【経営改善とは?】必要性やメリットが丸わかり!経営改善のポイント、手法、重要要素を解説

経営状態が悪化した時、または成長が鈍い場合に、事業継続や収益改善を目指すために、状況や問題点を把握し改善プランを立てることを、【経営改善】または【経営改善計画】と言います。この記事では経営改善について深く理解できるように、以下の点を解説します。

  • 経営改善と事業再生の違い
  • 経営改善の3つの要素
  • 経営改善の流れと手法
  • 経営改善支援計画とはどのようなものか、メリットは
  • 改善計画の策定方法
目次

経営改善とは

経営状態が悪化した事業を継続するための施策が、経営改善です。売上低下や資金繰りの悪化を解決し、利益額を増やすために行われます。あるいはM&Aや事業承継を予定している場合は、その実現のためにも経営改善が必要になります。経営改善するには、企業が現在抱えている課題を見つけ、それらを解決する必要がありますが、通常、経営状態が悪化している企業内には、複数の問題が絡み合って存在しています。状況が複雑であったり解決が困難な場合、外部のコンサルタントや中小企業庁から経営改善支援を受ける方法があります。

経営改善の必要性

現代のビジネス環境は日々変化し、企業が成功するためには、常に改善を続けることが求められます。その中でも、経営改善は非常に重要な要素となります。ここでは、経営改善の必要性について、以下の3つの理由を解説します

成長や競争力の向上に必要

経営改善は、企業の成長や競争力の向上に不可欠な要素です。経営改善により、企業の経営全般を見直し、改善することで、財務的な問題や業務プロセス上の問題を解決し、ビジネスの発展につなげることができます。また、経営改善を進めることで、競合他社との差別化や、市場環境に適応する力を身につけることもできます。

リスク回避にもつながる

経営改善を行うことで、企業が直面するリスクを回避することができます。例えば、経営改善により財務状況が改善され、資金繰りに余裕が生まれることで、経営上のリスクを軽減することができます。また、業務プロセスの改善により、人的ミスを減らすことができ、事故やトラブルの発生リスクを回避することもできます。

経営者の成長にもつながる

経営改善には、経営者自身の成長にもつながる効果があります。経営改善に取り組むことで、企業の強みや弱みを理解し、自己啓発やスキルアップを図ることができます。また、自分自身を客観的に見つめ直すことで、企業の課題や改善点を発見し、解決することができます。

事業再生と経営改善はどう違うのか

経営改善に似た言葉に事業再生というものがあります。似ているように感じますが、両者には明らかな違いがあります。それぞれの言葉を英語に置き換えてみましょう。

経営改善 Management improvement

事業再生 Turn Around

経営改善は英語で、Management(経営)の improvement(改善)になり、「 improvement」というのは、現状や既存のものは決して悪くはないが、完全ではない、または足りない部分があるので、悪いところや足りないところを探し、それらをなくして質をあげるという意味になります。つまり、現在のやり方や方法をベースに、その枠内で悪い点を見つけ改善し質を高めたり、伸ばしたりします。そのため企業のトップの判断である企業理念、経営戦略、事業構造といったものは、従来のままになることが多く、その下の各部門でオペレーション効率を上げていくことが中心です。

一方、事業再生は英語で、Turn Around (方向転換)と訳されます。つまり従来の経営手法では駄目だから、大きく変えようという動きです。ですから、今までとは全く違う方向への転換、、戦略転換、市場の再定義、扱う製品やサービスのカテゴリー変更など、ビジネスの構造や性質そのものさえ大きく変えることになるかもしれません。

更にイメージしやすく表現すると、経営改善は、今まで和菓子屋として製造・販売を行っていた企業が、原材料、オペレーション、味、価格、プロモーション方法などを改善し、ヒット商品を生み出そうとする試みで、事業再生は、赤字続きの売れない和菓子屋から、日本の自然素材を活かした化粧品業に転換し黒字を目指す動きです。

経営改善の3つの要素

企業の経営は複数の要素で成り立っています。経営改善を行う際は、戦略面、財務面、管理面といった3種類の観点からアプローチします。

経営改善の方法、流れ

悪化した経営状態を立て直したいと考えているが、経営改善の方法がわからないという経営者は数多くいます。まず経営改善の方法と流れを説明します。

経営改善の方法

経営状態の悪化の例として、次のような問題が挙げられます。

  • 需要の停滞
  • 大手企業や同業者の競争
  • 資金繰りの悪化

この状況は社内のデータに次のように現れます。

  • 売上高の減少:販売数量の減少、販売価格の低下など
  • 固定費の増加:人件費(給与、各種手当、福利厚生、退職金)の増加など
  • 変動費の増加:材料費の増加(高騰)など

この3つを次の例のように置き換え、さらにその目標を実現するために必要な戦略を考えます

  • 売上高の減少→売上高を上げる
  • 固定費の増加→固定費を削減する
  • 変動費の増加→変動費を削減する

売上高を上げるための手法

売上高を増加させるには、2つの手法があります

  1. 販売数量を増加させる
  2. 販売単価を上げる

販売数量を増加させるには、顧客が満足しリピートや購入・利用をすることが必要です。従来の商品を継続して販売する場合、次の改善点が考えられます。

  • 営業力の見直しと改善:訪問回数、アプローチの手段、営業ツールの見直しなど
  • 顧客からのフィードバックの精査:アンケートやクレーム

販売単価を上げるには、既存の商品よりバージョンアップした新しい商品やサービス、または付加価値の提供をすることもできます。

 固定費を削減する為の手法

売上高は微増、または横這いだが、固定費が増加して足を引っ張っている場合は、固定費の削減で経営を改善できます。固定費には、人件費、家賃、リース料、広告宣伝費などが含まれ、これらの共通点は、売上が増えようが減ろうが、固定費の額は変わらないというところです。つまり、固定費の削減は確実に毎月の支出削減につながります。次のような対策が考えられます。

人件費の削減:フルタイムの正社員数を減らし、非正規雇用や外部ワーカーを増やすような大規模な人権費削減は、一気に大幅の固定費削減ができる一方で、業務の混乱や人材が育たないという弊害を生んできました。

家賃削減:コロナ禍でWFHが進みました。これを機にリモートワークを取り入れている企業も存在します。

広告宣伝費:これは上記の2項目に比べると、削減しやすい項目だと言えます。効果が低い広告費は削り、SNSマーケティングにシフトするのも一つの方法です。

変動費を削減する

変動費とは、商品や材料の仕入れにかかる費用や外注費のことです。製造数や売上が伸びれは変動費も増えます。しかしながら、仕入れルートの見直し、自社工場での生産、原材料の変更、外注内容の見直しなどが可能です。変動費を削減するには、社内で行っていた業務を外注することでコストダウンする方法と、外注工費を減らす方法があります。

経営改善の注意ポイント

経営改善を行うにあたって注意するべきポイントがあります。それは【実現性があるか】ということです。いくら素晴らしい目標を立てても、実現できる見込みがないのでは無意味です。また個人事業主でもない限り、企業には多くの人が働いており、それぞれが異なる能力、考え、背景、家族状況を持っていますが、従業員が経営改善の意識を持ってこそ問題の解決が可能になります。そして経営改善の実現に必要なのが、次の3つです。

  1. 一貫性
  2. 具体性
  3. 金・モノ・人

企業は組織で構成されています。企業のビジョンや戦略を実行するには、それぞれの組織内部の縦のワークフローやコミュニケーションと、組織同士の横の連携やコミュニケーションの両方が欠かせません。経営戦略として経営改善を策定したら、それに従って企業全体が一貫性のある計画とタスクを実現する必要があります。また既に問題が現存し、企業の健全な経営を阻害しているので、その問題を解決・改善するために具体性のある経営改善案が求められます。それらを考えるにあたって、確認しなくてはならないのが、自社の金・モノ・人の現状です。

経営改善支援について

経営改善したい企業や事業主は、【売上または利益が上がらず、資金繰りが苦しい】状態です。このような企業や事業主を支援する「経営改善支援」制度が存在します。また、この制度を利用するために必要な経営改善計画書の作成をサポートする機関も、たくさん存在します。「事業が上手くいかない」「資金繰りが苦しい」「もう継続できない」と悩む経営者は、諦める前にこの制度について知り、活用することで、再生可能かもしれません。

経営改善計画書の相談機関

経営改善計画書とは、経営改善を数値化し計画した書類です。金融機関への新規借り入れ依頼、借入返済のリスケジュール依頼をする時には、金融機関から提出を求められます。

経営改善計画書の作成を依頼できる機関は数多くあります。

  • 商工会議所
  • 経営改善支援センター

のような公的機関。

中小企業庁から認定を受けた経営改善認定支援機関である

  • 金融機関
  • 税理士
  • 会計事務所

など、相談先はたくさんあります。資金繰りに余裕があり、黒字を伸ばすために経営改善したいのであれば、それに特化したコンサルタントを選ぶことは良い判断だと言えます。また赤字で資金繰りも非常に厳しい状態であれば、費用対効果を重視して公的機関の中から相談先を選ぶと良いでしょう。

経営相談に関して頻繁に聞く名前が、中小企業庁と中小機構ですが、どう違うのか知らないという方も多いので、ここで簡単に説明しておきましょう。

中小企業庁というのは中小企業の育成、発展に関する事務などを所管する経済産業の外局に位置する日本の行政機関です。中小機構は正式名称を中小企業基盤整備機構といい、国の中小企業政策の中核的な実施期間として、起業、創業期から成長期、成熟期に至るまで、企業の成長ステージに合わせた幅広い支援メニューを提供する経産省嵩下独立行政法人となります。中小機構は、中小企業活性化全国本部を設置し、各都道府県の認定支援機関を通して中小企業活性化協議会の活動を促進します。経営改善については、国の補助事業として経営改善計画策定支援事業を認定支援機関に委託し、収益力改善、経営改善、事業再生及び廃業等の、財務上の課題を持つ中小企業の支援を行っています。

経営改善支援を利用するメリット

経営改善支援を利用するメリットは4つあります。

  1. 借入金の返済条件変更などの金融支援
  2. 計画書作成を依頼する専門家への支払いが1/3になる
  3. 3年間のフォローアップ
  4. 助成金が受けられることも

借入金の返済条件変更などの金融支援

資金繰りが厳しい企業の大多数は、銀行などへの毎月の借入金の返済が相当な負担になっているでしょう。
ローン返済に苦しむ個人と同じ状態です。経営改善支援を利用することで、借入金の返済条件の変更ができます。

主に行われるのは、債務の一本化です。
多重債務の返済に追われている状態の企業に対し債務の一本化を行うことで、返済するための調達に奔走せずに本業である事業に専念できるようになります。
また新規融資、追加融資に関しても、経営改善支援を受け専門家の指導による経営改善計画を提出することで、通りやすくなります。

専門家への支払いが1/3になる

経営改善計画書の策定には、専門家の知識や助言が必要です。会計士、税理士、中小基調診断士といった専門家の支援を受けるには費用がかかります。かかった費用の1/3のみが自己負担になり、残りを上限200万円で経営改善支援センターが支援してくれるのです。資金繰りが苦しいなど財務的に厳しい状態の企業や事業主にとって、これは非常にありがたい救済策です。

3年間のフォローアップ

経営改善計画を策定し、助成金などの支払いを受け、はい終了では、その計画が順調に実施できるか、経営が改善するかという部分までは不明です。これでは単なる「返済猶予」「資金調達」になってしまい、「経営改善」には成功していません。経営改善支援では、その後の3年間、外部専門家によるモニタリングが実施され、経営改善計画と実績が乖離していれば、アドバイスがされます。

助成金のサポート

経営改善支援を受けると、助成金のサポートが受けられることがあります。様々な助成金がある中で、コロナ禍で経営が苦しい中小企業や事業主の救済を目的とした事業再構築補助金が今ちょうど公募中ですので、ご紹介したいと思います。

事業再構築補助金第2回公募締切は3月24日

事業再構築補助金とは、新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編またはこれらの取り組みを通じた規模の拡大など、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業などの挑戦を支援する補助金です。個人事業主も申請が可能です。コロナ禍による経済状況の変化に対応するため、中小企業の事業再構築を応援し、日本経済の行動転換を促すことを目的に交付されます。2022年度予算6123億円、2023年度予算は5800億円と大規模な支援策ですから、この事業再構築補助金を申請したいと考えている方もいるのではないでしょうか。申請には、次の点に注意が必要です。

2023年度第2回公募 3月24日締切
第3回公募 3月下旬頃開始

【事前準備】

  • 必要書類がある
  • 認定支援機関と事業計画を策定する必要がある
  • 申請に必要な「GビズIDプライムアカウント」を取得する必要がある

事業再構築補助金の申請要件

応募できる会社は、次の条件の全てに当てはまっていなくてはなりません

売上が減少していること

申請前直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3ヶ月の合計売上額と比較して10%以上減少している中小企業などであること。

事業再構築に取り組むこと

国が示す事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換をおこなうこと。

「事業再構築指針」は、事業再構築補助金の支援の対象を明確化するため「事業再構築」の定義等について説明するものです。経済産業省のホームページで確認できます。

認定支援革新支援機関(通称:認定支援機関)」と事業計画を策定すること

本補助金事業に申請するためには「事業再構築」=「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」または「事業再編」の5つのうち、いずれかの類型に該当する事業計画を認定支援機関とともに策定することが必要となる。事業計画は補助事業終了後3~5年で付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(同上5.0%)以上増加の達成が見込まれるものであること。

「認定経営革新等支援機関」とは、中小企業を支援できる機関として、経済産業大臣が認定した機関のことです。全国で3万以上の金融機関、支援団体、税理士、中小企業診断士等が認定されており、中小企業庁のホームページで確認できます。

【参考】経済産業省:事業再構築指針の手引き
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/shishin_tebiki.pdf

【参考】中小企業庁:認定経営革新等支援機関「検索システム」(認定支援機関を検索)
https://ninteishien.force.com/NSK_CertificationArea

改善計画の策定方法

改善計画は専門家に相談しながら策定するとはいえ、経営改善の流れと改善計画の策定方法を理解しておく必要があります。まずは経営改善の流れを見てみましょう。

経営改善の流れ

  1. 将来的な目標や理想像を明確にして目的を決める。
  2. 課題を洗い出し明確にする。
  3. 課題解決にどのような施策が必要か考える。(Plan:計画)
  4. 改善案を実行し、評価する。(Do:実行、Check:評価)
  5. 改善点があれば改善し(Action:改善)、PDCAサイクルを回す。
  6. 以上を最長5年以内で行う。

経営改善計画書の策定方法

経営改善計画書は、現状の事業分析・改善計画の骨子・改善計画の数値目標等で構成されます。

現状の事業分析

企業グループ内の相関関係、ビジネスモデル全体、過去の財務資料、返済・資金・投資状況、以上を詳細に分析することで、次の2点を明確にします。

  • 債務状況
  • 企業の利益や成長を阻害している経営課題

改善計画の骨子

改善計画の骨子は、大きく次の2つに分かれます。

  • 具体的な経営改善プラン
  • そのプランと連動した損益計画表(PL)作成とFCF(フリーキャッシュフロー)の計算

赤字経営にならないため、または赤字経営から抜け出すためには、損益分岐点を明確にすることが非常に大切です。債務返済条件をリスケジュールするケースでは、ファイナンス戦略の策定、返済計画書、またその計画と連動したPLとFCFも必要になります。

ここで経営革新計画が策定されることもあります。経営革新計画とは、新事業により経営の大幅な向上を図ることです。

改善計画の数値目標

改善計画に連動したPLおよびFCFに加え、BS(貸借対照表)、CF(キャッシュフロー表)、税額計算書、資金繰り表などの作成が必要になります。最終目標を達成するために、中間目標であるKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標、重要達成度指標)が問題なく進行できているか、リアルタイムで把握・分析するKPI管理のためにも、具体的な数値は欠かせません。

まとめ

経営がおもわしくない時、資金繰りが厳しい時、素早く経営改善に取り組むことは事業存続のために非常に重要です。この記事では、次の内容について解説しました。

  • 経営改善と事業再生の違い
  • 経営改善の3つの要素
  • 経営改善の流れと手法
  • 経営改善支援計画とはどのようなものか、メリットは
  • 改善計画の策定方法
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