、スキル、資格、人脈などを最大限に活かせるよう配置し、かつ必要なスキルやモチベーションを向上させていくことが重要です。

トレーニングとプログラム

組織の成長と競争力向上に不可欠な要素として、人材育成があります。人材育成の具体例に焦点を当て、成功事例を探求し、さまざまなトレーニングやプログラムを通じて、組織が従業員のスキルや能力を向上させる方法を紹介します。人材育成によって個人の成長を促し、組織全体のパフォーマンスを向上させるためのベストプラクティスを探っていきましょう。

オンジョブトレーニング

オンジョブトレーニングは、従業員のスキルや能力を職場で実践しながら向上させる効果的な手法です。具体的には、経験豊富なメンターによる指導や実務を通じた実践的な学習を提供します。従業員は実際の業務に取り組みながら、新しいスキルや知識を習得し、組織のニーズに応える能力を向上させることができます。オンジョブトレーニングは、タスクの遂行能力や問題解決力の向上、チームワークやリーダーシップスキルの発展などに効果的です。組織は、適切なトレーニングプランを設計し、従業員が実務で経験を積みながら成長できる環境を整えることが重要です。

コミュニケーションスキルトレーニング

コミュニケーションスキルトレーニングは、個人やチームの成果を向上させるために重要な役割を果たします。このトレーニングでは、効果的なコミュニケーションの基礎を学び、聴取、発信、フィードバックなどのスキルを向上させることができます。参加者は、自己表現能力や対話能力を高め、相手との関係をより良くするためのコミュニケーション技術を磨くことができます。また、コミュニケーションの誤解や衝突を回避するためのコミュニケーション戦略も学びます。トレーニングは、ロールプレイやグループディスカッションなどの実践的な活動を通じて行われることが多く、参加者はリアルなシナリオでの練習やフィードバックを受けることができます。コミュニケーションスキルトレーニングは、ビジネス環境において円滑なコミュニケーションを実現し、協力や協調を促進するために欠かせない要素です

ローテーションプログラム

ローテーションプログラムは、従業員の能力開発とキャリア成長を促進するための有効な手法です。このプログラムでは、従業員が定期的に異なる職務や部署に配置され、幅広い経験を積むことができます。ローテーションにより、従業員は組織内の様々な業務を理解し、異なるチームやプロジェクトでの協力と連携能力を高めることができます。また、新しい知識やスキルを獲得し、総合的な視野を持つことができます。ローテーションプログラムは、従業員のモチベーションを高め、成長意欲を刺激する効果もあります。組織は、適切なマッチングとトレーニングを通じてローテーションプログラムを実施し、従業員のスキルセットを強化し、組織全体の柔軟性と能力を向上させることが重要です。

メンタリングプログラム

メンタリングプログラムは、経験豊富なメンターと経験の浅いメンティーとの間で行われる効果的な学習手法です。メンタリングは、メンティーの成長と発展を支援し、知識、スキル、自信の向上を促すことを目的としています。メンターは、自身の経験や専門知識を共有し、メンティーを指導し、アドバイスを提供します。メンティーは、メンターからのフィードバックや助言を受けながら自己成長を図ります。メンタリングプログラムは、組織内の知識の伝承やリーダーシップの発展、キャリアのサポートに効果的です。成功するメンタリングプログラムの要素には、適切なマッチング、定期的なコミュニケーション、目標設定、フィードバックの提供があります。組織は、メンタリングプログラムの導入と運営に積極的に取り組み、従業員の成長と組織のパフォーマンス向上を促進することが重要です。

まとめ

人材育成の具体的な事例を知ることで、色々なアイデアが浮かんできたかもしれません。人材育成の目的をしっかりと頭におき、様々な手法や事例を取り入れて、適切に人材育成計画を立て遂行することが、成功につながります。この記事でわかる内容は次のとおりです。

  • 人材育成の目的
             
  • 人材育成の手法
             
  • 人材育成の成功事例
             
  • 階層別人材育成
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