KPIとKGIは経営や業務の目標を立てる際に一緒に出てくることが多い言葉です。一目見ただけではなんのことかわからず、似通っているので、混同してしまいがちです。KGIはビジネスの最終目標、つまりゴールを定量的に表した指標です。一方、KPIは、そのKGIを達成するためのプロセスで、一つひとつクリアしていかなければならない中間目標となる指標です。この記事では、主にKPIとKGIについて次の項目を解説します。
- 概要
- 違い
- KGIとKPIの立て方
- 策定において気をつけるべきポイント
- その他の用語との関係
KPIとは何か、KGIとは何か
まず最初に、それぞれの概要を確認しましょう。
KGIとは
KGIを一言で説明すると、「最終目標」です。KGIは、Key Goal Indicatorの略称で、日本語では「重要目標達成指標」あるいは「経営目標達成指標」と呼ばれています。売上高や成約数、利益率などが、KGIの代表です。KGIを数字で示すことで、ゴールが明確になり、現状からゴールまでの距離を可視化したり、現状評価に基づき、対策や措置をとることができます。KGIの設定期間は最終目標の規模や内容によって異なりますが、1〜3年の長期的目標になることが多いです。
KPIとは
KPIを一言で表すと「中間目標」です。Key Performance Indicatorの略称で、日本語にすると「重要業績評価指標」あるいは「経営業績評価指標」となります。最終目標であるKGIを達成するためには、そのために必要なプロセスが実行されているかどうかを定量的に評価する必要があります。その指標となるのがKPIなのです。KPIを設定し、継続的に遂行度を測定・監視すれば、KGIの達成に向け計画的に前進でき、遅延や問題がある場合は、計画の見直しなどによって改善します。KPIとして設定されるものの代表格は、新規顧客獲得数、解約件数、契約件数、PV数などです。KPIは中間目標ですから、その設定期間はKGIよりも短く1〜3カ月など月単位で設定されます。
KPIとKGIの違い
ここまで読んで、KPIとKGIは密接した関係にあるが別のものであることが理解していただけたと思います。
- KGIはビジネスの最終目標を定量的に表した指標で、企業が目指すゴール
- KPIはKGIを達成するために順に達成して行く必要がる中間目標となる指標
KPIの達成を重ねていくことが最終ゴールであるKGIの実現につながるという関係で、KPIはKGIのプロセスだと言えます。一つのKGIに向け複数のKPIが段階的に設定されるフレームワークを、「KPIツリー」といいます。下位KPIを適切に遂行し達成することがKGIに到達するという全体像を視覚的に捉えることができます。
KPIとKGIの設定方法
次にKPIとKGIを設定する方法を順を追って説明します。
KGIの指標を決める
最初に、ゴール、つまり最終目標となるKGIの指標を決めます。なぜならKPIはKGIから逆算して設定するからです。KGIは必ず、明確かつ現実的な指標でなくてはなりません。KGIやKPIを決める際の成功法則として「SMARTの法則」というものがありますので、ご紹介します。
- 明確な(Specific)
- 測定可能な(Measurable)
- 達成可能な(Achievable)
- 結果指向または関連性がある(Result-oriented or Relevant)
- 期限の定まった(Time-bound)
この5つを満たす指標が成功するのです。それぞれについて説明しましょう。
明確性(Specific)
指標は誰が見ても同じ解釈ができるものでなければなりません。「粘り強い営業」といった曖昧な表現では、人によって思い浮かべる内容や程度が異なってしまいます。具体的でわかりやすい目標として「商談成約率50%」という風に数字で設定すれば可視化されたゴールを共通認識することができます。
測定可能(Measurable)
測定可能というのは、進捗をはっきり測定できるかどうかを指します。「売上を前年比120%にする」というKGIであれば、「目標の〇ヶ月前の〇月には前年比100%達成を目指す」といったようにKPIを設定できます。
達成可能(Achievable)
達成可能な実現性のある目標を定めることが必要です。低過ぎる目標は企業の成長・発展に繋がりません。しかしあまり高い目標を設定すると達成できないだけでなく、KPIの設定自体が困難になったり、従業員のモチベーションが下がります。
結果指向または関連性(Result-oriented or Relevant)
結果指向という言葉は聞きなれないかもしれませんが、企業のビジョンや経営戦略、部門の本質的な役割に沿った目標になっているかどうかです。
期限が定められている(Time-bound)
これはKGIの達成期限のことです。期限を明確にしないと、中間目標であるKPIの締切も曖昧になり計画的に業務遂行することができません。
KPI設定
KGIの次に、KPIを設定します。KPIもSMARTの法則を押さえることが大切です。KPIはKGIを基点として、逆算しながら設定します。例えば「成約件数を前年比◯%にする」というKGIを設定した場合、「成約率をアップする」「商談アポ数を増やす」「新規問い合わせを増やす」といった段階がトップダウン式に連なってKPIとして設定できます。さらに「新規問い合わせを増やす」というKPIに対し、「SNS投稿を増やす」「PVを増やす」、「試用体験」「インフルエンサーの起用」といったように様々なブレイクダウンができます。このブレイクダウンを進めていくと、しっかりとしたKPIツリーが出来上がり、何から始めて、次に何をすべきかという道のりがはっきりします。
KPIの目標数値を決める
KPIツリーが完成したら、次はそれぞれのKPIについて具体的な数値目標を設定します。この数値で大切なことは、次の2つです。
- 最終目標であるKGI達成を可能にする値
- 現実的な値
ここで矛盾が生じたなら、そもそものKGI設定、またはKPIの内容に、無理や誤りがあるということになります。KPIはKGIが分解されたものですから、最初に適切なKGIが設定されていないと、どこかでひずみが出てきます。
KPIとKGIの改善と適応
KPIとKGIの改善と適応により、組織の成果向上と目標達成に重要な変化をもたらす方法を探求します。データ分析や評価に基づいた効果的な戦略立案、関係者の参加とコミュニケーションの重要性、そして持続的な改善の取り組みに焦点を当て、組織の成長に向けた具体的な手段を解説します。KPIとKGIを適切に改善し、適応することで、組織の成功に寄与する価値ある情報をお届けします。
データ分析と評価
データ分析と評価は、組織やプロジェクトの成果を客観的に把握するために重要な手段です。データ分析により、膨大な情報から有益な洞察を得ることができ、課題やチャンスを発見することが可能です。評価は目標達成の程度を測り、成果に対する効果を明確化します。適切なデータ分析と評価により、組織は現状の把握や課題の特定、戦略の修正など、意思決定に根拠を持たせることができます。そして、持続的な改善に向けた方針を立てる上で欠かせない要素となります。
改善の戦略立案
改善の戦略立案は、目標達成や成果の向上を実現するための重要なステップです。戦略立案では、具体的な目標を設定し、それを達成するための具体的な手段やアクションプランを策定します。データ分析を基に課題や問題点を洗い出し、SWOT分析などを活用して組織の強みと弱みを把握します。さらに、市場動向や競合状況を考慮して、適切な戦略を検討します。戦略の選択と実行には関係者の参画が欠かせず、組織全体の協力と連携が重要です。持続的な成果を上げるために、戦略の定期的な評価と改善を行うことが不可欠です。
コミュニケーションと関係者の参加
改善活動において、効果的なコミュニケーションと関係者の参加は成功の鍵となります。関係者との密接なコミュニケーションによって、改善の目的や重要性を理解し、共感を得ることができます。関係者は組織内外の様々なステークホルダーであり、彼らの視点や意見を取り入れることで、より多角的な問題解決が可能となります。コミュニケーションを通じて情報を共有し、相互に意見を交換することで、アイデアの発展や意思決定の迅速化が促進されます。関係者の参加はプロジェクトへのコミットメントを高め、結果的に改善の成功につながります。定期的な報告や進捗の共有、フィードバックの取り組みも重要であり、オープンで透明性のあるコミュニケーションが信頼関係を築き、成果の持続的な確保に貢献します。
持続的な改善の取り組み
持続的な改善の取り組みは、ビジョンと目標の明確化、継続的なデータ分析、PDCAサイクルの実践、社内外の協力、そして変革への対応が重要です。データに基づいた改善を繰り返すことで、組織の成長と競争力を強化できます。また、組織文化として持続的な改善を根付かせることが成果の確保につながります。組織全体が向上心を持ち続ける姿勢を持ち、共通の目標に向かって努力することで、持続的な成果を実現することができます。
KGI・KPIを設定する際のコツと注意点
先に説明したSMARTと被る部分がありますが、大切なことですので、KGI・KPIを設定する際のコツと注意点についてもう一度確認しておきたいと思います。つい忘れがちで、この点を無視したKGIやKPIがときどき見られるので、しっかりと理解しておいてください。
必ず定量化できる指標にする
KGIもKPIも必ず数値として精査できるものにしてください。抽象的なものでは、達成度についてメンバー間で認識のズレが生じ、指標として役に立たなくなるからです。一見抽象的にしか表せないように思う「ユーザー満足度」なども例えば、「アプリストアレビューの平均評価点数」など定量的に評価できる指標に置き換えることで、することで効果検証がスムーズに行えるようになりますので、考えてみましょう。
KGIと結びついたKPIであること
KPI達成がKGI達成に直結していなければ、KPIをいくら達成しても最終的なビジネス目標は実現しません。KPIの目標数値をクリアしていけば、KGIの達成にたどり着くようにKPIを設定しましょう。
KSFやOKRとの関係
KSF、OKRという言葉についても知っておくのが良いと思います。KGIやKPIを活用する際によく出てくる関連用語ですので、しっかりと区別できるよう意味を理解しておきましょう。
KSF(Key Success Factor)
KSFは「Key Success Factor」の略です。日本語では「重要成功要因」や「重要成功要因」となります。KGIやKPIが定量指標(数値)ですが、KSFはKGIやKPIを達成するための活動や要因であり、定性的な(数値で表せない)ものです。
OKR(Objectives and Key Results)
OKRは「Objectives and Key Results」の略語で、日本語では「達成目標と主要な成果」「目標と成果指標」となります。Google社やFacebook(現・Meta)社など、米国の有名企業が採用して成果を上げたことで知られています。
OKRは組織や個人の目標設定・管理手法のひとつとして使用され、定性的な組織・個人の目標である「Objectives」、Objectivesを達成するための定量的な指標である「Key Results」で構成されます。
KPI・KGIとOKRの長所と適性
KPI・KGIでなくOKRを採用する企業は、どのような差異に注目してそのような選択をしたのでしょう。まずKPI・KGIは、部門ごとの目標設定、管理に向いている評価指標です。厳格な目標管理ができるというメリットがある反面、柔軟性に欠けるというデメリットもあります。現在は外的要因などに左右され、経営環境が急激に変化する時代です。設定した目標設定が、時間の経過とともに形骸化することは少なくありません。そのため、各部門の普遍的なルーティンワークなどに向く指標だと言えます。
一方OKRは、会社全体の目標管理に適しています。経営者からメンバーまで、全員で同じ目標を設定することが可能です。またOKRは四半期ごとに見直すのが一般的で、柔軟性があるため、先進的な企業が多く取り入れています。またベンチャー企業のような新しい企業であれば、トップの意思決定やビジョンを全員で共有できるので、OKRは適しているといえるでしょう。
まとめ
KPIとKGI、二つの用語は同時に出てくることが多く、密接な関係がありながら全く異なるものです。この記事では、初めての方でもKPIとKGIを策定できるよう次の点について解説しました。。
- 概要
- 違い
- KGIとKPIの立て方
- 策定において気をつけるべきポイント
- その他の用語との関係
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