KPI設定の実践前に知っておきたい指標例を紹介

KPIとはKey Performance Indicatorの略語で、日本語でいうと「重要業績評価指標」となります。企業の目指すゴールであるKGI(重要目標達成指標)の達成に向け、その過程での達成度を計測したりチェックするためにKPIが必要になります。簡単な言葉で言い換えると中間目標数値です。KPIはKSF(CSF/重要成功要因)と並んで、KGI達成のKey(重要な鍵)となりますので、正しく理解し適切なKPIを設定することが大切です。

この記事では指標としてのKPIについて、次の項目を解説します。

  • KPIとは何か
             
  • KGI、KSF、OKRとの違いや関係
  • KPIの設定方法
             
  • KPIの例
目次

KPIとは?

KPI (重要業績評価指標)の役割は業務のパフォーマンスや進捗を計測・監視することです。正しく設定されたKPIの達成状況は、最終目標であるKGIまでの距離を示します。数値化されたKPIの共有は、現状や、目標に対する到達率の客観的な把握を可能にし、適切で効率的な組織活動を実現します。

「OKR」と「KPI」の違い

KPIではなくOKRを採用しているという企業について耳にしたことがある方もいるでしょう。OKRはObjectives and Key Resultsの略語で、これも目標管理手法の一つです。Google社やメタなどで採用されているため、注目が集まっています。

OKRでは、ひとつのO(目標)に対し、複数のKR(求められる主要な結果)を設定し、期限を決めて管理します。KPIとの大きな違いは次の2点です。

  • 経営者からメンバーまで同じ目標を共有する。
             
  • フレキシブルで3ヶ月毎の見直しが普通である。

これらの点から、OKRは変化の激しい業界やベンチャーなどで積極的に取り入れられています。KPIはOKRに比べ硬直しがちだと言われますが、KPIマネジメントを成功させるには、PDCAサイクルを回すことが不可欠で、「改善」のために施策を変更できるようにKPIを設定する必要があります。

KGI(重要目標達成指標)と KPIの違い

次にKGIとKPIの違いについても改めて確認しておきましょう。KGI(Key Goal Indicator)は「重要目標達成指標」で、【最終目標について、何を・どれくらい・いつまでに達成するか】、数値で指標化したものです。KGIもKPIもビジネスの目標達成のために使われる指標ですが、KPIは過程、KGIは結果を見る指標であり、各KPIの達成がKGIの到達を導くという関係にあります。

KFS(CSF)とは

KPIに類似の指標として、KFS(Key Factor for Success)というものがあります。CSF(Critical Success Factor)とも呼ばれます。これは「重要成功要因」という意味を持ちます。KGI・KPIと異なる点は、KFSは「指標(数値基準)」ではなく「要因(定性的要素)」を表すという点です。

  • KPI:重要業績評価指標
             
  • KFS:重要成功要因
             
  • KGI:重要目標達成指標

KPIの設定方法

KPIは最終目標までの達成度を測るための中間指標ですから、はじめにKGI(最終的な目標)、そしてKFS(何をする必要があるか)を考え設定する必要があります。

KGIの設定方法

KGIを決める際は、関係者(関連部署)全員での共有が重要です。この後説明する「SMARTの法則」の一つである「実現性」を満たすためです。「何を」「どれくらい」するかが定まったら、「いつまでに」やるか期限を決めることも忘れないようにしましょう。

KGIやKPIの設定条件「SMARTの法則」

成功するKGIやKPIは次の5つの条件を満たす必要があります。5つの頭文字を取って「SMARTの法則」と呼ばれます。

  • Specific:具体性
             
  • Measurable:計測可能
             
  • Achievable:達成可能
             
  • Relevant:関連している
             
  • Time-bound:期限が明確

KFSの特定

KGIを設定したら、KGIを達成するためKFS(重要成功要因)を定めます。手順は次のとおりです。

  1. プロセスの洗い出し
             
  2. 数値化
             
  3. 分類、KFSの選別

プロセスの洗い出し

まず、ゴール(KGI)までに必要なステップを時系列に並べます。例えば商品受注までに次のようなプロセスを踏みます。

問い合わせ>初回来店(提案・見積もり)>2回目来店(クロージング)>受注

プロセスの数値化

次にこのプロセスを数値化します。プロセスを並べたら、ゴールまでを具体的に数値化します。

(例)ゴール(売上)=受注数×平均受注単価

=(来店数×受注率)×(商品A単価×商品A受注割合+商品B単価×……)

={(問い合わせ数×アポ獲得率)×(提案率×クロージング率×申込書回収率)}×……

プロセスの分類

数値で具体的にあらわしたら、プロセスを優先度で分類します。ここで着目するべき点は、次の2つです。

  • コントロールの可否
             
  • 目標への影響度合い

自らがコントロール可能な項目で、全体へ及ぼすインパクトの大きいものから順に並べます。KFSを決定する際は必ず、そのKFSが本当にKFSとしてふさわしいか検証します。

KPIの設定方法

KFSの仕分け・選定を利用して、KPIを設定します。通常、一組織や一個人に設定するKPIの数は3〜5個です。数が多くなりすぎると、理解が追いつかなくことがほとんどですのでおすすめできません。KPIもKGI同様に、SMARTの法則を用いて定めます。どのようなKPIがSMARTで、反対にどのようなKPIが反SMARTなのか例をまとめました。

Specific(明確な)

明確なKPIになりうるのは、例えば次のようなものです。

  • 顧客訪問件数
  • 成約率
  • 不良品発生率

では反対に不明瞭で曖昧なKPIとはどのようなものでしょう。それは主観で判断するようなものです。例えば次に挙げるもののように、人によって解釈が変わる目標はKPIに向きません。

  • 顧客第一主義
             
  • 積極的な営業活動

Measurable(測定可能)

次のように、数字で表せるものをKPIにしなくてはいけません。

  • 発注回数
             
  • 販売数
             
  • 設計変更回数

そして率、数を明確に示す必要があります。例えば次のように、数字で示すことができない概念はKPIに適しません。数値化できない定性的な目標は、KPIではなく行動目標にしましょう。

  • 多くの顧客にアプローチする
             
  • できるだけフィードバックを集める

Achievable(達成可能)

KPIの達成は、KGI実現のため、そして従業員の自信やモチベーションを高めるためにも、次のように個々の従業員にとり達成感のある目標設定にする必要があります。

  • 新製品の注文数
             
  • 1人当たりの契約販売数

しかし「 一人当たり、新製品を毎月100アイテム開発する」といったように、現実味のないKPIは無駄なだけでなく、従業員のモチベーションや会社への信頼度を下げてしまいます。

Relevant(適切な)

KGI・KFS・KPIは相互に強い関連性があり、それぞれ適切に設定しなければ達成指標として役に立ちません。ここでいう「適切」とは、KPIを順に達成していけば最終目標であるKGPが実現できるといったように、つながっていることです。例えば売上倍増を目標にしているときに、親睦会を毎月開催するといったKPIを立てても、それは直接的な効果を生みません。部門のコアな業務目標に直結するアクションをKPIにしましょう。

Time-bound(期限を定めた)

期限がなければ、迅速で緊張感のある実行ができません。週、月、四半期、上・下半期といった期限をあらかじめ設定することが大切です。「できるかぎり早くやる」、「スピード感をもって進める」といった目標ではなく、対象期間をはっきりさせましょう。

KPIの活用と効果

「KPIの活用と効果」に焦点を当て、ビジネスの成功に欠かせない重要な指標であるKPIについて詳しく解説します。KPIの選定や定義、成果の可視化、目標設定から改善と進化に至るまで、実践的なアプローチや効果的な活用方法について紹介します。

成果の可視化と評価

成果の可視化と評価は、KPIの効果的な活用において重要な要素です。適切なKPIを選定し、目標を定めた後は、その成果を定量的なデータとして可視化することが必要です。これにより、現状の進捗や達成度を客観的に把握できます。さらに、定期的な評価を行うことで、目標の達成状況や改善の必要性を把握し、迅速な対応が可能となります。成果の可視化と評価は、組織の意思決定や戦略の立案に大きく寄与し、持続的な成長を実現するために欠かせないステップと言えるでしょう。

KPIの達成と目標設定

KPIの達成と目標設定は、組織の成果を向上させる上で不可欠な要素です。まず、明確な目標を設定することで、組織の方向性や戦略が明確になります。次に、適切なKPIを選定し、目標に合わせて具体的な指標を設定します。KPIの達成状況を定期的にモニタリングすることで、進捗を把握し、課題や改善点を特定することができます。また、達成したKPIは成果の可視化にも繋がり、組織全体のパフォーマンス向上に寄与します。適切なKPIの選定と目標設定は、組織の成果を最大化し、持続的な成功を実現するために重要なステップとなります。

KPIの効果とビジネス成果

KPIの効果は、ビジネス成果に直結しています。適切に設定されたKPIは、組織の目標達成に向けた明確な指針となります。KPIの達成状況を定期的に評価し、その結果をビジネス成果と結び付けることで、業績向上や効率化のための戦略的な判断が可能となります。KPIがビジネス成果に与える影響は多岐にわたります。顧客満足度を測定するKPIが高い場合、リピーターの増加や口コミ効果による新規顧客の獲得に繋がるでしょう。売上目標を達成するKPIが適切に設定されていれば、収益の向上や利益率の改善が期待できます。

KPIの改善と進化

KPIの改善と進化は、組織の成長と変化に合わせて重要です。定期的なKPIの評価と振り返りを行い、現状の課題を洗い出し、目標の進捗状況を確認します。その結果に基づいてKPIの適切な修正や追加を行い、組織の優先事項に合わせて最適化します
また、新たなビジネスニーズや市場の変化に対応するために、KPIを常に見直し、進化させる必要があります。データ分析やテクノロジーの進展によって新たな指標が生まれる場合もあるでしょう。KPIの改善と進化を継続的に行うことで、組織は持続的な成果を上げ、競争力を強化できます。

KPIの使用例

ここからは部門ごとのよく使われるKPIをざっとご紹介します。

営業のKPI

営業部門でよく使われるKPIには、次のようなものがあります。

  • 商談数
             
  • アポイント件数
             
  • 受注率
             
  • 成約率
             
  • リピート率
             
  • 平均受注単価
             
  • 個人営業売上高

人事部門のKPI

人材採用のKPI

  • 採用人数
             
  • 応募数
             
  • 面接数(二次面接、最終面接)
             
  • 内定辞退数
             
  • 採用者本人の配属後満足度
             
  • 採用者の人事評価結果
             
  • 採用者の平均在職期間

人材育成のKPI

  • 研修実施数
             
  • 1人当たりの平均研修時間数
             
  • 研修参加率
             
  • 研修満足度
             
  • 資格/スキル保有者数
  • 新規資格取得数
             
  • 特定試験(TOEICなど)の平均スコア
             
  • 特別プログラム参加者の人事評価結果
             
  • OJT計画実行率
             
  • OJT満足度

人材管理(配置)のKPI

  • 配属に関する従業員満足度
             
  • 配属に関するマネージャー満足度
             
  • 異動希望者数
             
  • 部門別目標達成率
             
  • 部門別KPI達成率
             
  • 部門別残業時間数
             
  • 部門別離職率

WebマーケティングのKPI

  • ユニークユーザー数
             
  • 問い合わせ率(件数)
             
  • 問い合わせからの成約率(件数)
             
  • 契約単価

製造部門のKPI

生産効率のKPI

  • 稼働率
             
  • 不良率
             
  • 稼働時間
             
  • 停止時間
             
  • 材料費
             
  • 労務費
             
  • 経費

不良率のKPI

  • 部品ごと不良率
             
  • 作業ごと不良率
             
  • 設備ごと不良率

まとめ

この記事では、最終的な目標を達成するための中間指標であるKPIを取り上げました。KPIを「小目標」と捉える向きもありますが、正確にはKPIはその小目標の達成度を測る指標です。KPIとKSF、KGIとの関係を正しく理解し、SMARTの法則を徹底することで、有用なKPI設定が可能になります。

この記事でわかることは次のとおりです。

  • KPIとは何か
             
  • KGI、KSF、OKRとの違いや関係
  • KPIの設定方法
             
  • KPIの例
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