経営管理を成功させるKPIマネジメント

経営の成功とは、「ヒト・モノ・カネ」という自社のリソースを最も効率よく配分し、目標を達成することです。そこで必要となるのが、経営管理です。会社の業務は、大きく分けて、カネの分析、カネのオペレーション、モノの分析、モノのオペレーションの4つがあります。すべてを経営陣が行うことはできませんから、通常は経営者はお金に関する分析業務(業績管理、予算管理、原価/収益管理)だけ行い、あとは担当者の仕事となります。経営管理は「社員一人ひとりを、経営者が策定した戦略と同じベクトルに向かわせ、行動させること」を目的としますが、そこで有効なのがKPIの設定なのです。

この記事では以下の項目について解説します。

  • KPIとは何か
             
  • KPI事例
             
  • KGI、KSF、OKRとの違い
             
  • KPI導入の必要性とメリット
             
  • 失敗するKPIのポイント
             
  • 成功するKPIに必要なSMART
目次

KPIとは何か?

まずKPIの定義ですが、KPIとは、「Key Performance Indicator」の略語で、日本語にすると「重要業績評価指標」あるいは「重要達成度指標」となります。組織の最終的な目標を達成するための各プロセスにおいて、どれくらい達成できたかを測定・評価するための中間指標です。KPIを数値化・見える化し、達成率を管理することをKPI管理またはKPIマネジメントと呼びますが、これは企業が大きな経営上の目標を実現し成長していくために欠かせないものです。

業種・部門別のKPI例

KPIはゴールである目標にたどり着くために行うべきことを、数値目標(定量的な目標)として設定したものです。よくあるKPI例は次のようなものです。

  • 営業部門:売り上げを達成するための行動と定量的な目標
             
  • 製造工場:生産数量や品質について目標達成を目指すための作業内容と定量的な目標
             
  • マーケティング部門:多数の見込み顧客を集客するための販促活動と定量的な目標
             
  • 技術開発部門:製品完成までの各工程で必要な作業項目と定量的な目標
             

KGI、KSF、OKRとの違い

KPIは設定したゴールの中間指標ですから、KPIを設定するにあたってはゴールである最終目標や、指標を設定する項目といった他の要素が不可欠です。そこで現れるのが「KGI」「KSF」「OKR」です。これらはKPIと相互に補完し合う関係にある重要な指標ですので、解説します。

KGIとは

KGIとは、「Key Goal Indicator」の略語です。日本語では、「重要目標達成指標(目指す数値)」となり、企業や組織で設定した目標(ゴール)を達成しているか計測するための最終的な指標です。KPIはKGIを達成する過程での中間目標達成の指標です。KGIを設定する上で用いられる指標は、「売上高」、「利益率」、「成約件数」など、客観的に数値化できるものでなくてはなりません。

KSFとは

KSFとは、「Key Success Factor」の略語で、日本語にすると「主要成功要因(ゴールを達成するための要因)」となります。、KPIは、目標に対する達成の数値指標であるのに対し、KSFは目標までに「何をするべきか」を表します。KSFの例は、「技術力」、「顧客満足」、「ブランド力」などです。KSFはいわば成功の鍵となる要素ですが、市場の変化に応じて重要なKSFも変わります。

OKRとは

OKRは「Objectives and Key Result」の略称です。こちらは、KPIと同じように、具体的で定量的な目標を立てその達成を目指す指標です。しかしKPIは組織が確実にゴールを達成するため100%達成することを前提とする目標ですが、OKRは個人に対し設定され、100%の達成は難しいであろう高い目標設定がほとんどです。OKRは個人の成長に主眼を置いていると言えます。

KPIマネジメントが経営上必要な理由と、KPIマネジメントを導入するメリット

日本は「ものつくり大国」と呼ばれるほど、製造業が経済を支えてきた国です。既に、生産管理や生産率は高いのではないか、そう思われるかもしれません。なぜここへきてこれほどKPIが重視されるようになったのでしょう。それはビジネス環境の大きな変化に理由があります。グローバル化、IT化、働き方改革、高齢者、主婦、外国人といった働き手の多様化、顧客の嗜好の多様化、こういったものにより、急な変化に対応し多様なニーズを満たさないと企業は生き残っていけないのです。画一的に大量生産すればするほど売れた高度経済成長期とは大きな違いです。そのため企業はあらゆる予測を立て、無駄のない、より質高いアウトプットを出す必要があります。そのためには、勘や経験といった従来の方法ではなく、具体的で明確な数値で示されるKPIマネジメントが重要なのです。

KPIを導入する4つのメリット

適切なKPI設定で得られるメリットは以下の4点です。

行動の明確化

KPIを設定すると、目標達成のために、「何を」「いつまでに」「どれくらい」やればよいかが明確になります。従業員にとって、これらがはっきりすることは確かな行動指針になり、着実な目標達成に繋がります。

目標達成までのプロセス可視化

KPIの設定は、ゴールまでのプロセスの可視化にも役立ちます。

組織全体の能力向上

KPIを導入すると、組織や部門の目的や目標が共有されます。全員の視点が統一され、業務に対するモチベーションが向上します。

組織内評価基準の統一

KPIを設定することで、曖昧だった指標や評価基準も統一されます。評価基準が曖昧な組織は少なからずあり、従業員にとって不満の種になることもあります。KPIにより、客観的な数値指標を設定すれば、公平な評価を行うことができます。

KPIを成功させるためのポイントと失敗の原因となるポイント

KPI運用を成功させるためには、成功のポイントと、失敗につながる注意点を知っておく必要があります。

失敗するケース例

まず、KPIを導入した企業で起こった失敗パターンを紹介します。

最適なKPIを選択していない

いくつも思い浮かぶKSFの中から、どれを選び、KPIを設定するか。KPI導入の第一歩です。しかし、この設定段階で既に失敗してしまう企業は少なくありません。KPIマネジメントを行う目的はKGI達成です。KGI達成に直結し最も効果のある項目をKPIとして設定しないと、「KPIを達成したのにKGIは未達成」という結果になりかねません。KGI、ときによってはKPIの項目も経営幹部など現場を熟知していない者が行うことは多々あります。しかしそういった場合でも、現場の声や同業他社の事例などについてもしっかりと調べることが、有用なKPIマネジメントへとつながります。

柔軟性に欠ける

世界情勢、経済の動向、競合企業の活動などによって、ビジネス環境は日々変化します。また自社内でも、事業戦略が変わっていくでしょう。そのような環境や戦略にあわせてKPIを変化させなければ、競合相手に勝つことはできません。

担当従業員に制御不能な要素を含む

KPIの実行は、自分たちの活動の積み重ねによって、大きな目標を達成することです。そのためKPIは実行可能、実現可能なものでなければなりません。自分たちの努力や活動だけでは実現できないとわかっているKPIを設定することや、制御不能な要素をKPIに入れることは、KPIの意義自体が薄れてしまいます。また上手くいかないときに改善したくても、そもそも自分たちで制御不能なのですから対策が取れません。

KPIが多すぎる

あれもこれもと複数のKPIを設定するケースが見られます。しかしKPIは目標に対する優先順位に従い、そのプロセスや評価基準を体系化するものです。欲張って盛り込み過ぎたKPIは、混乱を招き、成果につながりません。

SMARTの法則を無視している

後ほど紹介しますが、効果のある適正なKPIは、「期限や計量が明確で、最終目標に関連し達成可能なものである」といったSMARTの法則に従っています。この法則を無視したKPIは高い成果が見込めません。

従業員のモチベーション低下を招いている

本来であればKPIの設定は、従業員の行動指針を明確にし、公平な評価がされるので、従業員にとって歓迎すべきものであるはずです。ところが次のようなKPIは、反対に従業員のモチベーションを低下させてしまいます。KPI/KGIは目標数値なので、目先の目標を達成することだけしか考えないと、顧客に対して強引な販売を行ったり、顧客の意思や志向を軽視し利益だけを追い求める可能性があります。そうすると、顧客満足度は低下し、長期的視点に立てば売上の低下を招きかねません。

【SMARTの法則】

  1. Specific(明確性):人によって解釈が異なる曖昧な目標ではいけません。組織全体で誰もが理解できる具体的かつ明確な指標を使います。
             
  2. Measurable(計量性):達成度を客観的な数値として評価できることが必要です。例えば、営業であれば、顧客への訪問回数など、実際に計測できる指標を使えば客観性を担保しやすくなります。
             
  3. Achievable(達成可能性):達成可能な目標でなければなりません。現実的かつコントロール可能な数値を設定します。
             
  4. Relevant(関連性):KPIの達成がKGIに直結することが重要です。例えば、最終的な成果目標が営業利益の場合には、売上高、売上単価、販売数といった直接的な関連のある指標をKPIに設定します。
             
  5. Time-bound(期限):KPIを単なる努力目標で終わらせないために、達成期限ははっきりと定めます。

リアルタイムなKPIダッシュボードの活用

KPIマネジメントの重要性がますます高まる中、特にリアルタイムなKPIダッシュボードの活用が注目されています。ビジネスにおけるリアルタイムなデータ表示の意義とその効果的な活用法について探ってみましょう。組織のステークホルダーやリーダーシップにとって、リアルタイムな情報提供が持つ価値とその具体的な実践方法に焦点を当て、効率的な意思決定と成果の向上につながるKPIダッシュボードの活用を解説します。

リアルタイムなKPIダッシュボードの概要

リアルタイムなKPIダッシュボードは、ビジネスの重要な指標をリアルタイムで可視化・分析するためのツールです。組織のパフォーマンスや進捗状況を迅速に把握し、即座に意思決定に活用することが可能です。ダッシュボードは、グラフやチャート、数字などの要素を組み合わせて情報を視覚的に表現し、ビジネスの健全性や目標達成度を一目で把握できるようにします。リアルタイムな更新機能により、遅延なく最新のデータを反映させ、変動する状況に素早く対応できます。これにより、迅速な対策や改善策の立案、成果のモニタリングが可能となり、組織の効率性と競争力の向上に大きく寄与します。

カスタマイズと可視化

リアルタイムなKPIダッシュボードは、カスタマイズ性と可視化の重要性があります。カスタマイズ性では、企業や組織のニーズに合わせてダッシュボードを自由に設定できます。必要なKPIやデータを選択し、レイアウトやデザインを調整することで、特定の情報に重点を置いたり、複数のデータを統合して総合的なパフォーマンスを把握したりすることができます。一方で、可視化においては、簡潔で理解しやすいグラフやチャートの活用が求められます。直感的にデータを解釈できるような視覚的な表現を採用し、情報の量を効果的に伝えることが大切です。これにより、関係者が効率的に情報を把握し、意思決定や改善に迅速に対応できる環境を構築します。

データソースと連携

リアルタイムなKPIダッシュボードの効果的な活用には、複数のデータソースとの連携が欠かせません。企業や組織はさまざまなデータを収集し、それらのデータを統合・分析することで全体のパフォーマンスを把握し、戦略的な意思決定を行います。データソースの連携により、KPIダッシュボードはリアルタイムに最新の情報を反映し、重要なデータの動向を迅速に把握できます。具体的には、売上データ、生産性データ、顧客満足度など、さまざまな分野のデータを集約し、ダッシュボード上で視覚的に可視化することで、全体のビジネスパフォーマンスを継続的にモニタリングできるようになります。また、クラウド技術の発展により、データソースの連携がより容易になりました。さまざまなアプリケーションやツールとのAPI連携により、データの自動取得や更新が可能となり、データの正確性や信頼性を高めることができます。データソースの連携により、組織は迅速かつ正確な情報に基づいて戦略を立て、競争力を強化することができます。

まとめ

この記事では、経営管理の視点からKPIを紹介しました。

この記事でわかることは、以下のとおりです。

  • KPIとは何か
             
  • KPI事例
             
  • KGI、KSF、OKRとの違い
             
  • KPI導入の必要性とメリット
             
  • 失敗するKPIのポイント
             
  • 成功するKPIに必要なSMART
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