独立して起業したい」、「専業主婦歴が長いので、再就職するより自分のアイデアや強みを活かして起業したい」、あるいは「有名な女性起業家のように私もなりたい」。このように考える女性が増えています。しかしながら一説によると日本の人口の1%が起業を考えているのですが、実際に起業できる人はその一握り、さらに継続的に利益を上げ事業を存続できる人は一握りならぬ一つまみだと言われています。昨年2022年の帝国データバンクによる調査では国内の女性社長比率は8.2%となっており、これには所謂「雇われ社長」や「親族経営会社の受け継ぎ」も含まれることから、一からの起業は更に難しいのであろうことが容易に想像できます。一方で、女性起業家として有名になり、メディアやネットで取り上げられている方も増えている印象です。
起業を実現できる人と夢のままで終わる人、女性起業家として成功する人と失敗する人、何が違うのでしょうか。その謎を解明するため次の3点について解説します。
- 起業の手順とコツ
- 女性の起業におすすめの業種
- 女性の起業のメリット・デメリット
起業の手順とコツ
PDCAサイクルというマネジメント手法があります。もう古い、時代遅れだと言われつつも、多くの職場や学校で根強く取り入れられています。
Plan:計画
Do:実行
Check:評価
Action:改善
これを繰り返すことで、リスクや問題点を潰し改善していく手法です。起業においてもこの考え方は有効ですが、起業前は主にこのPlanの段階となります。起業の必要かつ正しい手順は勿論、女性が起業するには女性ならではのコツを掴み、次の5つの問題点に対処していくことが重要です。
その1「起業したいけどアイデアがない」
起業したいという気持ちはあるが、アイデアがないというのが第一の問題点です。どのような事業を行うかしっかりしたイメージがないと、スタート地点に立つことができません。また、自分がその事業によって何を実現したいのか目的をはっきりさせないままでは、困難に遭った時に乗り越えられないことが多いです。次の3点について、じっくり考えてみましょう。
分野、ジャンルを絞る
自分の好きなことだけではなく、今までの経歴、人脈、得意分野を精査する必要があります。好きなことで飯を食えるのは素晴らしいことですが、好きだけでは起業は成功しません。
女性の視点を活かす
女性であることを、ハンディにするか、強みにすることかできるかは、一重に女性ならではの視点や経験をどう扱うかによります。一般的にキャリアで不利とされる主婦歴も、起業であれば経験を活かすことができます。また有名な女性起業家には、社会問題の解決を志し、ベンチャー企業を起業した社会起業家が少なくないのも特徴です。
目的をはっきりさせる
自分が何故、起業したいのか。起業することでどんな社会貢献を行ったり、自分の人生をどう変えたいのかについて、具体的に言語化、イメージ化します。この想いが強いほど、難しい局面でも前向きに取り組むことができます。
有名な女性起業家
起業を目指す女性ならロールモデルとして参考にしたい、七人の侍ウーマンとも言うべき有名な女性起業家7人をご紹介します。
山口絵里子 MOTHERHOUSE
バングラデシュでジュートカバンをデザイン、製造。貧しい国のために何かしたいという気持ちから、世界最貧国のバングラデシュで起業した。
角田千佳 ANYTIMES
個人間のビジネスプラットホーム(C to C)を立ち上げ。「留守中、ペットを預かってほしい」「運転を頼みたい」など誰かに頼みたいことが、誰かの仕事になる。
荻野みどり ブラウンシュガーファースト
第一子出産後4か月で立ち上げたお菓子ブランド。コンセプトは「わが子に食べさせたいお菓子」。有機エキストラバージンココナッツオイルブームにより、2013年に年商7億円を達成。
小林りん インターナショナルスクールオブアジア軽井沢
自らの留学、ユニセフ時代を通し、ストリートチルドレンなど貧困層の教育を変えたいと考えた。生徒の7割が留学生、教員の9割がが外国人で日本の高校資格取得と国際バカロレア履修ができる日本初の全寮制インターナショナル高校を設立。
近藤麻理恵 KonMari Media Japan
片づけコンサルタント。「人生がときめく片づけの魔法」がベストセラー。アメリカで最も有名な女性起業家の1人だが、独立後初セミナーの参加者は2名のみだったという。起業、サービスの構築、お金の使い方、わかりやすく情報を伝える技術を徹底的に勉強し、顧客を増やした。
田中美和 Waris
女性と企業とのマッチングサービス。日経ホーム出版社時代に取材で多くの女性のジレンマを目にする。現在は女性フリーランスと起業とのマッチングサービス Warisプロフェッショナル、女性役員の人材紹介Warisサービスエグゼクティブ、再就職支援サービスWarisワークアゲインも運営。
経沢香保子 キッズライン
シッターと子を持つ親を結ぶサービス。
その2 起業家になるには、自分に合った起業へのステップを考える
その1の内容と重なる部分がありますが、女性が起業するには【自分に合ったステップ】を計画することが重要です。主婦であれば家事育児との両立が欠かせません。家族の協力も必要です。いきなり貯蓄を全て注ぎ込んだり、借金するのではなく、身の丈にあったスモールビジネスから始めるのも大切です。ビジネスの成功原則は
得意なこと×ニーズのある事業
です。好きだから、あるいは俗な言い方になりますが、格好いいからという気持ちだけでは成功できません。自分の強みを活かしましょう。
その3 計画は長期的な視点で具体的に立てる、ブランディングは起業前から
成功した多くの女性起業家も、今の業績を手にするまで長い下積み期間や低迷期をくぐってきています。起業を成功させるには、Plan(計画)が
思いつきではなく長期的な視点に立っていること
ぼんやりとしたイメージではなく、具体的であること
が必要です。他人に説明するつもりで、事業計画を丁寧に作成してみることを勧めます。特にマーケティングは、集客=売上ですから怠るわけにはいきません。ターゲットに応じたマーケティングができないと、そのビジネスは失敗します。これが企業が有名人(インフルエンサー)の拡散力を使って広告やSNSマーケティングを行う理由です。またSNSインフルエンサーから起業家になる女性が多いのには、ブランディングが起業前に既にできておりマーケティングで有利だということがあります。
その4 一人では難しいからこそ、人脈、サポーター、情報収集が必須
起業し事業を成功させることは簡単ではありません。あれもこれも、やることが沢山あり、問題も起こります。どこから手をつけていいのかわからないという方もいるでしょう。登記や帳簿などは専門家の手を借りることも可能ですが、それ以外に
広げた人脈を活かす
サポートしてくれる公的機関やコミュニティを事前に把握する
メディア、ネット、SNSからの情報収集
をすることが、起業成功の大きな鍵になります。
その5 資金に余裕を持つ
「ギリギリの資金で始めたビジネスが大成功」というようなサクセスストーリーは、ドラマティックで注目されやすいため、メディアなどで大きく取り上げられます。本人も自らをカリスマティックにブランディングするために、ギャンブラー的な要素や一攫千金物語を強調します。これを鵜呑みにしないことが非常に重要です。仮にそういう起業家がいたとしても、それはその人の活動の一面に過ぎず、努力や準備、人脈や情報収集などが、隠されていることが多いのです。
起業するなら資金に余裕を持ちましょう。経営にはお金がかかります。お金を貯めて、なけなしのお金で起業しようと思っている方を見かけますが、ビジネスはスタートして終わりではありません。実は継続のための固定費こそが大変なのです。潤沢な資金がある場合を除きコストを抑えてビジネスができる方法を模索するべきです。経営やお金に関する知識は、起業するには必須です。計算ややり繰りが苦手、帳簿、株式、税など会計、経済に疎いという女性は、起業を目指すなら勉強する必要があります。
女性の起業におすすめの業種
社会起業家のように、実現したい社会目的が先にある場合ではなく、ビジネスを成功させたい、労働者として雇用されるのではなく、自分の会社を持ちたいという理由で起業する場合、女性が参入、成功しやすい業種を選ぶのも利にかなっています。女性の進出が目立つ業種は、次のようになります。
- ネイルサロンやエステなどサロン系
- ネットビジネス系
- 教室、セミナー系
- セレクトショップ
- ハンドメイド系
- 育児系
- カフェ
- 代行ビジネス
- 女性向けフィットネス
サロン系については、一部、免許制の事業もあります。無免許で営業した場合、違法になり罰則があります。注意しましょう。またネットショップなどのネットビジネスについても、許認可が必要なものがあります。
そして起業というと、一から自分で法人を設立し〇〇株式会社を立ち上げることしか思い浮かばず、大ごとと感じるかもしれませんが、他にも起業の方法はあります。
- 個人事業主:法人設立せず、個人で事業を営むこと。税務署に開業届を提出すれば個人事業主になれるので、法人設立より手続きが遥かに簡便。(例:フリーランスライター)
- 代理店業務:本部に変わり顧客に対する活動を行うが、直接顧客と契約を結ぶことはなく、顧客と本部を繋ぐエージェント。(例:保険代理店)
- フランチャイズ:親企業にロイヤリティを支払い、ブランド名や看板を使う権利や、経営ノウハウを得て、事業を行う。(例:コンビニ)
女性の起業のメリット・デメリット
最後は、女性が起業する場合、どのようなメリットとデメリットがあるのかについてです。起業するには、多くの資金、時間、労力がかかります。取り掛かる前にこれらをしっかり知っておきましょう。
女性が起業するメリット
- 女性起業家のネットワーク
- 女性ならではの視点
既にご紹介した「女性の再就職支援」や「家の中の片付け」といったサービスは、正に女性ならではの視点を活かしたものだと言えます。世の中の多くの企業が男性によって経営されていることを考えれば、女性ならではの視点を活かした起業は、正にブルーオーシャンです。ライバルが少ない分、資金力が弱くても、「勝てる」可能性が高まります。
また未だ女性起業家は数が少ないこともあり、女性であることを不利にしないための女性起業家のネットワークは非常に有益です。起業当初は人脈を活かし、紹介などで仕事を取ることが、起業成功のコツの一つです。
女性が起業するデメリット
- プライベートと仕事のバランスが難しい
- 経営ノウハウやスキルが薄いまま起業
- 自宅バレに注意
女性は結婚すれば家事、出産すれば子育ての負担がどうしても大きくなりがちです。その中で、どのように起業家としての仕事や付き合いをこなしバランスを取るかは非常に大きな問題です。体力、健康の問題もあります。
また相対的に見て、経営ノウハウやスキルが薄いまま起業を目指す女性が少なくないこともリスクになります。女性が起業するには、前職が何であったか、あるいは主婦であったかということはさておき、これらをしっかり補う必要があります。
また考えられるリスクとして、起業による自宅バレのリスクがあります。自宅住所を会社にした場合、不特定多数の人に自宅を知られてしまいます。世の中には色々な人がいますし、事業上のトラブルも考えられます。女性の一人暮らしやお子様のいらっしゃる女性は、リスク回避のために、レンタルオフィスや私書箱・秘書代行サービスの利用を検討するのも賢明です。
まとめ
起業を目指す女性が増えていますが、起業するには準備や知識が必要です。この記事で解説した
- 起業の手順とコツ
- 女性の起業におすすめの業種
- 女性の起業のメリット・デメリット
は最低限、起業前に理解しておくべき項目です。個人的にも女性が起業家として活躍するのは、非常に喜ばしいことであり、応援の気持ちでいっぱいです。この記事を呼んだ女性の皆さまが起業をやり遂げ成功させることができますように、【女性起業家の5箇条】を最後にあげておきます。
- 勉強は欠かせない
- 数字に強くあれ
- リスクへの覚悟を持つ
- 行動力なくして成功なし
- 起業への熱意こそが最大の能力
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