経営課題の見つけ方と、解決に向けた戦略の立て方

絶えず変化する社会で企業が生き残り成長していくためには、自社の経営における課題の発見と解決のための戦略が不可欠です。「経営課題の発見とソリューションのための戦略」と言われてしまうと非常に難しく感じますが、この「悪いところをを探して、直す方法を考え、実行し、結果を振り返り改善する」という一連の流れは、社会人になる前の学生時代における学習やスポーツ活動でも経験してきたことですので、経営課題の種類、見つけ方、戦略の立て方さえを具体的に知れば、この問題への理解は深まることでしょう。この記事では以下の点について解説します。

  • 企業の経営課題とは何か、何故経営課題が生じるのか
  • 企業が抱える経営課題の現在、3年後、5年後
  • 経営課題の見つけ方と解決に向けた戦略
目次

企業の経営課題とは

経営課題とは、企業の目的・目標(ミッション・ビジョン)と現状とのギャップを埋めるために設定するものです。経営上の成長や戦略の妨げとなっている原因を発見し、それを改善、解決することは、企業の生き残りに欠かせません。

何故、経営課題が必要になるのか

起業に際して立てた事業計画が詳細で、その通りに全てが運べば、経営課題は生まれないようにも思えます。ですが現代社会は非常に変化が激しいです。①不確実性の増加、②働き方改革、③消費者価値といった外部的な影響による変化、そして企業の成長過程に起こる状況変化によって、企業は経営状態を正確に分析・把握し、経営課題を設定し解決していく必要があります。経営課題を見つけ解決する能力は、企業の生き残り能力であると言って過言ではないでしょう。

社会的変化の企業経営へのインフルエンスとしてわかりやすい例が、esg経営です。Environment(環境)、Social(社会)、Governance(管理体制)の3語の頭文字を取ったesg経営は、環境汚染、社会的規範、コーポレートガバナンスの遵守を重視した経営スタイルを指します。

経営課題一覧とトップ3

企業の経営課題は、収益性向上、人材育成、組織課題と多岐にわたりますが、主要な経営課題をまとめた一覧がこちらです。

  • 人材育成、人材確保
  • 生産性向上
  • 技術力、開発力強化
  • ブランド力
  • 顧客満足度
  • コスト改善
  • 営業力、販売力
  • 物流効率化
  • 事業基盤再編

また中小企業の場合は、次のように少し異なった課題を抱えていることが少なくありません。

  • 売上の拡大
  • 人材の確保
  • 財務の健全化
  • 後継者不足
  • 自然災害への備え

この記事を読んでいる方の中には、起業を検討している方や創業して間もない、中小企業や個人事業主の方も多いと思います。ですので、この5つの経営課題についてもう少し詳しく見ていきましょう。

中小企業の経営課題5つ

  1. 売上の拡大

大企業に比べ資金力や流通網などが劣る中小企業にとって、売上を拡大することは企業の成長のみならず、大企業にシェアを奪われないための防衛策でもあります。

  1. 人材の確保

給与面や休日などの福利厚生面、責任や業務範囲の広さなどから、人気の大企業に優秀な人材を奪われる傾向があります。少人数の小企業にとり、人材の確保ができないことは企業生命に関わります。

  1. 財務の健全化

親族経営やいわゆる「ワンマン経営者」など、財務が不適切になり経営破綻の原因になることがあります。財務の健全化は、企業の成長に非常に重要です。

  1. 後継者不足

素晴らしい事業活動を行っていながら、少なからず、後継者に恵まれず廃業してしまう中小企業や個人事業は存在します。人材育成も後継者育成も時間がかかります。早くから後継者育成を意識することが大切です。

  1. 自然災害への備え

阪神大震災、東日本大震災は言うに及ばず、地震、豪雨などの自然災害は、社屋倒壊だけでなく、従業員の人命喪失、流通網の停止、地域の機能不全といった甚大な被害をもたらします。この3年間、世界が苦しんだコロナ禍も災害の一つと言えるでしょう。このような「正確に予測できない」「自分ではどうしようもない」災害に対し、どのように備え、また臨機応変にどのように経営課題を解決していくかが、全国的にチャネルを持たない中小企業には特に求められています。

現在、そして3年後、5年後、企業が考える最大の経営課題とは

収益性向上が今の最大の課題

企業調査によると、多くの企業が、現在の経営課題として【収益性向上】を挙げています。国際競争力の低下、コロナによる影響、原材料価格の高騰が、背景にあり、今後、売上やシェアをどのように拡大するかが緊急の課題となります。

3年後の課題は人材の強化

企業には、今現在の収益だけでなく、3年、5年…と長期的視点でのビジョンも必要です。どこの企業も今後の人材確保に強い不安と懸念を抱えています。高齢化社会、人材の海外流出、若者から敬遠される業種、専門知識のある人材の全国的慢性的不足などが理由です。

5年後は事業基盤の強化、再編、事業ポートフォリオの再構築

今から5年前、2018年を思い出してみましょう。コロナのパンデミックなど誰も予想できませんでした。多くの人が働き方の変更を余儀なくされました。スマートフォンは15年前にはありませんでした。Googleが誕生したのは、ほんの20年前です。今や、皆がスマートフォンを持ちインターネットを利用しています。かつてどこでも見かけた家電話や公衆電話は「珍しいモノ」になってしまいました。10年もあれば、世の中は劇的に変わり、有力産業が消え、新しいビジネスが生まれるのです。もしかしたら今後5年、10年のうちに、リーマンショックのような株価下落・金融危機が起こる可能性もあります。

5年後の経営課題として、事業基盤の強化、再編、事業ポートフォリオの再構築を挙げた企業が最も多かったのも納得です。

経営課題の見つけ方

経営課題に向き合うには、自社の現状と問題点を洗い出し優先順位をつけることから始めます。ここで非常に有効なのが、可視化と戦略マップの活用です。戦略マップとはいうのは、取り組むべき経営課題や解決策を整理するためのツールで、BSC(バランス・スコア・カード)を補強するフレームワークです。

戦略マップとBSC(バランス・スコア・カード)

戦略マップで戦略を定義します。

ロバート・キャプラン教授とコンサルティング会社のデビッド・ノートン氏によってHarvard Business Review誌上で発表されたBSC(バランス・スコア・カード)は、旧型の経営管理システムや分析手法が機能しなくなってきたことを受け、2000年代に入り大企業を中心に取り入れられるようになりました。BSC(バランス・スコア・カード)は、次の4つのアスペクトから成り立っています。

  • 財務の視点:財務的に成功するため、株主に対しどのように行動すべきか
  • 顧客の視点:戦略を実現するため、顧客に対しどのように行動すべきか
  • 業務プロセスの視点:双方をバランス良く満足させるため、具体的にどのようなビジネスプロセスを作ればよいか
  • 成長と学習の視点:この戦略を実現するために必要な能力をどう育成し継続するか

この4つの点から経営課題と解決策を探しますが、そこで大切なのは、下記の5つの因果関係です。

  1. 戦略目標
  2. 成功の重要な要因
  3. 業績評価指標
  4. 数値目標
  5. 戦略プログラムまたはアクションプラン

このBSC(バランス・スコア・カード)を戦略マップで図式化します。可視化(見える化)によって、企業が進もうとしている方向やその実現に必要なことを、従業員に理解させることができます。

このBSC(バランス・スコア・カード)は大企業で採用されるようになりましたが、中小企業の課題発見や戦略マップ策定にも有効です。

経営課題の解決法の例

BSC(バランス・スコア・カード)によって、それぞれの視点から改善するべき課題を拾い上げた後は、その経営課題の解決法を考える必要があります。そのやり方と解決法の例をご紹介します。

人材育成、人材確保に関する経営課題

課題 
離職者が多い。若手人材が育たない。

解決に向けた戦略
評価プロセスの見直しで人材育成を促進する。

生産性向上に関する経営課題

課題 
生産性の低下が見られる。

解決に向けた戦略
経営計画を立て生産性向上を図る。社員の成績評価ルール、業務フローの見直しを行う。

技術力、開発力強化

課題 
同業他社に負けている。最近、なかなか新しいアイデアが社内から生まれない。

解決に向けた戦略
インフラソース、人材リソースの見直し。組織状況に人員配置や能力の偏りはないか。個々の能力を伸ばす体制。組織の課題を探る。

コスト改善

課題 
売上は上がっているが、コストが利益を圧迫している。

解決に向けた戦略
モバイルワークによる収益性向上。

営業力、販売力

課題 
商品の良さを伝え切れていない。

解決に向けた戦略
質と量の両面から売上、シェアを拡大する。SNSマーケティングによって、ブランド力や顧客満足度の底上げを行う。

経営課題解決のポイント

経営課題に取り組む時に大切なポイントを5つご紹介します。

  1. 財務状況の可視化経営は資金あってこそ。可視化することで、現状や問題点の把握がスムーズになります。
  2. 社員の成績の可視化社員の能力や成果の向上は収益性向上には欠かせない要素です。課題から人材育成を考えることが大切です。
  3. 業務フローの可視化。古い業務フローがルーティン化してしまうと、効率低下や育成の失敗がスルーされやすくなります。業務オペレーションとコミュニケーションの見直しは、収益性向上と人材育成の観点から重視しなければなりません。
  4. 課題発見能力の育成を意識する。中小企業の成長にとっては、不可欠なテーマです。
  5. インフラソース、人材リソースの見直し。企業のリソースは有限です。収益性向上と人材育成、成長を望むなら、現在あるリソースを無駄なくどこにどの割合で注力するかを徹底して意識する必要があります。

経営課題の予防方法

次に、経営課題を予防するための取り組みとして、以下のようなものがあります。

情報収集

経営者や役員は、常に業界動向や競合情報を収集することが重要です。その情報をもとに、経営課題について予測し、早期に対策を講じることができます。

リスクマネジメント

経営者は、経営課題に対するリスクマネジメントを行うことが求められます。リスクマネジメントとは、リスクの発生を予測し、そのリスクを最小限に抑えるための取り組みのことです。

組織風土の醸成

組織風土の醸成も、経営課題を予防するために重要です。組織風土とは、企業の持つ独自性や文化、価値観などのことです。これらを明確にし、従業員が共有することで、意思決定や業務遂行の際に方針を共有することができます

従業員教育

経営課題を予防するためには、従業員に対して教育が必要です。具体的には、業務の手順や品質管理など、業務に必要なスキルや知識の習得が必要です。

適切なシステム導入

適切なシステムの導入により、業務の効率化や情報管理の強化が図られます。また、システムを利用することで、経営課題の早期発見や対策が容易になります。

以上が、経営課題を予防するための取り組みとなります。経営者や役員は、これらの取り組みを積極的に行い、経営課題に対するリスクを最小限に抑えるよう努めることが求められます。

まとめ

この記事では、変化する社会などの外的要因と企業内の内的要因から生まれる経営上の課題をどのように発見し解決していくべきかという【経営課題】について、以下の点を解説しました。

  • 企業の経営課題とは何か、何故経営課題が生じるのか
  • 企業が抱える経営課題の現在、3年後、5年後
  • 経営課題の見つけ方と解決に向けた戦略
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